日本の常任理事国入りについて
私は、日本の常任理事国入りを断固支持する。
以下、その理由を述べる。
まず、国連の通常予算の分担割合である。
2005年の分担割合は、
1位米国22%、2位日本19.5%、3位ドイツ8.7%、4位英国6.1%、5位フランス6.0%、6位
イタリア4.9%、7位カナダ2.8%、8位スペイン2.5%、9位中国2.1%、10位メキシコ1.9%となっている。ちなみに韓国は1.8%で11位、ロシアにいたっては1.1%で16位である。
2003-05年国連通常予算分担率・分担金
この数字を見て云えることは、
①日本の分担率がEUの3大国(独、英、仏)の合計(20.8%)とあまり変わらないことであり、
②アメリカを除く現常任理事国4ヶ国(英、仏、中、露)の合計(15.3%)をはるかに上回っていることである。
だからといって、私が「日本の常任理事国入りを支持する」のは、分担金が米国についで第2位だからという単純な理由ではない。
私が、そう主張するのは、
①国連憲章第107条の、いわゆる「旧敵国条項」(注1)の削除が、安全保障理事会
(戦勝国クラブ)の思惑で未だ実現していないからであり、
②憲法前文にあるように「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと務めている 国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」からである。
第2位の分担金を課され、それを受け入れざるを得ないということは、日本の存在が、
それだけ国際政治と国際経済において大きくなっているということである。それに加えて、第2次大戦後日本は、一度も武力を行使したことがない(チベットやヴェトナムを侵略した中国とはエライ違いである)。
もう一つの理由として、国連のPKO予算の分担割合がある。
実は、日本は国連の通常予算だけではなく、PKO予算においても約20%を分担している。ここにおいても日本の分担率は、米国を除く常任理事国4カ国の分担率の合計(18.4%)よりも大きいのである。
国連平和維持活動(PKO)の現状
にもかかわらず日本は、PKO計画を決定する安全保障理事会に議席を有していない。その費用の5分の1もの巨額な資金負担を強いられながら、その使途に関与できない。これでは、国民(納税者)に対してAccountability(説明責任)を果たしていないことになる。
やはり、カネも出すが口も出すのが国民に対しても、世界に対しても責任ある国家としての態度なのではないか。
国連の常任理事国だけではない。国連とほぼ同時期に、やはり連合国(戦勝国)によって創設された国際通貨基金(IMF)や世界銀行(IBRD)についても同じである。
両者とも、日本は米国に次ぐ第2の出資国でありながら、IMFの専務理事にも世界銀行の総裁にも一度も選ばれたことがない。前者は欧州、後者は米国という、白人国家間の暗黙の合意に拒まれているのである。もし日本が、両者において、主導権を握れる立場にあれば、1990年代後半のアジアの通貨危機に際して、もう少し違った対応が
取れたのではないかと思う。
ここで言いたいことは、国連に限らず、IMFにしろ世界銀行にしろ、カネだけ出してモノは言わない(主導権は取らない)という姿勢は、21世紀の日本にそぐわないということである。出したカネにふさわしいだけの発言をさせてもらう。そういう堂々とした態度が求められているのではないか?
国際舞台で「顔が見えない日本」と揶揄されて久しい。同様に、日本人個人も、「ニコニコ笑うだけで、何を考えているのか解らない(自己主張しない)」と批判されてきた。それを「謙虚を美徳とする日本人の長所」という人もいるが、そうではない。
もう、そんな日本や日本人にオサラバすべき時代ではないのか?もっと自分に自信を
持って世界に向かっていく、自分の意見を堂々と発声する、それが真の国際化という
ものだろう。
ちなみに、中国が国連の常任理事国でありうるのは、単に「戦勝国の一員」だったと
いう一点だけである。世界で重要な位置を占めていたわけでもなく、世界に貢献して
いたわけでもない。言うなれば米英のおこぼれを頂戴しただけである。こんな国に、
「過去を謝罪し、反省しない日本に常任理事国の資格はない」なんて言われたくない。「天に唾する」とは、このことなんですよ、中国くん。
なお、常任理事国になるに際して「集団的自衛権」の問題は避けて通れない。この問題については、改めて意見を述べさせていただく。
(注1)旧敵国条項(国連憲章第107条)
国連憲章第107条を指して、一般に「旧敵国条項」と呼んでいる。その内容は、第二次世界大戦の際、枢軸国だった日本・ドイツ・ルーマニア・ブルガリア・ハンガリー・フィンランドを対象(イタリアは途中で枢軸国から脱退し、連合国側に立って日独に宣戦したので除外)に、これら諸国が国連憲章等に違反した軍事行動(侵略等)を起こした際、旧連合国(アメリカ等)が国連決議等の拘束力に優先して軍事制裁を課す事が出来るとした差別条項。しかし、戦後半世紀も経ち、日・独等が国連の中でも重要な地位を占める現状においては死文化条項であり、時勢に合わない事等から、1995年の国連総会に於いて、同条項の国連憲章からの削除を求める決議が圧倒的多数で採択された。ただし、安全保障理事会改組問題の難航で、国連憲章の改正に支障を来しており、同条項の削除自体は未だ実現していない。
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コメント
TBありがとうございました
関係ない話ですが(;^_^ Aアセ・・・
私もチャンドラー大好きです
で、マルガリータなんぞを飲んでみたりもしますが
本質的には日本酒党です
投稿: raku | 2005/04/18 05:01
分かっているのに、理解できないのが国連ですね。あくまでも、国連とは、国際連合で、第二次世界大戦の連合国側が作った組織です。そこの常任理事国に、日本がなると言うことは、完全なる戦後の終わりを示します。だから、中国や韓国は、それに反対するのですね。向こうの言い分では、「戦後の補償は終わっていない」です。
今の世界の実情と、中国、韓国の国の都合が全くずれていると言うことでしょう。
それをどう思うかは、個々が考えればよいことです。
もちろん私は、今の世界情勢から、日本の常任理事国入りは、当然だと思っております。
投稿: クー | 2005/04/18 13:19
コメントありがとうございます。
akuさんへ
>私もチャンドラー大好きです
やっぱり男はハードボイルド
クーさんへ
>国連とは、国際連合で、第二次世界大戦の連合国側が作った組織です。
そしてIMFも世界銀行も、です。
投稿: 坂 眞 | 2005/04/18 15:38
TBありがとうございました!
おっしゃる通りです。
金を出している以上、口も出すのは、当たり前です。
逆に口を出させないなら、金も出しませんよ、ぐらいの姿勢を示したほうが良いのです。
ご指摘のIMFや世界銀行も同様です。
なにしろ、小国だったら、日本は単独でも経済立て直しができるのですから。
ODAなどの形で単独で援助した方が良いくらいです。
投稿: 鮎川龍人 | 2005/04/30 04:40
国連自体が戦後60年経過して大きく変わる必要を感じますね。
現在の国連は、WW2の勝ち組にほかならず、これをもって国際機関としていることに、年々疑問が膨張します。
いわば徳川幕府みたいなもので、かつての勝ち組が譜代大名、敵国だったところが外様大名の扱いです。遅れていますよ。
なお、国連憲章によれば、常任理事国に中華人民共和国はありません。中華民国はあるのですが。戦勝国でなく、勝ち組にさえ属していなかった国がちゃっかり居座っている。それが実態です。
投稿: 悪人inaba | 2005/04/30 09:16
コメントありがとうございます。
鮎川龍人 さんへ
>金を出している以上、口も出すのは、当たり前です。
逆に口を出させないなら、金も出しませんよ、ぐらいの姿勢を示したほうが良いのです。
そのとおり。カネさえ出せばよい、と言うのはやめるべき。要求するほうも、されるほうも。
国連もIMFも世銀も、いっそ分担金を凍結したら、と思います。
悪人inaba さんへ
>国連憲章によれば、常任理事国に中華人民共和国はありません。中華民国はあるのですが。戦勝国でなく、勝ち組にさえ属していなかった国がちゃっかり居座っている。それが実態です。
あの国は、まったくふざけてる。これまでは、日本が余りに弱気に過ぎた。敗戦国でも、現在の力量を考えれば、日独は常任理事国になるべきです。
投稿: 坂 眞 | 2005/04/30 12:51