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2005/05/28

お互いに大国として、大人の対応を

細田官房長官は25日午前の記者会見で、中国政府が呉儀(ウー・イー)副首相の小泉首相との会談中止の理由に靖国参拝問題を挙げたことについて、「これ以上コメント
することは、日中関係にとって生産的ではない」と述べ、今後も中国側の主張に対し、論評はしない考えを示した。

細田長官は「コメントの一部が先方(中国側)に伝わり、向こうもそれにコメントする現象が見られる。事細かに反論したり、理由を聞いたり、非難したり、責任を問うたりしないことが適当だ」と説明した。
「これ以上コメントしない」 中国副首相問題で官房長官
2005年5月25日(朝日新聞)

この細田官房長官の発言を「弱腰」と批判するのは簡単だが、早計にすぎる。
日中関係の現状、両国の今の力関係を考慮した結果の発言として読むと、また違った読み方ができる。
このブログで何度も書いたように、関係が冷却化すると困るのは中国の方なのだ。しかも、今回は明らかに中国に分が悪い。しかし、弱い立場でも、常に強気に振る舞わなければならないのも中国なのだ。

呉儀副首相が靖国に言及し、小泉首相に拒絶される。
この結果は、直前に訪中した武部幹事長と中国共産党の王家瑞対外連絡部長との
激しい応酬により、会談前から見えていた。
しかし、中国版「鉄の女」とも呼ばれる呉儀副首相が、小泉首相を前にスゴスゴと引き下がる様は絶対に避けねばならない。そうなれば反日世論の突き上げを食う。
「緊急の公務が生じた」との取って付けたような理由でもって会談をドタキャンしたのは、このような事情であろう。
これに対し、日本の政治家や世論が非礼だ、非常識だと口を極めて非難する。これに対して黙っていると、また突き上げを食う。しかし、非礼であり非常識であるのは事実であるから弁解の余地がない。
だから、小泉首相の靖国参拝をめぐる発言などが原因である、何が悪い、悪いのは
日本じゃないか、と孔泉報道局長は、開き直らざるを得なかったのである。
細田官房長官の発言は、このあたりの中国当局者の苦しい立場に配慮してやったと
いうことだ。少なくとも、今はそうした方が中国に対して優位に立てるからである。

細田官房長官の配慮に対して、孔泉報道局長は早速反応する。まるで、事前の打ち合わせができていたかのごとくである。

中国外務省の孔泉(コン・チュワン)報道局長は26日の記者会見で、呉儀(ウー・イー)副首相が小泉首相との会談をキャンセルした問題で、細田官房長官が「これ以上コメントすることは、日中関係にとって生産的ではない」と述べたことについて、「発言に注目する」と述べ、関係改善のため日本側の今後の取り組みに期待する考えを示した。

孔報道局長は「我々は中日関係を大変重視している」「日本と世々代々の友好関係を発展させたいと望む」と日中関係の重要性に繰り返し触れ、これ以上の関係悪化は避けたいとの中国側の姿勢を強調した。

一方で、「(日本側が)両国関係の大局的な見地から、いかにして関係改善するか考えてくれるように望む。我々は『言葉を聞いて、行動を見る』という態度だ」として、日本側の具体的な行動を要求。「歴史をかがみとして未来に向かう」との原則を強調し、小泉首相の靖国神社への参拝中止を求めた。

また、来週予定されている東シナ海のガス田開発をめぐる日中政府間の局長級協議について「協議がいかなる他の問題の干渉や影響を受けることも望まない」と述べ、呉副首相の会談キャンセルが両国間の他の問題に影響するべきではないとの考えを示した。
日中関係の重要性強調 中国外務省報道局長
2005年5月27日(朝日新聞)(太字は筆者)

「細田さん、助かりました。日中関係の重要性は重々承知しています。ただ、原則的
立場だけは譲れません」私にはそう聞こえるが、皆さんはいかがだろう?
そして、細田官房長官の第二弾である。

細田官房長官は27日の閣僚懇談会で、中国の呉儀副首相が小泉首相との会談を
中止、帰国したことなど日中間の問題について、「微妙なところがあるので、発言に
気をつけてほしい」と指示した。

副首相の帰国問題で、細田長官は25日の記者会見で「コメントすることは生産的で
ないので控えたい」と述べ、その後も見解の表明を避けている。細田長官は27日の
記者会見で、こうした姿勢を中国側が評価していることについて「お互いに大国として、大人の対応をするという趣旨だと推測している」と語った。
日中問題、官房長官「発言に気をつけて」
2005年5月28日(読売新聞)(太字は筆者)

「お互いに大国として、大人の対応をする」、中国の稚拙な対応に対する「大いなる
皮肉」である。
恐らく、小泉首相は8月15日前後に靖国神社に参拝する。中国は、例のごとく猛烈に
抗議する。しかし、それ以上は悪化しない。「8月15日を避ける」というところが落とし
どころなのだと思う。

小泉首相は沈黙し、細田官房長官が対中優位を維持しつつ事態の収拾を図る中で、
小泉首相の後見人を自認する森喜郎氏が、外野席からタイミングよく追い討ちを掛ける。

自民党の森前首相は26日夜、都内で開かれた同党衆院議員のパーティーであいさつし、中国、韓国が日本の歴史教科書の検定結果を批判していることについて、「(日本の教育界は)自虐的に、日本が悪かったということばかり子供たちに指導してきたが、少しは教科書が正しくなってきた。とたんに中国、韓国が『歴史を美化している』とか、『政府の反省がない』とか言い出したが、まさにいちゃもんもいいところだ」と述べ、両国の対応に不快感を示した。
中韓の歴史教科書批判、森前首相が不快感
2005年5月26日(読売新聞)

外交とは駆け引きであり騙し合いである。その中で、いかに国益を守るかのしのぎ合いである。
一見、小泉首相も細田官房長官も町村外相も線が細く、したたかな外国要人とやり
合っていけるのか不安を感じる向きもあろう。しかし、彼らは、いずれも世襲政治家で
あり、ある意味、純粋培養された政治人間である。世間知らず、人間知らず、苦労知らずという「三知らず」の人間である。
根回しが下手で、料亭政治を嫌い、親分子分の関係を好まない。安部幹事長代理も
同類である。しかし、だからこそ自説を曲げず、相手とぶつかる事を厭わない。かと思えば、時には、既成政治家の想像のつかない発言や行動をする。
中国が、野中広務氏や古賀誠氏が権力を掌握していた時よりも、今の政権の方が、
はるかにやり辛い相手だと思っているのは間違いない。何より野中氏や古賀氏は親中派であった。が、今の政権は、ガチガチの親米派である。対中政策を、クリントン時代の「戦略的パートナーシップ」から「戦略的競争相手」に転換したブッシュ政権の意向に
忠実であることが国益だと考えている。
したがって、今の小泉政権が、中国に対して弱腰な姿勢を取るのではないか、あるいは安易な妥協をするのではないかといった心配は無用だと思う。
だって、私は立派に頑張っていると評価している。ただ、人間的には、小泉首相や町村外相や安部幹事長代理の類は嫌いである。

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中国(政治)」カテゴリの記事

コメント

嫌いなもの同士でも交流することに意義がある場合は、うまく交渉するのが「外交」。
 昔の琉球王朝には「接待官僚」のほうが、武将より地位が上でありました。
 日本も、中国も外交べたですね。最近はアメリカもそうです。上手いのはベトナムやインドではないでしょうか。

投稿: けんちゃん | 2005/05/28 18:11

けんちゃん さんへ
コメントありがとうございます。

>嫌いなもの同士でも交流することに意義がある場合は、うまく交渉するのが「外交」。

そのとおりです。

投稿: 坂 眞 | 2005/05/29 12:53

「外交とは駆け引きであり騙し合いである。その中で、いかに国益を守るかのしのぎ合いである。」以下の段落、まことに我が意を得たりの思いです。よくぞ言ってくださいました。

政治は結果責任です。これだけの外交成果を挙げた内閣は、ここしばらく知りません。小泉首相への評価は低すぎると思っております。

ただ、どうしてそのような政治家がお嫌いなのか、機会がありましたらお教えください。私はそれほど嫌いではないのですが。(もちろん、野中とか古賀からくらべればの話なのですが。)

投稿: ゴウ先生 | 2005/06/02 20:15

ゴウ先生コメントありがとうございます。

>ただ、どうしてそのような政治家がお嫌いなのか

世間知らず、人間知らず、苦労知らずという「三知らず」だからです。
ただ、政治家としては評価しています。
郵政民営化の一徹ぶりは見上げたものです。

投稿: 坂 眞 | 2005/06/03 12:09

 中国 北朝鮮情勢が、無責任で不誠実なマスコミの報道等により 不透明さを増して行く状況の中で、日本国民の心に、苛立ちとともに 梅雨空のような重苦しさと 無力感が広がり始めています。
 そしてこの重圧から安易に逃れようとする人々から「靖国参拝中止」の声が上がり始めました。
 そろそろ、このような東アジア情勢についての本質が語られ始めても良いのではないかと思いコメントさせて頂きます。

 ブッシュは 第一期ブッシュ政権が、江沢民に騙された事を 第二期目をかけた大統領選の直前に気付かされました。
 江沢民はブッシュに 口約束ではあっても こう約束したのです「中国はアメリカに対して敵対するつもりはない 徐々に民主化を進めるつもりです。共産党は国民政党となるでしょう。今度、資本家が共産党員になれるようにします。そしてそれが偽りでないことを行動でしめしましょう、つまり北朝鮮の核開発を阻止します その結果金政権が崩壊してもかまいません。」 ブッシュは 9・11という衝撃の隙をつかれ、信じてしまいました。            

 中国共産党は民主化などするつもりは露程も無かったのです。そして北朝鮮の核開発を阻止するつもりもありません。

 第二期ブッシュ政権は国務長官にコンドリーザライスという「ソ連崩壊研究」の世界的権威を起用したことで、2008年までの任期中に中国北朝鮮を崩壊させるという決意を表明したのです。
 それを受けての開き直りが 今年2月、北朝鮮の核保有宣言なのです。黒幕はもちろん胡錦濤 江沢民です。
 中国共産党は崩壊します。金政権も終わりです。

 共産党幹部たちが中国国民の財産を自分名義で20数兆円も海外に持ち出しているのが なによりの証拠です。靖国参拝など連中にとっては どうでも良い事なのです。日本を揺さぶる事でアメリカを牽制し、崩壊を一日でも遅らせるための時間稼ぎをしているに過ぎません。

 そのお先棒を担いでいるのが 「アメリカに言いなりの小泉、靖国参拝をやめて隣国の感情に配慮しろ」と叫ぶ 無思慮な人々なのです。           

投稿: 武井 | 2005/06/22 18:32

武井さん、ようこそ。

ご意見、?の点もありますが、概ね同意いたします。

投稿: 坂 眞 | 2005/06/23 16:45

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