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2005/06/25

米国はイランを攻撃するか

米国が、「悪の枢軸」と呼ぶ三カ国の内の一つであるイランで、保守強硬派のアフマディネジャド・テヘラン市長(48)が大統領に当選した。得票率約62%という圧勝である。
この結果、最高指導者ハメネイ師を頂点とする保守派が、国会、司法府と合わせて
三権を独占することになり、原理主義体制は益々強化される。
これで、今後の対米関係は、悪化することはあっても好転することはなくなった。また、イランが全面支援するイスラム過激派・ハマスも、反イスラエル武装闘争を強化するであろう。

一方において、「悪の枢軸」のもう一つの国である北朝鮮の核開発をめぐる6カ国協議は、再開の目途が立っていない。米国は難しい対応を迫られることになる。
米国は、どう出るのか?

実は、米国は、イランがこうなることを予測していた節がある。ブッシュ大統領が金正日に言及する際にミスターを付けたり、もう譲歩はないと言いながら、5万トンの食糧支援を表明したりしている。これは、米国が、北朝鮮に対しては外交努力による解決を未だあきらめていないと云うことである。
いかに米国が超大国であるといっても、対イランと対北朝鮮という二正面作戦は取り
づらい。

独裁政権は政治であり、妥協もありうる。が、原理主義は宗教であり、米国への譲歩、妥協はありえない。アフガニスタンのタリバン政権を思い起こせばよく解る。
また、ハマスが勢いを増すことで、パレスチナの和平プロセスが崩壊する、つまりイスラエルの安全が脅かされることも、米国にとっては看過できない事態である。
今現在は、イラクにおける権力移譲が完了していないので、米国も動けない。しかし、
イラク情勢がもう少し改善されれば、米国はイランに対して行動を起こすのではないか。
米国にとって幸いなのは、イランには民主政治の受け皿となりうる政治勢力が存在し、国民の世俗意識も高いということである。戦後処理は、イラクよりもスムーズに行くで
あろう。

ところで、ネオコンによる世界制覇の野望は着々と進んでいる。副大統領・チェイニ-、国防長官・ラムズフェルド、国務長官・ライス、国連大使・ボルトン(前国務次官)、世界銀行総裁・ウォルフォビッツ(前国防副長官)というのが、第二次ブッシュ政権を支える主だった顔ぶれである。
ライス長官は黒人であり、ネオコンではない。しかし、その政治信条はネオコンに極めて近い。ここに、米国の価値観による民主化の強制を、外交や軍事力だけではなく、国連や世界銀行を通じた多国間外交でも積極的に推進していく体制が整ったといえる。
後は国際通貨基金(IMF)であるが、ここの総裁は欧州から出すことが慣例となって
いるので、いかにネオコンといえども手が出せない。
なお、ネオコンの代表はボルトンとウォルフォビッツであり、チェイニ-とラムズフェルドは、その後ろ楯とされる。

※但し、ライス長官とボルトン国連大使の間には確執があるという説もある。その結果、ボルトンは政権外に出された。しかし、チェイニ-副大統領が巻き返し、国連の現状に不満を募らせているブッシュ政権のために国連大使に推したとされる。

ここで、ネオコンの主張と考え方を改めて紹介しておこう。
ネオコン系シンクタンクで、「米国の新世紀のためのプロジェクト」(Project for the New American Century. 略称 PNAC)と云う団体がある。
PNAC設立趣旨書への主な賛同者は以下のとおりである。
(「肩書」は、第一次ブッシュ政権当時のもの)

・チェイニー副大統領
・ラムズフェルド国防長官
・ウォルフォビッツ国防副長官
・ロドマン国防次官補
・リビー副大統領首席補佐官
・カリルザード・アフガン担当大統領特使
・アブラムス国家安全保障会議(NSC)部長(民主主義、人権担当)
・ドブリアンスキー国務次官(地球環境問題担当)
・ジェブ・ブッシュ・フロリダ州知事(ブッシュ大統領の実弟)

PNACは次のように主張する。

「軍事力を積極的に行使し、自由や人権、民主主義、資本主義といった米国的価値観を世界に普及させるのが新保守主義」である。
「PNAC」トーマス・ドネリー副事務局長

彼らは、「帝国主義」と呼ばれることを嫌うが、「パックス・アメリカーナ(米国の世界支配による平和)」を公然と唱える。
「パックス・アメリカーナ」は、第二次大戦直後からベトナム戦争あたりまでもそう呼ばれた。しかし、そのころは、一方に共産主義陣営があり、非同盟諸国も力があった。今のような、米国のみがスーパーパワーである時代は、歴史上初めてである。

彼らは、対イラク戦争を前にして、以下のように主張し、行動していた。

『力(パワー)を積極行使するよう政府に働きかけ、米国の原理原則を世界に広めることが目標だ。反民主的な敵は「米国の覇権主義」と批判するが、強大な米国の力を認めざるを得ない。
具体的には、政権内の多くの「友人」と接触するほか、ワシントンの重要人物2500人にニュースレターを出している。
ブッシュ大統領は、米国の過去を恥じるベトナム戦争世代のクリントン前大統領と異なり、米国の指導力を発揮するだろう。だが、(国家間の)力のバランスだけを信奉する
現実主義者が政権内にいるので心配だ。
イラクのフセイン政権打倒が望ましいという点では、政権内の認識はほぼ一致している。問題はどう倒すかだ。地上軍を当初から大胆に投入し、反政府勢力のほう起を促すべきだ。
台湾の民主化は、中国文化と民主主義が両立することを示している。中国の体制が
変わるまで、安保での対中封じ込めは必要だ。
最近、欧州諸国の対米協力を取りつけることがますます難しくなってきた。この点、日本の対テロ戦での協力は前向きだ。欧州も日本のように成熟して欲しい』
「PNAC」トーマス・ドネリー副事務局長『世界に米の原理を』

「(国家間の)力のバランスだけを信奉する現実主義者」とは、パウエル前国務長官を指すと思われる。「日本の対テロ戦での協力は前向きだ。欧州も日本のように成熟して欲しい」、つまりネオコンの小泉内閣に対する評価は高いということである。

中道派が彼らを批判するのは当然であるが、実は保守派からも反発が強い。それは、「ネオコンとブッシュ外交」で述べたように、彼らは伝統的保守派をも敵とみなしているからである。

「アメリカの外交および防衛政策は目標を見失って漂流している。保守主義者たちは
クリントン政権の一貫性を欠いた政策を批判してきた。クリントン政権は仲間うちの誘いに乗って衝動的に孤立主義へと向かう動きを示してきたが、これにも抵抗してきた。
だが、保守主義者たちも世界の中のアメリカの役割についての戦略的な展望を、確信をもって発展させるには至っていない。保守主義者たちは、未だアメリカの外交政策を指導していける基本原則を示すことができていないのだ。
保守主義者たちは、これまで、戦術の一致に向けた努力を放棄してきたために、戦略目標で合意をつかむ可能性をみすみす逃してきた。しかも保守主義者たちはこれまで、アメリカの安全保障を維持し、アメリカの利益を新たな世紀にむけて前進させるための予算の獲得を真剣に行なってこなかった。

我々はこれを変えていくつもりだ。我々はアメリカの地球規模のリーダーシップを声高に主張し、支持を盛り返していくつもりだ」
「米国の新世紀のためのプロジェクト」( PNAC)綱領宣言より抜粋
1997年6月3日

「アメリカの安全保障を維持し、アメリカの利益を新たな世紀にむけて前進させるための予算」とは国防予算のことである。チェイニーを始めとするネオコンとその後ろ楯たちは、軍需産業との結びつきが極めて強い。

ところで、ブッシュ政権とネオコンを支える福音主義派は近年、米国で勢力を伸ばし、
全米の信者は7000万人前後とされる。同派を含むキリスト教右派の政治団体「キリスト教徒連合」(クリスチャン・コアリション)は会員数200万人とも云われ、政治への強い
影響力を持つ。

関連記事:ネオコンとブッシュ外交

参考記事1:“米帝国論”のシンクタンク アメリカ新世紀プロジェクト(PNAC)
参考記事2:一極化の象徴、ボルトン国連大使の登場
参考記事3:混迷続くボルトン国連大使の議会承認

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