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2005/06/24

ネオコンとブッシュ外交

「ネオコン」と云う言葉をご存知の方も多いと思う。Neo Conservativeの略で、直訳すれば「新保守主義」となる。
ブッシュ政権に大きな影響力を持ち、対イラク戦争の推進力となった。チェイニー米副大統領やラムズフェルド米国防長官がその代表格で、キリスト教右派を基盤とする。そのあたりが、私も含めた大方の理解ではなかろうか。
不勉強な私などは、日本で言えば小泉首相や安部幹事長代理あたりが似ているのかな、くらいに考えていた。
しかし、調べてみると、まったく違うのである。

ネオコンと伝統的保守主義とは、どこが違うのか?
伝統的保守主義が孤立主義であるのに対して、ネオコンは国際主義である。
伝統的保守主義が小さな政府を志向するのに対して、ネオコンは社会福祉に熱心で
ある。

ネオコンというから新しいのかと思ったら、なんと、その誕生は50~60年前に遡る。
彼らの目的と方法論は、
①アメリカ型の民主主義を世界に強制すること
②イスラエルの中東支配を成就させること(その手伝いをアメリカにさせること)
③そのためには「先手必勝」の先制攻撃をかけること
である。
まさに9.11同時テロ後の米国の行動基準そのものではないか。

今の国際社会の基本的な論理は、戦争にもルールがある、相手を勝手にぶん殴ってはいけない、国際的な合意を抜きに他国を攻撃してはいけない、というものである。
これが、第一次、第二次大戦から学んだ知恵であり、そのために国際連合がある。ところが、米国は、国連決議なしに対イラク戦争に踏み切った。ネオコンの論理そのままである。
ネオコンにとっては、国連も伝統的保守主義も伝統的平和主義も敵なのだ。ラムズフェルドが、対イラク戦争に際して、フランスやドイツを「古いヨーロッパ」と呼んで、強烈に
皮肉ったのも、この考えによる。

ところで、ネオコンは
①国際主義である
②自らの理想を世界に強制しようと思っている
③そのためには武力行使も辞さない
と述べた。
④そして実態は、少数の知識人による思想集団だと云われる。
同じようなイズムを、どこかで聞いたことがある。
そう、共産主義(マルクス主義)とそっくりなのである。
共産主義は
①国際主義である
②世界中を共産主義社会にする
③そのためには武力を持って革命を起こす
④少数の前衛が指導する
というイデオロギーである。

なぜ、右と左でありながら、こんなに似ているのか?
それは、ネオコンの源流が、なんとマルクス主義にあるからである。
マルクスの正統な後継者であるトロツキー(注-1)は、スターリンとの権力闘争に
敗れ、メキシコに亡命していた。そのトロツキーの指導の下(もと)に生まれたのが、
アメリカ社会主義者党(SWP)である。
メンバーは、ナチスによる迫害から逃れてきたユダヤ人が多かった。マルクスもトロツキーもユダヤ人であるから、ユダヤ人にとってマルクスの思想は馴染みやすかったので
あろう。
ネオコンが社会福祉に熱心なのも頷ける。

SWPにとって最大の敵はナチスであった。ところが、共産主義革命の祖国ソ連が、あろうことか1939年に独ソ不可侵条約をナチスと結んでしまう。ここで、悪魔と手を結んだ
ソ連・スターリンに対する憎悪に近い敵意が生まれる。
このときに生まれた反スターリン主義者が、ネオコンの源流になる。反スタ主義は、
やがて反共主義に転化する。

ネオコンの多くはユダヤ人と云われる。ユダヤ人(ユダヤ教)とキリスト教右派は本来
相容れない間柄である。そのキリスト教右派がネオコンの基盤になっているのは、
倫理・道徳観が類似していること。そして何より、イスラムの脅威に対する危機感を
共有していることである。

ネオコンの本質が以上であれば、その気になれば、日本の思惑など関係なしに一気に北朝鮮を攻撃することも考えられる。ブッシュ政権が、中国の位置づけを、クリントン
時代の「戦略的パートナー」ではなく、「戦略的競争相手」に変えたのも、ネオコンの
「アメリカ型の民主主義を世界に強制する」という考え方が反映された結果と見るべきである。
もちろん、政治や外交は理想だけで動くものではない。国益や各種の利害関係が複雑に絡む。しかし、ブッシュ大統領がキリスト教右派に軸足を置いているのは間違いない。倫理・道徳観や対イスラム観、民主主義に対する考え方がネオコンと共通しているのも間違いない。そのブッシュ政権は2009年1月まで続く。

今の日米関係は、史上最高・最良の関係にあると云われる。しかし、それがブッシュ・小泉の個人的信頼関係だけに依拠しているとすれば危険である。米国の戦略、ネオコンの本質を十分に理解しなければならない。
パウエル前国務長官ら中道派が去ったブッシュ政権は、さらにネオコンの影響力が
強まると思われる。
韓国の盧武鉉政権と同じように、「日本の戦略的価値は終わった」「日本が米国側の
要求を受け入れない場合、駐日米軍を撤退させる状況が来ることもあり得る」と恫喝
されることもあり得ないことではない。

私も、その昔、トロツキーの思想に惹かれたことがある。そして、今は対極にいる。
だから、ネオコンの考え方がある程度理解できる。要は、マルクス主義の裏返しなのである。やはり、唯一神の宗教の下(もと)で育った人たちは、正か邪か、善か悪かの
二分論が思考回路に染み付いているのであろう。

(注-1)トロツキー
ロシアの革命家・政治家・思想家。赤軍の創設者のひとりとしてソビエト連邦の草創期に活躍したが、のちにスターリンと対立して追放され、亡命先のメキシコで暗殺された。

関連記事1:ネオコン対アルカーイダ
関連記事2:草の根のキリスト教右派

参考資料1:米国の原理の下 今でも世界革命目指している
参考資料2:米中関係とネオコンの行方
参考資料3:“米帝国論”のシンクタンク アメリカ新世紀プロジェクト(PNAC)
参考資料4:ジョージ・ウォーカー・ブッシュ

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コメント

 アメリカの伝統的保守に、憑依し、滲入した極左思想ですね。すばらしい分析です。
 新たな気づきがありました。

投稿: くえひこ | 2005/06/25 08:26

くえひこさん、初めまして。

>アメリカの伝統的保守に、憑依し、滲入した極左思想ですね。

私も、今回、調べるまで知りませんでした。
でも、私も左翼だったので、思考回路はよく解ります。

投稿: 坂 眞 | 2005/06/25 22:53

ネオコン=元左翼?

古い世代についてはそうですが、現在のネオコンについては当てはまってはいません。ウィリアム・クリストル2世やロバート・ケーガンが左翼だったことはありません。

現在はフランシス・フクヤマや英国人の歴史家でハーバードとオックスフォードで教鞭をとるニール・ファーガソンらもネオコン・グループに加わっています。こうなると元左翼という性格は大きく変わってきていると思います。

「日本のネオコン」という誤解は、ご指摘の通りに正されねばならないと思います。彼らはむしろネオ・ナショナリストと呼ぶべきで、世界に自由や民主主義を広めようという使命感など全く持っていません。

投稿: 舎 亜歴 | 2005/06/26 10:29

舎 亜歴 さん
初めまして。コメントいただき、大変ありがとうございます。

>古い世代についてはそうですが、現在のネオコンについては当てはまってはいません。

確かにご指摘のとおりですね。ただ、私は源流(ルーツ)がそうであることを重視するのです。
私は、その昔トロツキストでした。マルクス主義が絶対的真理であり、真理に反するものは暴力的に抹殺してもかまわない。そう思っていました。
ネオコンのメンバーが、左翼体験のあるなしに関わらず、同じような思考回路を引き継いでいるのは間違いありません。
私も、今は右ですが、武力行使(暴力)を肯定します。特に、北朝鮮などは武力で抹殺するのが正義であると信じています。

投稿: 坂 眞 | 2005/06/26 11:42

 ところで、アメリカ軍が日本から引き上げれば、代わりにどこに駐留させるんだろうか?
 それに、日本以外にどこがアメリカ国債を大量に引き受けるんだろうか?
 アメリカ軍の日本での駐留って、まだまだ続きそうだ。

投稿: Leoneed_of_Podol | 2005/06/27 13:26

Leoneed_of_Podol さん、初めまして。

>ところで、アメリカ軍が日本から引き上げれば、代わりにどこに駐留させるんだろうか?

日本が韓国=盧武鉉政権みたいになることはないとは思っています。
日本の政治家はバカじゃない。しかし、民主党になると、ちょっと不安ですね。

投稿: 坂 眞 | 2005/06/29 11:40

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» ネオコンを考える [worldNote]
現在、アメリカの関わる世界情勢の理解に、ネオコンと穏健派のダイナミズムは欠かせない(こういう話の参考は、田中ニュース.com「ネオコンの表と裏」がいい)。 ネオコンとは、アメリカでイスラエル擁護に通じる政策を画策してきたユダヤの一勢力(閨閥に近い)だという。軍産複合体はアイゼンハワーが批判したものだが、ネオコンは軍産複合体と共にあった。軍縮よりも、アメリカだけの軍拡が望ましい。 ... [続きを読む]

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