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2005/07/24

中国に奇跡は起こるのか?

人民元の切り上げは、その上げ幅が極端に小さかったことにより、世界経済に与えた影響は極めて限定的である。
それより、むしろ、わずか2%だったため、更なる切り上げを見込んだ急激な投機マネーの流入を心配する声の方が大きい。利ざやを稼ぐために膨大な外貨が流入すれば、
マネーサプライ(通貨供給量)が増大し、バブルが益々肥大化するからである。
中国は既に巨額のドルと米国債を保有している。人民元を支えるために、これ以上市場に介入するのが危険であることは、中共政府も自覚しているはずだ。
市場では、人民元の実質的価値からすれば最低でも20%の切り上げが必要との指摘もある。バブルは既に危険水域にあるとされる。バブルを抑えるためにも更なる人民元の切り上げは避けられない。
しかし、人民元の大幅な切り上げと変動相場制への移行は、大きなリスクを伴う。誰もが思いつくのが、輸出競争力の低下による輸出主導型経済成長の鈍化である。
日本が「プラザ合意」後の急激な円高に伴う「円高不況」を乗り切ることができたのには三つの理由がある。
①企業の大胆なリストラ
②コストの安い海外への生産拠点の移行
③輸入依存度の高い原材料の購入コストの低下
以上の三つが日本経済を立て直した。
中国が③を実現するのは間違いない。が、①と②は果たして可能であろうか?

中国経済は、基本の部分で大きな欠陥を抱えている。私が何度も指摘してきた、非効率な赤字国有企業群の存在と、それを支える四大国有銀行の巨額の不良債権である。
不良債権率は20%前後とされる。もっと高いという分析もあるが、20%でも既に世界
最悪のレベルである。国有企業群のリストラと四大国有銀行の不良債権の整理を行わないままでの変動相場制への移行は、中国経済の崩壊に直結する。
中共政府は、公的資金の投入と四大国有銀行の海外市場での上場でこの問題をクリアーしようとしている。中国銀行と中国建設銀行の2行は、当初年内の海外上場を目指していた。しかし現時点で、早くても来年以降と言われる始末である。国有企業への
融資をもっぱらとする工商銀行は、その目途さえまったく立っていない。

中国経済の問題点はまだある。中国経済の成長が、自国の資本蓄積によるものではなく、外資依存型の開発独裁であるという点だ。
外資依存型の開発独裁といえば、その代表選手が韓国である。韓国は、「漢江の奇跡」と呼ばれる経済成長を遂げて、先進国クラブと云われる経済協力開発機構(OECD)加盟を果たした。
この韓国の奇跡の経済成長には大きな理由がある。
一つは日米による巨額の資金援助である。特に日韓基本条約に基づく日本からの多額のODA(政府開発援助)が韓国の成長を後押しした。
次に、日本の企業による積極的な技術協力も韓国経済を格上げした。今や世界的な
鉄鋼メーカーであるポスコの前身・浦項綜合製鉄は、新日鉄による全面的協力の賜物である。米市場で日本に次ぐ現代自動車も、最初の頃は三菱自動車がエンジンやシャーシーを供給していた。新日鉄とポスコ、三菱自と現代は、今でも提携関係にある。
そして、これらの二つの条件を可能にしたのが朴正熙軍事独裁政権の存在である。
汚職や横領が横行し、治安が乱れていた李承晩政権下の韓国を、朴正熙大統領
(当時)が軍事力を背景に粛清したのである。
国民の反対を押し切って日韓基本条約を締結した朴正熙の存在なくして「漢江の奇跡」はなかった。朴正熙は、日本名を「高木正雄」といい、日本の陸軍士官学校を卒業し、満州軍第8団の中尉として終戦を迎たという経歴の持ち主である。戦後の一時期、共産党に入党したが、その後転向し米国に留学した経験を持つ。歴代政権の中でもっとも
潔癖と云われ、彼の治世を懐かしむ声は今でも少なからず存在する。

一方において、外資依存型の開発独裁で経済成長を果たしたもう一つの例がラテンアメリカである。しかし、ラテンアメリカ諸国では高い技術力を持った自前の産業が育たず、やがて経済は崩壊した。
ラテンアメリカ諸国で自前の産業が育たなかった理由は様々だが、各国に共通しているのは汚職や横領などの政治・経済の腐敗と、非効率で貧富の格差が激しい社会制度である。

果たして中国の現実は、当時の韓国とラテンアメリカのどちらに似ているであろうか?中国に「揚子江の奇跡」は起こるのだろうか?
いずれにしても、今後の人民元の動向と、四大国有銀行の上場問題の行方から目が離せない状況が続くことは間違いない。

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中国崩壊シリーズ」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。
①も②も、現時点でも失業率に悩む現在の中国では不可能だと思いますし、所謂貧困層や国民一人当たりGDP等、社会の成熟度を比較すれば、「プラザ合意」時点での日本と同じ手法を考えるのは、ちょっと無理があるのではないでしょうか。

中共政権にしろ、崩壊後の新政権にしろ「揚子江の奇跡」を実現するには、仰る様に、
A.技術移転等の協力を得て、模倣でない、国内産業の「技術革新能力」を育成できるか?
B.近代化に向けた「政治・社会制度改革」を敢行出来るか?
に懸かっていると、私も思います。
Aは、先進各国や多国籍企業の思惑もあるでしょうが、ある程度の技術移転は進むのではないでしょうか。しかし、自前の「技術革新能力」となると、人民全体の継続的向上心如何だと思います。(尤も、技術革新なら欧米流のM&Aの方が効率が良いと考えているのかもしれませんが・・。)
Bについては、中共政権下では勿論、民意を受けた新政権下でも、全体の意識が変わらないと(最低二世代位掛かる)難しいのではないかと思います。
海外青年協力隊で南米に渡り、30年以上現地で暮らした方に、十数年前にお話を伺ったことがあります。貧困から抜け出そうとする現地の人達が、1番に考える方法は、やはり「金持ちからの略奪」で、2番目が(手蔓等の困難が伴うが)「権力者との癒着」だそうです。大金目当てに、銀行員と警察官が組んでの路上強盗など日常茶飯事だとも聞きました。そしてこの考え方はずっと変らずに来ており、今後100年経っても変らないだろうとのことでした。

投稿: 靖彦 | 2005/07/24 23:20

いつも愛読してます
中国に関する情報・分析が大変勉強になります

経済が過熱してもダメ・不景気になってもダメ。
国内では汚職・暴動・貧富の格差・公害。
国外ではエネルギーの枯渇を恐れるあまり、ナリフリかまわぬ
手段での資源確保に世界中で摩擦を引き起こす。

しかしこれで体制がもってるのだから中共もしぶといですねw

小泉さんが靖国・ガス田等で煽ってやれば簡単に反日暴動→反政府暴動で
つぶれそうなのですが

ライス国務長官も本気で人権を外交のテーマにしようというのなら
何故中国(と北朝鮮)の人権問題を大きく取り扱わないのか

一見日米は中共政権の存続を望んでいるようにさえ思えます。
少なくとも表立って中共政権を追い詰めるような行動をとっていません。

日本はともかくこれは米国の行動としては不可解ではないでしょうか。
だって中共はその名のとおり共産党一党独裁政権です。

ソ連と鋭く対立して、ソ連邦を崩壊まで追い詰めたのはほかならぬ米国なのですから

僕はこれは大雑把にいって
日本は中長期戦略の不在から場当たり的行動しかできない。
米国はイラク・イランと中東問題プラス北朝鮮の核問題で手一杯だから。
ではないでしょうか。

坂眞さんはどうお考えでしょう?
是非このあたりの分析もお願いします。

投稿: おい | 2005/07/25 17:42

靖彦さん、まいどです。
>尤も、技術革新なら欧米流のM&Aの方が効率が良いと考えているのかもしれませんが・・・

その節は見受けられます。でも、安易過ぎます。

>そしてこの考え方はずっと変らずに来ており、今後100年経っても変らないだろうとのことでした。

中国も「阿Q精神」が変わらない限り無理でしょう。
私は楽観しておりません。


おい さん、ようこそ。
>いつも愛読してます
中国に関する情報・分析が大変勉強になります

ありがとうございます。

>僕はこれは大雑把にいって
日本は中長期戦略の不在から場当たり的行動しかできない。
米国はイラク・イランと中東問題プラス北朝鮮の核問題で手一杯だから。
ではないでしょうか。

大体、当たっていますね。
現時点では、中国の崩壊と、東アジアの混乱を日米とも望んでおりません。
イラク・イランと中東問題プラス北朝鮮の核問題で手一杯だからです。
だからといって、太平洋の西端に、米国と並ぶ「超大国」が出現することも許容できない。
もちろん日本も。
対中政策は5~10年のスパンで考えているのではないでしょうか。

投稿: 坂 眞 | 2005/07/25 21:05

最悪は、中国が崩壊して内戦になる事です。そうすれば、21世紀前半の最大の悲劇になるでしょう。。
崩壊するにしても、いかにソフトランディングで崩壊させるか。アメリカがどういうシナリオを描いているのか、気になるところです。

投稿: つよし | 2005/09/02 12:19

つよしさん、初めまして。
>崩壊するにしても、いかにソフトランディングで崩壊させるか。アメリカがどういうシナリオを描いているのか、気になるところです。

これが何とも予測しかねるところですね。
台湾有事も考えているようですし、人民元の変動相場制移行要求もかなり強硬。
かと思えば、金融機関は不良債権の削減に協力的。
ちょっと読めません。

投稿: 坂 眞 | 2005/09/02 14:51

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