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2005/07/03

胡錦濤とチェチェン虐殺

ロシアの北オセチア共和国で起きた「小学校襲撃・人質事件」を覚えておられる方も
多いと思う。小学生やその親などに多数の犠牲者が出た。
その犯人は「チェチェン独立派」であるとされる。報道は「チェチェン独立派」=テロリスト=極悪人と云う基調で書かれたものが多い。果たしてそうであろうか。
以下は、ロシア軍による、チェチェン共和国に対する軍事侵攻を批判する立場に立つ
サイトからの引用である。

「対テロ戦争」を声高に叫ぶものこそ、真のテロ推進者かもしれない――。このような
疑問をもって事態を冷静に見る必要もあるのではないか。

ロシアの北オセチア共和国の学校人質事件では、とてつもない数の命が奪われた。
ロシア当局の発表はもちろん、日本の報道でも「チェチェン独立派の犯行」「独立派の
バサーエフ司令官が関与しているという」「チェチェンで夫を失った黒服の女たち」・・・と、まことしやかな情報を流している。その真偽については、今のところわからない。
現段階では、一連のテロの根源には何があるかが最重要である。チェチェンで何が
起こっているのか、ということだ。

チェチェンはロシアの陸続きの植民地であり、何百年にもわたってロシアの支配と弾圧を受けつづけている。最終的にロシアに武力併合されるに至った50年におよぶカフカス戦争では、全民族の約半数が犠牲になった。

また第二次大戦中の1944年には、ナチス・ドイツへ協力したというレッテルを貼られ、
民族丸ごと貨車に詰め込まれて中央アジアのカザフスタンに強制移住させられた。
12年後に故郷への帰還を許されるも、生きて故郷の土を踏めたものは、3分の1しか
いなかったという。

過去に人口の半分以上を失うほどの弾圧を2回も受けていることになる。そして91年にチェチェンが独立宣言したことに端を発する現在の戦争(94年にロシア軍が侵攻)は、
3回目のジェノサイド=大量虐殺にあたる。

百万人に満たない小国で、すでに犠牲者は20万人以上といわれる。北オセチアでの
事件の残虐性に世界中の目がくぎ付けになっているが、もし、このような事件が300回も400回も、日本の岩手県くらいの範囲で起きたことを想像してもらいたい。それがチェチェンの現状である。

プーチン・ロシア大統領の言う「対テロ戦争」どころか、この戦争は、チェチェン市民を
狙った「対市民戦争」と言える。

無差別の爆撃と砲撃は言うまでもなく、最大の問題は、日本でもまれに報道される
「掃討作戦」の中身だ。全土を占領しているロシア軍は、特定の村を包囲し、一斉に
民家に押し入る。金目の物を略奪し、たとえば80歳以上の老人を刺し殺したこともある。女性を強姦する事件が後をたたない。

さらに、たいした理由もなく、住民を拉致し、収容所に連行。ここでさまざまな拷問が
行なわれる。ロシア人ジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤの『チェチェンやめられない戦争』(NHK出版)によれば、ゲリラを家に泊めた容疑で62歳の女性が深さ1メートル20センチくらいの穴に10日以上も閉じ込められ、電機拷問を受けたり、糞尿入りバケツを口にくわえて階段を何度も上り下りさせられた若い女性もいる。

あるいは、椅子に座らされて座面の下に手錠でつながれる。ガスマスクをかぶせられて吸入管を閉じられる。すると苦しさに耐えかねて、必死で手錠をはずそうとするため手首に深い傷を負う・・・

ロシア軍はチェチェン人を逮捕すると家族に法外な身代金を要求し、支払えなければ
拷問にかける。死亡した場合には遺体引渡し料金を要求するのだ。

私自身、現地取材で何度もこのような被害にあった人やその家族から話を聞いたが、身代金は高いケースで6000ドルほどになる。これは国際人権団体のヒューマンライツ・ウォッチなどの調査とほぼ一致する。
「対テロ戦争」を声高に叫ぶものこそより引用

今回、チェチェンでロシア軍が、いかに残虐な行為を恒常的に働いているかを記事にしたのは、ロシアとプーチンに対する怒りだけではない。下記の記事を読んだからである。

胡主席は会談後、中国が陳水扁政権の独立志向を懸念する「台湾問題」と、ロシアが国際的な非難にさらされる「チェチェン戦争」を巡り、中露が外交面の「相互支援体制を強化」することで合意したと表明した。
(後略)
中露首脳会談「台湾」「チェチェン」相互支援で合意
( 2005年 7月 1日 読売新聞)

歴史上、一度も中共の支配を受けたことのない「台湾独立問題」と、ロシア軍による
人権侵害で国際的な非難にさらされる「チェチェン独立問題」を同列視するという胡錦濤の独善と人権感覚の希薄さ。己の利益のためであれば、正義を悪とし、悪を正義とする信じがたい政治感覚。
確かにロシアは「チェチェン独立派」をテロリストと規定している。しかし、チェチェン人の自爆テロ犯の大半は、夫や恋人をロシア軍に虐殺された女性なのだ。その、ロシアによる国家テロを公然と支持し、あまつさえ「台湾独立派」をテロリストに貶める。
「対テロ戦争」を第一の政治目標に掲げるブッシュ政権でさえ、「チェチェン戦争」は
「不公正な戦争」とみなしている。肯定したのは、「9.11同時テロ」の直後だけだ。

胡錦濤の独善と人権感覚の希薄さ、正義を悪とし、悪を正義とする信じがたい政治感覚が露になったのは、今回だけではない。
胡錦濤は、前回のプーチンとの会談でも同様の言動を行っている。大戦末期のソ連に
よる対日参戦と、日本兵のシベリア抑留を賛美し、ロシアに感謝しているのだ。

>対独戦勝60周年記念式典出席のため訪露している中国の胡錦濤主席は9日、プーチン大統領と会談し、抗日戦争で、「(旧)ソ連は日本の侵略者に対する中国の闘争に貢献してくれた。中国人民はこのことを忘れない」と語った。
(後略)
『胡主席、旧ソ連の対日参戦を高く評価「抗日に貢献」』
(2005年5月9日 読売新聞)

このような指導者と、このような指導者が率いる国が日本の友好国になれる筈がない。
今回の動きは、ロシアとの間で、「大規模な合同軍事演習」を来月実施することで一致したことと併せて、台湾独立を巡る米国とのパワーゲームの一環であろう。
中露が大規模演習 来月 台湾武力侵攻を想定か
(2005年7月3日 産経新聞)
しかし、世界全体のパワーバランスを見失った、目先しか見ていない動きは、必ずや
手痛いしっぺ返しを食らうであろう。

関連記事1:悪の連合
関連記事2:深化する「悪の連合」

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コメント

先月でしたか、市民大虐殺を行なったウズベキスタンのカリモフ大統領が、事件後真っ先に訪れたのも中国でしたね。その後大統領はロシアも訪れ、プーチン大統領を賛美しています。類は友を呼ぶ。

投稿: masa | 2005/07/03 20:38

おはようございます。
今日のチェチェン&中露馴れ合いについてのエントリーも大変興味深く拝読させて頂きました。

masa様も書かれていますが、今中国はこういった政権に擦り寄りまくっていますね。当方も直ぐにウズベキスタンの事を思い出しました。あんな極悪人の訪中時には礼砲21発ってなんだそれは!と怒って記事を訳したのは未だ記憶に新しく…。

どうも冷戦時代と同じ辺りに再度線が引かれつつあるような気がしてなりません。

投稿: 喜多龍之介 | 2005/07/04 09:23

masaさん、どうもです。

>市民大虐殺を行なったウズベキスタンのカリモフ大統領が、事件後真っ先に訪れたのも中国でしたね。
>類は友を呼ぶ。

ウズベキスタンの記事を書きたいと思っていたので参考になりました。

喜多龍之介さん、こんにちわ。
5月26日の「類は友を呼ぶ ウズベキスタン&中華人民共和国 」という記事、拝読しました。参考になりました。
ありがとうございます。

投稿: 坂 眞 | 2005/07/04 14:50

こんにちは。

かつて'60年代、中ソ国境紛争で、中国人民が20万も虐殺された挙句、アムール川に死体を遺棄した過去はスルーですね。
中国の強い者に媚び、弱いと見るとひれ伏す、奴隷根性の面目躍如。
私もチェチェンについて書いてますので、TB貼らせて下さい。

投稿: mugi | 2005/08/16 09:59

mugiさん、どうもです。
外交は駆け引きであり、騙しあいであると言われますが、国家としての理念が必要です。
中共政府にあるのは、資源と反米だけ。
それだけの国です。
TBは遠慮なくどうぞ。

投稿: 坂 眞 | 2005/08/16 10:17

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