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2005/08/22

中共:崩壊する統治能力

「土地を返せ」「政府にだまされた」。畑と工場が点在する村に怒声が響いた。今月8日朝。広東省仏山市南海区の郊外。区政府出張所を農民数百人が取り囲み、職員は
出て来られない。公安の説得で、農民が「封鎖」を解いたのは4時間後だった。
発端は今年3月。区政府が突然、1992年の契約書を示し、農民7000人に立ち退きを
求めた。契約書には「土地使用権を上級部門の南海区政府に移転する」とあり、当時の村幹部の署名があった。
農民の転居費用、補償条件は書いていない。農民の一人は「そんな契約書は、だれも知らない。今になって役人は『出て行け』『補償はない』と言う。こんな横暴があるか」と吐き捨てるように言った。
土地は12平方㌔・㍍。省都・広州に向かう幹線道路に近く、再開発にもってこいの場所だ。ここに物流センターなどを作る計画で、区政府には数億元の利益が入ると見られている。
農民は5月、開発業者のブルドーザーの搬入阻止を試みたが、区政府は警官4000人で強制排除。着々と収用を進め、転居を余儀なくされた農民も出た。8日の騒動は「敵の本丸」を狙った実力行使だった。
その数日後、農民たちに「8月中に土地収用を再開する」との通知書が届いた。区政府は「警官3000人を動員する」という。
(中略)

「土地開発は実にうまみが多い。地方政府と密接な関係を持つ開発業者が仲介し、
二束三文で農地を収用して再開発し、経済開発区などとして売り出す」。上海の開発区で外資系企業誘致を担当するコンサルタント業者が打ち明けた。
「地方政府の仕事は、地図の上に線を引いて区画を決めて業者に手渡すことくらい。
こんなに楽して、もうかる仕事はない」
仏山の騒ぎの翌日、近くの深圳で商用地の競売が行われた。総面積36平方㌔。深圳で今年最大規模の「売り出し」。落札総額は予想価格を4割も上回る16億5900万元(232億2600万円)だった。
土地収用では、地方政府と業者が利益の8割以上を手にし、農民に渡るのは1割以下とされる。中央政府は土地収用が「腐敗の温床」になっているとして規制を始めたが、地方政府は一度覚えた味を忘れない。
北京の人権問題研究家(35)は「地方政府は農民の財産を違法に奪っている。さらに
多くの暴動が起こる」と警告する。
(後略)

再開発 土地収用で紛争相次ぐ
(2005年8月20日 読売新聞)

以上をお読みになって、どう感じられるだろうか?
地方政府の、業者とグルになった違法かつ強引な農地収用。それに体を張って抵抗する農民。これまでもたびたびメディアで報じられてきたし、私も何度か記事を書いた。

①「中国崩壊への胎動」 ②「中国は間違いなく崩壊する part2」 参照。

しかし、今回は、これまでとは少し状況が違う。
去る7月5日に開かれた中央政府の会議で周永康公安相は、民衆による暴動、騒乱などを指す「集団性事件」について次のように報告した。
「集団性事件(暴動・騒乱事件)」は、1994年の1万件から昨年は7万4000件に激増し、参加者数も同73万人から376万人に膨れ上がるなど、急速に拡大している。しかし、「基本的には経済利益上の問題で、明確な政治目的はなく、大部分は予防と適切な
処理が可能である」と。
にもかかわらず、直後にこういう事件が起きている。しかも仏山市は、先進地域・深圳のすぐ近くなのだ。周公安相の発言とは裏腹に、予防も適切な処理も不可能であることを事実が示している。
映像がTVで放映されたので覚えておいでの方も多いと思うが、6月11日にも河北省で、発電所建設に反対する住民らを地方政府に雇われた武装集団が襲撃し、6人の
死者を出している。
温家宝首相は、昨年10月末、国務院(内閣)の全国会議で「農地を保護し、法に基づいて土地を管理し、農民の利益を保障しなければならない」と強調し、中央政府も社会の不安定化につながるとみて警戒を強めていた。そのさなかでも、こういう事件が後を
絶たないということだ。

私は、前出「中国崩壊への胎動」の中で以下のように書いた。

この「独裁的な共産党政権」というのが大きな勘違いなのだ。「共産党
政権」は共産主義イデオロギーで末端まで統一されている中央集権的独裁体制である。しかし、今の中共には共産主義イデオロギーは既に
ない。鄧小平の指導の下、「継続革命」路線から「改革開放」路線へと
コペルニクス的転換を図った時点で、共産主義から経済成長至上主義に変わったのだ。
したがって、党も社会も「カネ」がすべての基準である。そこには政治的規範も社会的規範もない。今の中共は中央集権的独裁政権ではなく、地方分権的独裁政権なのである。だから党中央がいくら笛を吹いても、地方政府は思惑通りには踊らない。むしろ自分勝手に踊りだすのである。

「失地農民」は既に全国で4千万人以上にのぼり、今後も毎年200万人以上のペースで増えるとみられる。まさに、北京の中共中央政府は、統治能力を喪失しつつあると言っても過言ではない。

私は、同じく「中国崩壊への胎動」の中で次のようにも指摘した。

胡錦濤政権は、発足当初から格差是正、弱者救済、腐敗対策を優先課題に掲げている。いや、その前の江沢民政権時代もそうだった。しかし、事態は一向に改善されていない。「大部分は予防と適切な処理が可能」であれば、今頃は解決しているはずだ。

以下、同じ読売新聞から、中国共産党幹部の凄まじい腐敗ぶりを報じる記事を紹介する。

「副県長ポストは17万元(1元は約14円)」「局長なら約10万元」--。中国沿海部、
福建省周寧県で行われていた「官職売買」の価格だ。社会主義市場経済下で進む
官僚たちの腐敗。不正は官職売買のほか、市街地再開発をめぐる収賄、公金横領、
不正融資、密輸など実に幅広い。
新華社発行の時事雑誌「半月談」によると、周寧県は人口約19万人、財政収入わずか3000万元の山間の貧困県。ここのボスが林竜飛・県共産党委員会書記。官職売買、公金乱用、女遊びの“三冠王”だった。
ある県建設委員は同委員会主任に抜擢された謝礼として2001年11月、林書記に4万元を渡した。主任はその後も5回にわたって計6万元以上を贈り、その結果、翌年の
機構改革でも解任を免れた。
同県では林書記が人事権を独占。ポストを欲しがる幹部の間で賄賂合戦が起き、1996年から2003年までの在任中、幹部1000人以上の異動に絡んで計230万元以上を手にした。汚職摘発が任務のはずの副検察長や監察局副局長も賄賂を贈っていた。林書記は昨年12月、死刑の一審判決を受けている。
官僚の腐敗は全土に広がっている。党機関紙・人民日報(電子版)によると、最高人民検察院は7月、2000年から今年6月までに官僚の汚職事件3万4685件、3万8554人を摘発したと発表した。直接の経済的損失は計約480億元。官僚1人がもたらした損失は100万元を超える計算となる。
さらに近年は、閣僚や省トップが摘発されるなど、腐敗が上層部にまで及び始めた。2003年、河北、貴州両省で元トップが腐敗事件で党を除名されたほか、国土資源相が規律違反で解任された。昨年2月には安徽省の副省長が収賄罪などで死刑になった。
胡錦濤政権は「党内監督条例」を公布し、相互監視システムの構築に乗り出した。
(以下略)

はびこる官僚腐敗
(2005年8月20日 読売新聞)

収賄で死刑になる国で、なぜこうも腐敗がはびこるのか。それはシステムの問題ではない。拠って立つべき規範がないのだ。

①法治社会ではなく人治社会であること。
②共産党主義イデオロギーが崩壊した後、それに代わる政治的、社会的規範を見出せていないこと。
③宗教を否定し弾圧してきた結果、先進資本主義国のような宗教的倫理観が欠如していること。
④「人命は紙よりも軽く、欲望は底なし沼よりも深い」と言われる民族性を克服できないこと。
⑤過去の党による大罪、「大躍進」や「文化大革命」が事実上不問に付されていること。
⑥権力が世襲され、社会的身分や貧富の格差が固定化されつつあること。

以上の結果、コネとカネが社会を支配し、権力志向と欲望が社会を突き動かしている。そして、それをチェックしバランスを取る機能が、司法・行政・立法・メディアのすべてにおいて欠如している。要は、近代国家の体をなしていないのだ。
前時代的・前近代的社会に、むき出しの資本主義を接ぎ木した結果なのである。暗黒の中国社会に出口は見えない。

関連記事1:中国は間違いなく崩壊する
関連記事2:中国は間違いなく崩壊する part2
関連記事3:中国は、いつ崩壊するのか?
関連記事4:中国崩壊の序章
関連記事5:中国崩壊の序章-part2
関連記事6:石油をガブ飲みする中国の末路
関連記事7:中国は間違いなく崩壊する part3
関連記事8:中国に奇跡は起こるのか?
関連記事9:中国崩壊への胎動
関連記事10:中国は崩壊後どうなる?

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中国崩壊シリーズ」カテゴリの記事

コメント

こんばんわ
話し違いますが、私が小泉さんが何しても支持するのは、腐敗の匂いがしない、腐敗(天下り・談合)の温床である官庁(道路公団・郵政等)に手をつけているからです。何人かの日本の政治家も中国の悪しき風潮の中にまだいると思います。頼むから野蛮な事止めてくれ!です。
坂さんが今まで書き連ねてた中国関連の記事はどれも細部に渡り感動してました。私も中国崩壊のプロセスは始まっていると思います。中国の経済成長に目を奪われすぎると中身が見えなくなりますが、特に、1.腐敗や人権侵害に対する政府への不満の蓄積。2.エネルギー不足・自然破壊問題。3.通貨(元)の切上げ・負債の多さ。これらは修正不可能です。日本としては覚悟して、巻き込まれない為の努力をしなければならないでしょう。

投稿: NZ life | 2005/08/22 21:16

こんばんは。中共崩壊は目に見えて近づきつつあると感じ喜んでいるのですが、ここ最近中共軍人の危険な発言が相次いでネットにリークされています。半ばヤケクソで台湾侵攻や尖閣諸島を占拠など人民解放軍が暴走しないか?と危惧しております。崩壊を感じ覇権主義の中共が素直に大人しく受け入れるのか?と考えると恐ろしいシナリオを想像してしまいます。崩壊についてどのように思われているのかあれば是非お聞かせ下さいませ。

投稿: サカエイ | 2005/08/22 23:42

中国は確実に崩壊へと向かっているのですね。しかし、ただそれを見ているだけではつまりませんね。日本が、民間でお手伝いできることってないでしょうか?

投稿: 空色 | 2005/08/22 23:54

もはや、崩壊した後はどうなっていくのかを考える時期なのかもしれないと思ったりします。
きっかけは靖国参拝であったら、英霊の勝利?

崩壊すると、まず上海、北京、広州の3大経済圏に国家分裂、残りも大きく三つ、福建省(台湾と同じ文化圏)、東北三省、異民族の中西部(チベット、内蒙古、満族、ウイグル)。
そういったことを宮崎正弘さんが言っているようです。
http://www.melma.com/backnumber_256_2249639/

投稿: 岩手の田舎人 | 2005/08/23 21:05

NZ lifeさん、こんばんわ。
>特に、1.腐敗や人権侵害に対する政府への不満の蓄積。2.エネルギー不足・自然破壊問題。3.通貨(元)の切上げ・負債の多さ。これらは修正不可能です。

そのとおりですね。私は歴史に「必然」があるというのはマルクスみたいなので、言いたくありませんが、このまま中国が成長したら世界は破滅です。
ありえません。
ただ、
>日本としては覚悟して、巻き込まれない為の努力をしなければならないでしょう。

もう相当巻き込まれていますね。無傷ではすまないでしょう。


サカエイさん、どうもです。
>半ばヤケクソで台湾侵攻や尖閣諸島を占拠など人民解放軍が暴走しないか?と危惧しております。

実際にありうることです。単なる危惧ではすまないと思います。
中共は間違いなく崩壊しますが、中国という社会は残りますね。
ただ、外国語と同じレベルの主要方言が七つもあり、経済も4大外資投資地域に分かれています。
このあたりで分裂するのではないでしょうか?
あとは、チベットやウイグルやモンゴルの民族ごと。
大変な混乱が起こると思います。


空色さん、どうもです。
>日本が、民間でお手伝いできることってないでしょうか?

ありません(笑い)。

貴Blog、拙Blogでご紹介したいと思います。


岩手の田舎人さん、まいどです。
>崩壊すると、まず上海、北京、広州の3大経済圏に国家分裂、残りも大きく三つ、福建省(台湾と同じ文化圏)、東北三省、異民族の中西部(チベット、内蒙古、満族、ウイグル)。

私もほぼ同感です。
ただ、経済圏は、あと福建がありますね。
それから外国語と見まがうばかりの方言が七つあります。
通訳がいないと意思疎通ができない。
このあたりではないでしょうか、分裂は。

投稿: 坂 眞 | 2005/08/23 22:39

こんにちわ
中国が分裂するとしたら7から8で連邦制になれば台湾も参加する可能性は有りますが、チベットは独立するのではないですか?
でも援助の無くなった北朝鮮は崩壊し、韓国と統一しなければならなくなると、大変ですね
GDP/一人で10倍違いますから、韓国が相当頑張って建て直しをしないといけなくなる。
それとも中国の一つの州になるのですかね。

投稿: nasadon | 2005/08/24 15:28

nasadonさん、どうもです。
>でも援助の無くなった北朝鮮は崩壊し、韓国と統一しなければならなくなると、大変ですね
GDP/一人で10倍違いますから、韓国が相当頑張って建て直しをしないといけなくなる。

10倍ではききません。正式な統計がないので推測ですが50~100倍は違うでしょう。
あの西ドイツでさえ、東ドイツを吸収した後は大変でした。
5年以上おかしかった。
韓国はきっと一緒に沈没します。
そのときは、まず米国、次に日本に助けを求めてくるでしょう。
間違いありません。

投稿: 坂 眞 | 2005/08/24 17:20

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