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2005/09/26

人民元切り上げがもたらす恐怖

今年初め、国務院(中央政府)と中国人民銀行(中央銀行)に一冊の報告書が提出された。通貨・人民元切り上げが経済に及ぼす影響を詳細に分析していた。執筆者は、政府直属・社会科学院経済研究所の張曙光研究員(66)。著名なエコノミストだ。
報告書は切り上げ幅を5%から20%まで5%刻みで4段階に分け、輸出や直接投資などが受ける打撃を示していた。最小の5%でも失業者は最大で300万人以上。20%だと、1千万人以上が失業すると予測していた。
数百万人もの失業者増加。こんな政治リスクに耐えられる指導者がいるわけがない」。中国が7月21日に電撃的に「2.1%切り上げ」を決定して2ヶ月。北京で会った張氏はそう前置きして言った。
「切り上げは単純な経済問題ではない。2.1%は、国内政治と国際政治の必要性から決まったのだ」
「社会主義市場経済」の名の下、外部世界の影響力を遮断して通貨を支配する政権は、人民元レートを事実上、米ドルに固定。安い元で外国投資を呼び込み、輸出を促進する形での発展を目指し、成功した。
だが近年、中国の輸出攻勢にあえぐ米国などは元の切り上げ、自由化を求め始めた。改革・解放以来、権力が市場の根幹を左右してきた中国式システムへの異議申し立てでもあった。
外国投資・貿易は経済の生命線だ。政権は国際社会、とりわけ米国とは決定的に対立したくない。「時期」と「幅」を焦点に切り上げの検討が続いた。
(中略)
市場は「幅」についても3~5%と予測していただけに、2.1%も意表を突いた。北京の
複数の金融筋は、「幅」に強い影響を与えたのは呉儀副首相(66)だった、と口をそろえた。
呉氏は対外貿易経済協力相(現商務相)時代、強い交渉態度から「中国の鉄の女」と称された大幹部だ。訪日した5月、小泉首相との会談をキャンセルして日本でも名を知られた。
呉氏は「3%以上なら国内経済に決定的な悪影響が出る」と主張した。輸出が大打撃を受ける繊維業界の声を反映していたという。
中国都市部の失業率は6月末現在、4.2%。国有企業の一時帰休者などを加えた実質失業率は10%以上とされる。政権内のだれも、張研究員が報告書で示した悪夢のような予測を現実に目にしたくない
(後略)

元切り上げ 「2.1%」政治的思惑の産物
(2005年9月23日 読売新聞)

米国は2.1%の切り上げにまったく満足していない。日米を含む経済協力開発機構(OECD)も更なる変動幅の拡大を求めている。今後とも、人民元の切り上げ圧力が強まるのは間違いない。
おそらく、近い将来、更なる人民元の切り上げと変動相場制への移行が避けられなくなるだろう。10%~20%の人民元高になる。中国の現状がそれを物語っている。

中国の外貨準備高は、今年6月末に7,000億ドルを突破した。これは我が国(8,328億ドル)についで世界第2位である。また、1~6月期の貿易黒字は396億ドルで、既に昨年全体を超える勢いである(2004年は320億ドル)。
もはや、中国当局は人民元のレートを維持するためにドルを買い支えることができる
状況にはない。中国のGDPは我が国の3分の1に過ぎない。

中国の今の状況は、ちょうど20年前の「プラザ合意」のときの我が国に似ている。輸出主導型の経済成長を続けてきた我が国は、米国の巨額な双子の赤字(経常赤字、
財政赤字)を解消するために円の切り上げを迫られた。今また、米国は巨額な双子の赤字を抱えている。

日本が「プラザ合意」後の急激な円高に伴う「円高不況」を乗り切ることができたのには四つの理由がある。
①企業の大胆なリストラ
②コストの安い海外への生産拠点の移行
③輸入依存度の高い原材料の購入コストの低下
④輸出主導型から内需主導型への転換
以上の四つが日本経済を立て直した。

今の中国に以上の対策が可能であろうか?

中国の強みは、内陸部に、まだまだ低賃金の余剰力を抱えていることである。
生産拠点を内陸部に移すことでコストアップを吸収できる。
が、沿岸部でも電力不足が慢性化する中で、インフラがまったく整備されていない内陸部への生産拠点の移行は、現時点では考えられない。
膨大なコストがかさむ。
何より、実質失業率は10%以上とされる中でリストラができるのか?赤字を垂れ流す
国営企業をどうする?

4大国有銀行の巨額の不良債権の解消は、外資との提携で乗り切ろうとしている。
が、成否はまだ分からない。
もう一つのネックである資源の逼迫も、海外でのなりふり構わぬ資源確保で何とか対応しようとしているが、様々な不安定要因を抱えている。

数百万人もの失業者増加。こんな政治リスクに耐えられる指導者がいるわけがない」状況下で、このような困難を乗り切れるのか???
もはや、切羽詰っている、これが中国の現状であろう。
悪夢のような予測を現実に目にすることになるのではないか
破綻しないことを祈る。

関連記事:中国に奇跡は起こるのか?

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中国崩壊シリーズ」カテゴリの記事

コメント

>4大国有銀行の巨額の不良債権の解消は、外資との提携で乗り切ろうとしている。

外資が逃げ始めたら、一気に・・・。怖いですね。
日経新聞は盛んに中国進出を勧めてきたわけだが、中国とのつながりは深そう。

前に紹介したこの人↓もそうですね。
http://www.nikkei.co.jp/neteye5/ota/20050915nb89f000_15.html
いわゆる「中国の友人」↓は政治家・朝日新聞だけでなく日経にもたくさん?http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h10_1/jog042.html
チャイナスクールだけではないってことですね。
http://www.tokyo-np.co.jp/shinyou/2002051701.html

投稿: 岩手の田舎人 | 2005/09/27 00:33

おはよう御座います。
元の切上げ→製品価格上昇→安価な中国製の魅力半減→他国企業との競争→販売数ダウン→中国国内の企業のリストラ・外資企業はもっと人件費の安い国へ移動の加速→失業率大増→国民不満は政府へ→倒共産党運動の激化。の論理で捉えています。
昨日の原油高も価格上昇の一因になりますし、張子の虎の首が落ちるのも時間の問題ですね。特に国際化した現在で、中国崩壊は、世界に及ぼす影響は計り知れない。激しく同意いたします。しかし、難局を乗り切り、ソフトランディングできるとも思えない。怖いです。

投稿: NZ life | 2005/09/27 08:05

こんにちは。コメント有り難うございます。中国には繁栄論と崩壊論がありますがやはり崩壊論の方が高そうですね。2,3年前では考えられなかったチャイナリスクが語られるようになり個人として大変喜んでいます。最近は中国→インドやベトナムの他のアジア諸国に製造業を中心とした会社が流れていると聞きますがどう言った感じなのでしょうか?無謀な軍国主義に直走る暇があれば教育や医療に社会保障などに注げば安定と言った道も少しは見えてくるのでしょうが、共産主義・愛国主義による一党独裁政権のこの国の崩壊を願わない日はありません。

投稿: サカエイ | 2005/09/27 12:47

こんにちは
中国は今年の年末には日本の外貨準備高を超えるそうです。
又、中国は現在、莫大な特許使用料を海外の企業に支払っているので、是正するために企業買収に力を注いでいくでしょう。同時に研究開発費にも軍事費と同じように力を入れています。
日本としては、一人当たりのGDPだけは抜かれないように、科学力を高めるように努力をしたいものです。
しかし、もし中国共産党が崩壊した場合、どんなシナリオが待っているのでしょうか?
進出している日本の中小企業が政治の混乱の中、商品を輸出できずに何ヶ月耐えられるのでしょうか?
とても不安です。

投稿: nasadon | 2005/09/27 14:31

岩手の田舎人さん、いつも貴重な紹介記事ありがとうございます。
日経は、ある意味「罪作り」ですね。
バブルのときの海江田万里を思い出します。
あとは知らん顔(笑)


NZ lifeさん、まいど~です。
>張子の虎の首が落ちるのも時間の問題ですね。

ウマイ表現です(爆笑)
20%も切り上がったら、即破綻ですね。
実際はドルと40%の開きがあると言われています。


サカエイさん、どうもです。
>最近は中国→インドやベトナムの他のアジア諸国に製造業を中心とした会社が流れていると聞きますがどう言った感じなのでしょうか?

そういう動きは確実にあります。
が、距離的には中国の方が近いし、インドやヴェトナムはインフラがイマイチです。
しかし、チャイナリスクを考えれば、すべてとは言いませんが、何割かはシフトすると思います。


nasadonさん、こんにちわ。
>もし中国共産党が崩壊した場合、どんなシナリオが待っているのでしょうか?

崩壊後の姿は「中国は崩壊後どうなる?」
http://banmakoto.air-nifty.com/blues/2005/08/post_2356.html
で書きましたが、そこに至る過程での混乱は想像が付きません。
おそらく何十~何百万もの難民が東シナ海を渡って押し寄せて来るような気がします。

投稿: 坂 眞 | 2005/09/27 16:55

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