普通の国になる曲がり角part-2
我が国の外交は本当に変わったと思わせる出来事がまた一つあった。町村信孝外相が7月に国連本部での記者会見で、「常任理事国入りが実現しない場合は分担金削減を求める可能性を示唆」していたが、昨日、国連大使が実際に分担率を引き下げるよう要求した。
【ニューヨーク=白川義和】小沢俊朗・国連3席大使は17日、国連総会第5委員会
(行政・予算)で演説し、国連分担金の算定方式について、「安全保障理事会の5常任
理事国の4か国を足しても、その地位を拒否された一加盟国より財政負担が少ない。
こうした現状を続けることが許されるのか」と述べ、来年行われる分担金比率の見直し交渉で抜本的改正を求める考えを示した。
国連の場で、日本が常任理事国入りと分担金問題を明確に結びつけて発言したのは初めて。
国連予算の分担率は原則、各国の国民総生産(GNP)をもとに3年ごとに決定される。2004―06年の日本の分担率は19.468%(年間3億4640万ドル)で、米国の22%に
次いで多い。これに対し、米国以外の4常任理事国の合計は、15.31%にすぎない。
小沢大使は、国連が日本の貢献を正当に評価せず、分担金の算定方式が公正ではないとの「失望感や不満」が日本国内で増えていると主張。「特別な地位を持つ加盟国が、それにふさわしい特別の責任を負うことを反映した制度」を求めていくとし、常任理事国が相応の負担をするべきとの考えを示した。
日本の常任理事国入りは、日独など4か国グループ(G4)とアフリカ連合(AU)の決議案一本化の挫折で、実現の見通しが立っていない。
4常任理合計より高負担、許されるか…日本が改正要求
(2005年10月18日 読売新聞)
町村外相の記者会見での発言は当Blogでも取り上げた。そして次のように書いた。
↓
町村外相の「もし日本が常任理事国入りに失敗すれば、(分担金の拠出額を削減すべきだという)声が急速に広まることは容易に想像できる」という発言は、時宜を得たものである。私も常々そう考えていた。
現在の日本の分担率は、EUの3大国(独、英、仏)の合計(20.8%)とあまり変わらない。アメリカを除く現常任理事国4ヶ国(英、仏、中、露)の合計(15.3%)をはるかに上回っている。
国連分担金ばかりではない。PKO予算においても約20%を分担している。ここにおいても日本の分担率は、米国を除く常任理事国4カ国の分担率の合計(18.4%)よりも大きいのである。
(中略)
第2位の分担金を課され、それを受け入れざるを得ないということは、日本の存在が、
それだけ国際政治と国際経済において大きくなっているということである。それに加えて、第2次大戦後日本は、一度も武力を行使したことがない(現常任理事国は、すべての国が戦後、侵略行為を行っている)。
(中略)
にもかかわらず日本は、PKO計画を決定する安全保障理事会に議席を有していない。その費用の5分の1もの巨額な資金負担を強いられながら、その使途に関与できない。これでは、国民(納税者)に対してAccountability(説明責任)を果たしていないことになる。
やはり、カネも出すが口も出すのが国民に対しても、世界に対しても責任ある国家としての態度なのではないか。
普通の国になる曲がり角
※我が国は、2005~06年は非常任理事国
正直に言うと、この町村発言のときは、単なるブラフではないかという疑念もあった。いくら偉そうなことを言っても、最後は腰砕けになる。それが日本という国だ・・・
ところが、本当に国連の行政・予算に関わる委員会で、大使が分担金比率の引き下げを要求した。ある意味、「うれしい誤算」である。
米国を除く「特別な地位を持つ加盟国」の分担金合計が、「一加盟国に過ぎない我が国」より少ないのは明らかに異常である。我が国が、その異常な状態を是正し、「特別な地位にふさわしい特別な責任を負う」制度を求めていくのは、当たり前のことだ。
が、その当たり前のことを主張できないのが、これまでの我が国だった。残念ながら、「顔が見えない国」とか「Show the flag」とか言われて、最近までバカにされていたのが現実だった。
そういう意味では、やっと「普通の国になる曲がり角」を曲がり始めたと評価してもいいと思う。
ところで、あの態度のデカイ中国は、たったの2.1%しか負担していない。そのくせ原爆やSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を保有し、空母も建造している。有人宇宙船を飛ばして有頂天になっている。
まったくもって「ふざけるな!」と言いたくなる。
私としては、手始めに分担金半減要求を突きつけてほしいと思う。最初から小さく出ると、なめられる危険性があるからだ。今でも歳入不足に悩む国連に、日本の存在が
いかに大きいかということを思い知らせるためにも、それくらいは打ち出してもらいたい。
※昨日のエントリーにアクセスが殺到(笑)して、アクセスカウンターが壊れてしまった。けっこうキャパの大きいカウンターだったが、1時間に1,000以上のアクセスがあると、
さすがに対応し切れなかったようだ(笑)
これも皆様のおかげです。感謝、感謝・・・
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コメント
いや黙って半分不払いにするのもありかも。
なんたって満額払ってる国の方が少ないはず。
馬鹿正直に払ってきた日本政府も悪い。
少ない上に不払いを続けている隣の大国が
日本のこの要求を「恫喝」とのたまっている。
腹がたつことこの上ない。
しかし、その前にですね、日本政府はこの件で
国民に対してちゃんと説明をしたのでしょうか?
常任理事国になることのメリット・デメリットを。
発言権だけでなく兵力の負担も多くなるはずですよね。
日本ではあまり報道されないけど、PKOに派遣した
兵士が現地の武装勢力にやられたりすることって
けっこうありますよね。
そういうことをちゃんと国民に説明するべきでは?
投稿: hana | 2005/10/18 16:19
日本政府が高額を払ってきましたね。
まったくこれだから、日本は経済大国ではなく
献金奴隷大国と馬鹿にされるてしまうのかもしれません。
もっと日本が世界に生きることをやれば良いのです。
だいたい国連のアナンの息子はなんですか?
国連職員特権でテーブルの下で金を取ったり、
ベンツを購入し国連職員特権でそれを国へ輸送したり・・・。
昔奴隷にされたアフリカ人は、洗練されて、
金の奴隷と悪口を言われています。
それに国連職員の世襲制!
なんとかしてほしい!
投稿: madoka | 2005/10/18 16:47
坂眞さん、
ちょっと気になったのですが、「昨日のエントリーにアクセスが殺到(笑)して、アクセスカウンターが壊れてしまった。1時間に1,000以上のアクセスがあった。」とのことですが、中国から送られるサイバーテロの一種でDDoSというのがあり、プロバイダーの処理能力を超える接続件数を不正プログラムで一度に送りだし、そのプロバイダーを潰します。
そうでないのならいいのですが、チェックしてみてください。坂眞さん、とうとう中国進出しましたかね(笑)。
投稿: 冒険ダン吉 | 2005/10/18 17:39
>手始めに分担金半減要求を突きつけてほしいと思う。最初から小さく出ると、なめられる危険性があるからだ。
半減というのは水準としていい感じではないですかね。中国並に下げられないのはしょうがないとしても、半減なら日本に続く3位のドイツ並といったところですね。それでも、2位キープとなるでしょうね。
ちなみに、1/3にすると今の4、5番目の英仏並です。
国連分担金の各国詳細は外務省のHPでみられます。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jp_un/yosan.html
ドイツも日本につぐ負担金です。横並び意識というわけではありませんが、ドイツの方針にも注目しています。初の女性首相メルケルさんはどういう反応を示すか。
投稿: 岩手の田舎人 | 2005/10/18 18:54
こんばんは。
マッチーの話は、私を元気にさせます。メガネが日本人らしいが、福田さんと比べて、目に輝き(強さ)がある。ハッキリした物言いと語学力、最高の外務大臣と常々感じております。
国連を含めた国際外交では、強行と妥協の繰り返しでしょうし、愚かな隣国にも決して屈しない覚悟も必要でしょう。御辞儀外交から脱却した日本を見ると、私も日本人として胸を張りたくなります。「凛として美しい日本」を守って下さい、マッチー。
投稿: NZ life | 2005/10/18 19:13
こんばんは、坂眞さん。
とりあえず、町村さんGJ!ですね。でも、国連改革は進むのでしょうか?結局、国家ごとのエゴで、多少は変化はあるかもしれませんが、あまり期待していません。
それよりも、国連に変わる国家連合ってできないでしょうか?その国家間では、国際法を第一とし、違反する国家には強大な警察力(=軍事力)を行使できるような機構を造る訳ですが。真の意味で戦争を犯罪とみなし、廃絶させるためには、そこまでする必要があるでしょうけど(核の違反国家には、最悪、核の使用も認める位の、強い警察力を有し、国家間の紛争も、法により解決する)。
まぁ、国連でこれだけもめるくらいだから、かなり、希望薄でしょうね。
投稿: Mars | 2005/10/18 19:41
いつも、お世話になってます。
小泉首相の靖国参拝は継続する事に意義があると思いました。
ガス田の問題でも、日本は態度で中国に意思表示する必要があるでしょう。
中国や韓国との二国間協議は意味がありません。
中国や韓国に対しては、この記事のように国連の場とかで、主張していく
のが大事だと思います。
日本もサミットなどの場でも中国に対して意見すべきだと思います。
投稿: morokuzu | 2005/10/18 21:54
こんばんは。
先日、町村さんが分担金の事で、発言されたときに、私は外務省にメールを送りました。
「町村外務大臣、GJ。常任理事国4カ国よりも日本が分担金が多いのはおかしい」と。
外務省からは「メールありがとうございました。」とレスがきました。
で、今回、やっとですね。「普通の国の曲がり角」を曲がり始めた事は嬉しいです♪
投稿: dekotyan | 2005/10/19 00:59
町村外相の基本的考え方、小沢大使の具体的発言を支持します。来年度からは、10%のみ拠出して、残りは保留にすれば良い。米国の真似では無く、国民の指示が得られない事を理由にすべきです。
私は、敵国条項が残されている中で、某常任理事国の10倍も負担している日本の国連政策に予々疑問を持っています。一体、どのような経緯でこうした状況に落ち入っているのでしょうか。
お分かりの方がおられたら、御教示願いたい。
投稿: 雪中花 | 2005/10/19 01:49
町村外相の基本的考え方、小沢大使の具体的発言を支持します。来年度からは、10%のみ拠出して、残りは保留にすれば良い。米国の真似では無く、国民の指示が得られない事を理由にすべきです。
私は、敵国条項が残されている中で、某常任理事国の10倍も負担している日本の国連政策に予々疑問を持っています。一体、どのような経緯でこうした状況に落ち入っているのでしょうか。
お分かりの方がおられたら、御教示願いたい。
投稿: 雪中花 | 2005/10/19 01:51
永住外国人参政権の危険性について…。
http://park6.wakwak.com/~webyama/CitizenWar/kankoku/Kage06.htm
投稿: top | 2005/10/19 02:06
町村外相の基本的考え方、小沢大使の具体的発言を積極的に支持します。来年度からは、10%のみ拠出して、残りは保留にすれば良い。米国もやってると言う真似では無く、国民の支持が得られない本音を理由にすべきです。
私は、敵国条項が残されている中で、勝手な振る舞いをする某常任理事国の10倍も負担している日本の国連政策に予々疑問を持っています。一体、どのような経緯でこうした状況に落ち入っているのでしょうか。
お分かりの方がおられたら、御教示願いたい。
投稿: 雪中花 | 2005/10/19 02:11
皆さん、おはようございます。
コメントありがとうございます。
やはり皆さんも、日本の負担が多すぎるとお思いのようですね。
そして、今回の日本政府の対応は当然であると。
分担比率は外務省のHPによると、
>分担率は、合意された算定方式に従って、各国の経済力(各国GNPが世界全体のGNP総計の中で占める割合)を基礎とし、上限、下限、低所得国割引等の調整を施して算定されます。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jp_un/kaikaku.html
米国は上限ということでしょう。
GNPだけなら我が国の2倍以上になるはず。
中国もGNPだけなら5%以上あってもおかしくない。
おそらく政治的思惑(調整)で我が国が割りを喰っている構図だと思います。
なお、私は中国に進出しておりません(爆笑)
投稿: 坂 眞 | 2005/10/19 10:38
日本の分担率が変わらないのであれば、いっそのこと、10%位は支払って、残りは滞納するというのはどうでしょうか?
国連の最大の分担の合衆国をはじめ、少ない負担の常任理事国でさえ、滞納しているありさま(もちろん、中国様も滞納)。日本国内の財政は火の車なので、律儀に全額払う必要もないのでは?(もちろん、滞納している国々に、批判する権利はありませんよね?)
投稿: Mars | 2005/10/19 10:57
閑話ノートです。
お邪魔しました。
まったくおっしゃるとおりです。
国連も財政問題、国内が手一杯で挙句の果てに、国連まで背負わされたら困ります。
ここは、ご指摘のとおり徹底してインパクトを与えるべきだと思います。
ご参考までに拙ブログTBさせてください。
ご笑読頂ければ幸いです。
投稿: 閑話ノート | 2005/10/20 19:51