« 中国:貧困人口8千6百万人 | トップページ | 再びA級戦犯について »

2005/10/20

外資との提携に走る国有銀行

中国経済がグローバルな経済システムに組み込まれていく中で、最大のネックになるのが4大国有銀行の巨額の不良債権であることは過去のエントリーでも何度か指摘した。
中国当局が、人民元の切り上げに極めて慎重に対処しているのも、国内の金融システムに大きな不安を抱えていることが大きな原因である。
中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁も、「銀行改革が切り上げの前提になる」と強調している。

この金融システムの不安に対して中国当局は、4大国有銀行に大胆な公的資金を注入し、海外での上場を果たすことで対応しようとしている。
ところが中国の企業は、4大国有銀行も含めて財務内容の不透明度が高く、海外での上場は極めて厳しい状況にある。
以下は、産経新聞からの引用である。


激しさを増す企業の国際間競争をにらんで、活発な資金調達を続ける中国企業が、米国証券市場を「敬遠」し始めている。中国企業は実質的に中国政府の保有する「国営」が多いほか、一般に財務内容の開示を嫌う傾向が強く、厳しい米国の上場基準を満たすことが難しいからだ。

香港証券取引所における新規株式公開(IPO)などを通じた2005年上半期(1-6月)の企業の資金調達額は、前年同期比21%増の約83億ドル(約9千4百60億円)。このうち、中国企業は約73億ドルを占める。上海電気集団、国有石炭会社・神華集団の関連会社である中国神華能源などの大型上場が相次いだ結果だ。

これに対し、ニューヨーク証券市場でのIPOは02年以来、中国生命やチャイナネット・ドット・コムなど数えるほどしかない。同市場における中国企業の今年8月までのIPOによる資金調達額は13億7千万ドル(約1千5百60億円)。04年の72億6千万ドルよりもさらに縮小している。

背景にあるのが、米国の企業改革法(サーベンス・オックスレー法)の存在だ。01年のエンロンやワールドコムの不正会計事件を受けて、経営者による内部統制の定期的な評価や外部の公認会計士による監査を義務付けている。しかし、大半の中国企業は
同法の定める情報開示を満たすことが困難なうえに、米国で株主による訴訟が起こった場合、「自ら負うリスクの大きさが想定できない」(金融コンサルタント会社)わけだ。

米議会の諮問機関で、中国との商取引を調査している米中経済安全保障調査委員会(USCC)のリチャード・ダマト委員長は、「中国企業は、より上場基準の低い香港株式市場などを活用して米国をはじめ世界中の投資家から資金を集めようとしている」と
語る。

中国企業の資金調達のあり方は、「経営の不透明性」と表裏一体の関係ともいえそうだ。(ワシントン 気仙英郎)

中国企業が米上場敬遠 厳しい情報開示満たせず
(2005年10月20日 産経新聞)

中国の国有企業は、財務体質が悪い(実質赤字)ものが多く、香港株式市場でしか
上場できないのが実情である。しかし、世界最大のニューヨーク証券市場を始めとする欧米の証券市場で上場できなければ、いずれ資金調達に限界をきたす。
そこで、中国企業、特にその中核をなす国有銀行が目指しているのが外資との提携である。外資と提携することで資金を調達するとともに、リスク管理や資産・負債管理に
関するノウハウを吸収する。そして銀行改革を加速させ、財務体質の改善と財務内容の透明度を高める。

まず、一番手の中国銀行は、スイスの銀行最大手、UBSグループと戦略的投資協議書に調印し、出資分を含め5億ドル(約5百65億円)の投資を受ける。
中国銀行は8月、英国の大手銀行、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)からの31億ドル(約3千5百億円)の出資要請を受け入れ、株式の10%を譲渡することで合意したばかりだ。
6月には米国の大手銀行、バンク・オブ・アメリカが中国建設銀行への資本参加を発表。中国工商銀行に関しても、米ゴールドマンサックスを中心に、ドイツの保険大手アリアンツと米アメリカン・エクスプレスが約30億ドル(約3千3百90億円)を出資し、株式の10%を取得する計画が明らかにされている。

外資系金融機関の狙いは、拡大を続ける中国経済において、早い段階から進出する
ことによって確固たる地歩を築きたいということであろう。
しかし、中国の4大国有銀行が抱える不良債権は、融資総額の19%に達するとされている。しかも、これは表向きの数字で、米国の権威ある評価機関スタンダード・アンド・プアーズ(Standard & Poor’s)は、中国の銀行の不良債権率は45%に達していると
見ている。
にもかかわらず、なぜ外資系金融機関は国有銀行に投資するのか?それは中国という国の信用である。

中国の外貨準備高は7690億ドル(9月末)で、年内には我が国を抜き世界一になると
予想される(香港を除く)。貿易黒字も年間1000億ドルに達するペースで拡大している。この信用が中国を支えているのだ。
しかし、一方においてリスクも大きい。財政赤字は、既に国際安全ラインの対名目GDP比3%に達している。4大国有銀行の不良債権、国有企業の債務残高、社会保障関連の支出などを合わせると、名目GDP(1兆6,493億ドル)を超える規模の債務があると推測されている。
さらに、人民元再切り上げに対する外圧は強まるばかりであり、大幅切り上げ後の先行きは、まったく不透明である。

また、中国の国有企業にはコーポレート・ガヴァナンスやコンプライアンスといった、
(上場)企業に求められる基本が欠如している。これは銀行も例外ではない。
今年1月には、中国銀行の黒竜江省の支店長が顧客口座から8億元(約100億円)を
奪って海外逃亡した。4月にも、同行北京支店で行員も加担した住宅ローン詐欺が発覚し、6億5000万元(約85億円)に上る損失が発生している。
その結果、中国銀行は、悲願の海外上場を断念せざるを得なくなった。(「海外上場は来年以降」、中国銀行報道官)。

4大国有銀行が抱える不良債権の大半は、国有企業に対するものである。この国有企業の赤字体質は依然として解消されておらず、銀行が抱える不良債権は今後ますます増大する危険性がある。
外資系金融機関のノウハウを吸収することによって、国有企業にリストラを迫り、不良債権の処理を加速する選択肢もある。
しかし、一時帰休者(レイオフ)は国有企業だけで1000万人を超え、都市部の実質失業率は10%近い。しかも、国有企業は、地域経済の中核を担う存在である。
不良債権処理→国有企業のリストラ加速という道は、大量の血を流す結果になり、
社会不安を誘発しかねない。

つまり、中国の国有銀行に投資するということは、極めて大きなリスクと背中合わせなのだ。
日本のメガバンクの中国進出が遅れていることを危惧する論調がメディアにある。しかしこれは、メディアが指摘するような「バブルの後始末に追われた」からではなく「バブルの経験からリスクに対して慎重になった」からだと私は思う。

UBSの主席アジアエコノミスト、ジョナサン・アンダーソン氏は「2007年までに、外資系金融機関が中国の銀行システム全体の6分の1の機能をコントロールしていることが
予想される」と指摘している。
しかし、不透明な財務内容を解明することなく投資を実行した結果が吉と出る保証はない。また、コーポレート・ガヴァナンスやコンプライアンスの欠如という、中国の国有銀行の致命的欠陥が一朝一夕に是正されるとも思えない。
本気でやるとなれば、かなりの荒療治が必要になる。そこまで当局や銀行が決断できるかである。

外資系金融機関は、国有銀行を健全化する過程で大量の失業者が発生し、社会不安が誘発されても、「われ関せず」の立場にいることができる。
健全化された銀行が海外で上場されれば、膨大な利益が見込める。買い叩いて手に入れた不良債権を高く転売する方法もある。
確かにリスクは高いがメリットも大きい。そういうところだろうが、私は邦銀が彼らと同じ土俵に乗るようなことは避けた方が良いと思う。

バブルでどれだけ痛い目にあったか。身をもって体験したはずだ。
「バスに乗り遅れるな」的発想で中国に進出し、再び痛い目にあう。そういう愚だけは
避けなければならない。
「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」で良いではないか。ビジネスチャンスは中国以外にもたくさんある。

参考資料1:スイスUBS 中銀に565億円投資へ 銀行への外資導入活発化
(2005年9月29日 フジサンケイ ビジネスアイ)
参考資料2:中国、再就業を全面的に加速
参考資料3:中国の雇用情勢

人気blogランキングへ
↑中共に怒りを感じる方は
クリックをお願いします。

|

« 中国:貧困人口8千6百万人 | トップページ | 再びA級戦犯について »

中国崩壊シリーズ」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
最近、にんじん という人に批判されている諸葛川です。

また、TBが重複してしまいました。すみません。
exciteとniftyの相性が悪いのでしょうか。

ところで、こんな記事を見ました。

中国製自動車がペシャンコに(江陵汽車・”LandWind”)
http://isepo.exblog.jp/2921876/

驚異的な中国最新テクノロジー w
恐るべし。

投稿: morokuzu | 2005/10/21 00:37

ランキングがすごい勢いで伸びていますねぇ。良かった良かった。
コメントの少なさが特徴ってことですけども、理由はいくつか指摘できますよ。
まず、完成度が高いというか記事が完結していますから、突っ込みどころが無く(総じて硬いというか理屈っぽいというか)、やっぱり完成度でしょうね。読み応えある記述量・内容ですしね。
感情・感想的な記述が少ないので、お気軽レス的なコメントは入り込む余地が無いともいえるかもしれません。それはそれでいいのではないでしょうかね。
ごくたまにある感情を吐き出したような文章の場合、元過激派の面目躍如という感じの激しさレベルで(=怖いお兄さん風、なるべくならかかわらないほうがいい風味)ですし・・・。(笑
この頃気軽に書いてる私も、応援になればと思って書いてきましたが、最初は下手なこと書いたら、噛み付かれるんじゃないかと警戒しましたし・・・。(大笑い
まあ、見られる=支持率高いということなんですから、とにかくおめでとうございます。
変に荒れないのもいいじゃないですか。(笑

ところで、この前、「闇にまぎれる北の違法行為」のテーマの時、偽札作りに関連して、電脳保管録さん( http://nyt.trycomp.com:8080/modules/news/ )の「日本の印刷職人8人"失踪"の謎」の記事をコメント欄で紹介しました。
その記事は、2004-10-15に投稿されたもので、ちょうど1年で (2456 ヒット)でしたが、5日後の現在見たら(6507 ヒット)。「拉致事件について最も読まれたニュース」になっていました。
ここで紹介した影響が多かったと思うんですが数日で4000人ちかくの目に触れたのだとしたら、これはすごいことだと思いましたです。ちょっとびびりました。

投稿: 岩手の田舎人 | 2005/10/21 01:00

電脳補完録さんでしたね。失礼しました。

投稿: 岩手の田舎人 | 2005/10/21 01:12

UBSが乗り込みましたか・・・www
その昔、長銀とUBSが提携した後、何が起こったか、
ご記憶の方も多いと存じます。 二の舞?いやまさかね。
むか~しむかしのUBSのモットーが、「限られたお客様の為に」
だったナア。 (内部の人間か、という詮索は無視)

投稿: 茗荷 | 2005/10/21 01:24

おはよう御座います。
岩手の田舎人さんが言われるとおり、記事の完成度が無茶苦茶高いですね。中国の崩壊へのシナリオは、多くの人が関心を持つところですから、分厚い内容・情報は大歓迎です。
日本の金融(銀行)危機の際、各銀行の不良債権が多く貸し渋りしたのは記憶に新しいところです。外資系を嫌う人も多いかと思いますが、この時、私の会社を助けた(金貸した)のは外資だけでした。東京都の融資とあわせて、何とか生き残る事が出来た辛い記憶があります。臆病(石橋を叩いて迂回する)な国産銀行と斬新な外資バンクのイメージになってます。
中国金融も外資が唯一の生き残る道で最善の方向だと同感いたしますし、国産銀行が中国進出しないのも臆病なだけだと思います(行くべきではない)。

投稿: NZ life | 2005/10/21 05:16

郵政民営化の為、今までの様にゆる~い審査で郵貯を中国に投資する事は無くなるでしょうが、今までの投資は焦付く事は確実でしょうね。

投稿: 谷 | 2005/10/21 08:53

皆さん、こんにちわ。
コメントありがとうございます。

>記事が完結していますから、突っ込みどころが無く

このご指摘、今までもいただいたことがあります。
「結論」を、しかも断定的に出しているから、
お気軽レス的なコメントは入り込む余地がないのでしょう。

>変に荒れないのもいい

このご指摘も以前にありましたね。
今まで、削除の対象にした、意味不明の嫌がらせ的コメントは4回しかありません。

最近、皆さんから「応援している的コメント」を何度かいただき、非常にうれしく、また励みにもなります。

「怖いお兄さん風」の文章は極力控えているのですが、ときどき我慢ならないときがある(爆笑)
ただ、私はユーモアあふれる、部下の好感度No.1の中年オヤジです(笑)
過激派は30年近く前の話ですから、もう時効です(笑)
これからもメッセージを発信し続けますのでよろしくお願いします。

投稿: 坂 眞 | 2005/10/21 12:01

 いつもお世話になっております紫藤です。
昨日・niftyがシステム障害を起し、対応に苦慮いたしまして”いただいたコメントのお礼”が遅れましたことをお詫び申し上げます。
 さて、私も”3ヶ月振り”で「ベストテン入り・カムバック」を果しました。(あぁ、長かった!笑)
 これも偏に”坂”さまのお引き立ての賜物と感謝し・ご恩は決して忘れるものではありません。今後ともよろしくお願い致します。
 しかし、”坂”さまもスゴイですね!いつの間にか”政治のトップ”に躍り出たと思いましたら、たちまち2位以下を5000ポイント近く引き離してしまわれたのには驚きました!
 最新の記事を二つほど読ませていただきましても”経済にお強い”のが分ります。しかも独自の視点をグイグイ掘り下げて行くのが読者に受けている要因だと思います。
 マスコミは、あたり障りの無い記事しか書きませんものね。
 私のほうは”マンガと科学を武器”にそれなりの立場さえ確保できればいいと思っております。
 あまり上位に上がると「管理が大変」のようですから(笑)。

投稿: 紫藤ムサシ | 2005/10/21 12:24

いつも為になる記事楽しみにしてます

特に今回のシリーズ(?)の中共政権の崩壊についての、金融面からの考察は非常に興味深いです

国有銀行の不良債権と国有企業の関係、海外市場での上場と外資との関係の分析等々
坂さんの面目躍如といった観があります

このシリーズは是非定期的に続けて欲しいですね

>ただ、私はユーモアあふれる、部下の好感度No.1の中年オヤジです(笑)
しかし自分で高感度No.1という人が実際そうだったためしが…w

投稿: おい | 2005/10/21 13:08

紫藤ムサシさん、こんばんわ。
「ベストテン入り・カムバック」我がことのようにうれしく思います。
”マンガと科学を武器”私にはマネできません、と言うか勝てません(笑)


おいさん、どうもです。
>しかし自分で好感度No.1という人が実際そうだったためしが…w

これは本当です(爆笑)
でも、怒らせると怖い、とも思われているようで(苦笑)

投稿: 坂 眞 | 2005/10/21 21:23

中国四大銀行、支店長ら42人海外に集団逃亡

 【大紀元日本10月13日】中国共産党政権成立第56回の記念日を目前に、中国四大国商業銀行の支店長等42人が、海外に集団逃亡するという重大事件が発覚した。当事件は、最低740億人民元と22.3億米ドルの不正流用に関連しており、中国共産党執政以来最大の金融スキャンダルとなる。香港政情専門誌「争鳴」10月号記者田穂が報道した。

 10月1日連休の前に、中国工商銀行、中国銀行、中国建設銀行、中国農業銀行など四大国有銀行の支店長および副支店長42人は、香港金融機関の視察・研修を理由に、それぞれグループで香港に渡り、その後休暇を口実に香港から海外に出国し、そのまま逃亡した。逃亡先はオーストラリアや、ニュージーランド、カナダ、アメリカ、西ヨーロッパなどと見られ、逃亡者の家族の多くはすでに現地で待っていたという。
(省略)
http://www.epochtimes.jp/jp/2005/10/html/d40409.html

10月初め、国有銀行のお偉いさんはお金をたくさんもって海外へ逃亡したようです。中国現在崩壊中のようです。

投稿: I LOVE JAPAN | 2005/11/18 07:47

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/91171/6486248

この記事へのトラックバック一覧です: 外資との提携に走る国有銀行:

» ねぶた掲示板の常連さん達の逆襲2  諸葛川が誹謗?揚げ足取り? [諸葛川]
社団法人青森観光コンベンション協会が運営する「青森ねぶた祭 Official Web Site」の「ねぶた掲示板」問題。 騒動のきっかけは韓国によるねぶたのパクリ&起源捏造問題でした。 ねぶた掲示板の韓国に対する注意を促す人や過激な書込みが問題になりましたが、 それが終わっても、常連さん達による傍若無人な振る舞いは継続しています。 それもまた、非常に残念な事です。 掲示板荒らし自体は、常連さんの一部の過激派によるものですが、当事者(常連 さん)はそれを他の人に責任転嫁し... [続きを読む]

受信: 2005/10/21 00:29

» 靖国以上に訪れるべき「千鳥ケ淵戦没者墓苑」 [20年安泰!日本は復活する。榊雲水雑記帖]
靖国神社参拝  拙僧も靖国へ行ってきました。 まずはお賽銭をポン パンパン。伯父が祀られています。 今の平和を発展を素直に感謝し、長い黙祷をいたしました。少し恥ずかしかったです。境内は平日なのにかなり混んでいましたから。  戦争の犠牲... [続きを読む]

受信: 2005/10/21 13:01

« 中国:貧困人口8千6百万人 | トップページ | 再びA級戦犯について »