益々中国から眼が離せない
中国からいよいよ眼が離せなくなってきた。外貨準備高では、ついに日本を追い抜き
世界一。貿易黒字も、通年予測で日本を凌駕する勢いだ。
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財務省は7日、国際通貨基金(IMF)がまとめた6月末時点の国・地域別比較で、中国の外貨準備高が香港を含めると8379億ドルとなり、日本を上回って世界最大となったことを明らかにした。中国の貿易黒字拡大などで外貨が流入していることが背景だ。日本の6月末は8340億ドル。5月末までは5年8カ月連続で第1位だった。
中国本土の6月末の外貨準備は7159億ドル、香港は1220億ドルだった。中国は人民元の相場水準を一定に保つため、中央銀行である中国人民銀行は、好調な輸出に伴って国内に流れているドル資金や人民元切り上げを見込んで流入している投機資金を、ドル買いの為替介入で吸収。それが外貨準備高となって積み上がっている。
中国は7月に人民元の2%切り上げを実施。対ドルで1日上下0.3%の変動も認めたが、実際の相場の変動幅はこれを大きく下回っている。市場では「現在も中国当局は為替介入を続けている」との見方が強く、7月以降も外貨準備が膨らんでいる可能性がある
中国と香港の外貨準備高、日本抜き世界最大に・6月末
(2005年10月6日 日本経済新聞)
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中国商務省は7日までに、今年の貿易黒字が昨年の約3倍の900億~1000億ドル(10兆2000億~11兆3000億円)に達し、過去最高を更新する見込みとの報告をまとめた。同日付の中国英字紙チャイナ・デーリーが報じた。
同紙によると、中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は最近、中国経済誌のインタビューで「貿易黒字縮小のため内需拡大を急ぐ必要がある」と指摘した。
報告では、今年の貿易総額を約1兆4100億ドルと予測。昨年1年間の貿易黒字は320億ドルだったのに対し、7月に人民元を2.1%切り上げたにもかかわらず、既に1~8月で昨年1年間の約2倍の602億ドルに達した。(共同)
中国:貿易黒字3倍の1千億ドル 英字紙報道
(2005年10月7日 毎日新聞)
外貨準備高は一国の国際的な信用力を示すバロメーターになっている。したがって
中国の信用力は、以前に比べれば飛躍的に高まっていることになる。また、貿易黒字が年間1000億ドルに達する見込みということは、中国の輸出競争力がいかに強力で
あるかを示している。
ちなみに、財務省が7月に発表した2005年上半期(1-6月)の我が国の貿易黒字は、
4兆5274億円(約400億ドル:前年同期比26.4%減)である。
(参照:7月21日 日本経済新聞)
我が国の貿易黒字は減少傾向にあるから、この面でも中国が上回るのは間違いない。つまり、中国は儲かっており、たっぷり貯金ができているというのが現状なのだ。
では、これで万々歳かというと、そうは行かないのだ。何しろ中国のGDPは1兆6493億ドル(2004年:世界銀行)で、我が国(4兆6234億ドル:同)の約3分の1しかない。それなのに外貨準備高も貿易黒字額も我が国を上回るのである。そこには大きな矛盾、
大きなひずみが隠されている。
外貨準備高の急増は、輸出がしにくくなる「元高ドル安」の進行を防ぐため、外国為替市場(上海)で中国が「元売りドル買い」の為替介入を繰り返した結果である。
その結果、市場に大量の人民元が放出される。このあふれる人民元が過剰流動性を生み出し、バブルに繋がっているのだ。
日経新聞の記事は、「現在も中国当局は為替介入を続けている」との見方が強く、7月以降も外貨準備が膨らんでいる可能性がある、と指摘している。が、バブルの拡大を
懸念する中国当局には、もはやこれ以上の介入を続ける余力はない。
貿易黒字が余り増えず、人民元も急速には切り上がらない、これが中国当局の理想だが、輸出牽引型の経済であり続ける限りそれはありえない。他方において、米国を始めとする海外からの人民元切り上げ圧力は強まるばかりである(米国議会は報復措置も検討中)。
結局中国は、早晩、人民元の大幅切り上げに追い込まれるであろう。しかし、人民元の大幅切り上げは輸出産業に大打撃を与え、20%の切り上げで1000万人の失業者が
発生すると予測されている。
今現在でも3億5000万人の不完全就労者を抱えているのに、さらに完全失業者が1000万人も追加されれば、中国の現体制が大きく揺らぐことは間違いない。
中国人民銀行(中央銀行)の総裁は「貿易黒字縮小のため内需拡大を急ぐ必要がある」と指摘しているが、これもそう簡単にはいかない。
内需が拡大すれば、輸入が増え景気も浮揚する。貿易黒字も減少し、失業者も増えない。こんないいことはない。が、政治が無為無策では内需など創出できない。
内需を拡大するには金融政策的には金融緩和、財政政策的には積極財政が必要になる。しかし、これまでのエントリーでも繰り返したように、中国経済は既にバブルの状態にあり、金融緩和ではなく金融引き締めが求められているのが現状である。
財政も同様である。財政赤字は、既に国際安全ラインの対名目GDP比3%に達している。4大国有銀行の不良債権、国有企業の債務残高、社会保障関連の支出などを合わせると、名目GDPを超える規模の債務があると推測されている。
このような状況の中で、財政出動などを行ったら一体どうなるのか?
つまり中国における内需拡大は、一層のバブル拡大と財政赤字の雪だるま式の増大というリスクと背中合わせなのである。
中国は、ちょうど20年前に起きた我が国の「プラザ合意」後の急激な円高と、その後のバブルについて熱心に研究しているという。
何度か書いたが、我が国が急激な円高に伴う「円高不況」を乗り切ることができたのには四つの理由がある。
①企業の大胆なリストラ
②コストの安い海外への生産拠点の移行
③輸入依存度の高い原材料の購入コストの低下
④輸出主導型から内需主導型への転換
以上の四つが日本経済を立て直した。
過去のエントリーでも言及したが、中国の強みは、内陸部に、まだまだ低賃金の余剰力を抱えていることである。生産拠点を内陸部に移すことで人民元の上昇分を
吸収できる。
が、沿岸部でもエネルギー不足が慢性化する中で、インフラがまったく整備されていない内陸部への生産拠点の移行は、現時点では考えられない。膨大なコストがかさむ。
何より、実質失業率は10%以上、不完全就労者が3億5000万人とされる中でリストラができるのか?赤字を垂れ流す国営企業をどうする?
前述したような金融・財政両面の制約の中で、輸出主導型から内需主導型への転換なんて果たしてできるのか?
中国経済の最先頭を走る広東省の張徳江・共産党省委員会書記(中国共産党政治局員)も、「現状は、まさに綱渡りの状態」と弱音を吐露している。
輸出が伸び、黒字が増え、外貨が貯まるほど危機が進化する。これが中国の逃れられない宿命なのだ。
なぜか?市場経済は自由主義が原則なのに、「社会主義市場経済」などという、本来相容れない水と油を混合した、いびつな政治・経済体制を続けてきたからだ。
この政治的、経済的矛盾を止揚する道は、現体制の崩壊しかない。
関連記事1:人民元切り上げがもたらす恐怖
関連記事2:中国は間違いなく崩壊する part3
関連記事3:中国は、いつ崩壊するのか?
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コメント
これだけ貿易で稼いでいるに、国内のインフラがなかなか整備されないのは何故だろう。経済成長があまりに急速であるというのはもちろんあるだろうが、この稼いだカネは、政治の上層部が私物化してしまっているのではないか。
投稿: 三等水兵 | 2005/10/08 18:12
こんばんわ
中国共産党は非常に難しい舵取りを余儀なくされていると思います。
外圧と内圧をうまくコントロールしなければなりません。失業率が上がりGDPが落ち込んだときが正念場だと思います。
与那国の町長が切望している。海自か海保の基地を与那国に作るべきです。那覇より台北のほうが近い島、台湾との航空識別ラインが町の上空にある島 この島を守らないで東シナ海は守れません。
投稿: nasadon | 2005/10/08 20:56
私、よくわかってないかもしれませんが、中国が熱心な東アジア共同体・域内共通通貨構想は、東アジア諸国(主に日本)への中国の過剰流動性の押し付けでもあるわけですね。黄砂に、公害に、汚染野菜に、歴史認識に、犯罪者に、官製反日デモに、国内反日媚中人士に、、、、、今度はバブル・インフレですか?
中国様、もう贈り物は要りませんよ。
それでもって最後に核ミサイルを、、、なんて洒落にもなりませんから。
投稿: ビールかけ | 2005/10/08 21:13
外貨は確かアメリカ国債に投資してあったはずです。(金利がつきますから)
その国債を担保にロシアから武器を輸入してたと聞きました。それと共産党幹部が外貨の私物化、つまり個人の外国口座に振り替えていたと聞いてます。
私の勝手な想像ですがあの共産党幹部がそんな莫大な外貨を黙って見逃すはずがありません。武器代金とネコババで名目は有っても実質無いじゃないでしょうか!
鄧小平次女(秘書)が日本で資金を受け取る時は金貨を米ドルで受け取ってスイスの口座に入れてました。息子はオーストラリアの製鉄所(赤字)を買い取っていました。
魚は頭から腐るといいますが共産党トップから、いや中国は有史以来はじめから腐っているようですが。
投稿: のぶ鈴♪ | 2005/10/09 00:05
おはよう!(^^)!坂さん、いつもコメント有難う御座います。
日本が円高を克服した四つの事は、中国にはどれも出来ない物ばかりですね。
もし私が中国のフーチンタオなら、この現状を打開する為に、朝鮮半島を飲み込む事(占領ではなく経済的領土)に全力を傾けるでしょう。理由は、韓国企業の完全買収による雇用の確保、北朝鮮への民間投資と生産ラインの移転による為替(元)リスクの軽減とより安い労働力の確保。精神的属国である朝鮮半島を手中に収めるのは容易な事だし、すでに侵攻は開始されてると思います。
投稿: NZ life | 2005/10/09 06:38
皆さん、こんにちわ。
コメントありがとうございます。
中国が今、内憂外患に苦しんでいること、よくご理解いただいていると思います。
まあ、自業自得ですけど。
それから党や幹部の腐敗に対する疑念も強いようで(笑)
確かに国家の利益の幹部による私物化はひどいですね。
それから海外(特に香港)の子会社を通じた経理操作による投機資金への流用→不動産投資→バブル。
まさに魚は頭から腐り始めているようです。
ただ、国が大きすぎ、人口が多すぎるというのも国家の均衡ある発展を妨げる大きな要因だと思います。
国土は我が国の20倍以上、人口は10倍。
原子力発電所や高速鉄道、高速道路等の整備も急いでいますが間に合いません。
それに大国意識が強いから、分不相応な軍備にも大金を費やしていますし、有人人工衛星も飛ばしている。
そんなカネがあったら、農村への近代化投資や公害防止、省エネ型設備のへの投資など、緊急に求められている案件はたくさんあるのに後回しにされている。
胡錦濤・温家宝体制は正念場を迎えているといってもよいでしょう。
投稿: 坂 眞 | 2005/10/09 14:17
いつも、お世話になってます。
TBが重複してしまいました。すみません。
以前の記事で、韓国によるねぶた祭の起源捏造問題に触れていただき
ありがとうございます。
この中国を分析した記事も、論文のようで新聞の記事を見るのが馬鹿
馬鹿しく感じられるほどです。
最近、他の人のブログで下記のサイトを知りました。
東トルキスタンの人々に平和と自由を
http://www.geocities.jp/saveeastturk/
チベットだけでない、中国の残虐な姿に衝撃を受けました。
板さんは、どう考えられますか?
投稿: morokuzu | 2005/10/09 14:59
こんにちは、坂眞さん
中共の幹部自身、中共がいつまでも支配するとは考えていないようですね。そして、そんな幹部は、経済にも手を出して(もちろん、党の力を利用して)、金を稼いでいますが、元だけでなく、円やドルなどの外貨も溜め込んでいる状況です。中共が倒れると、元が紙切れになる恐れも知っていますし、いつでも外国に逃亡できるような準備もしています。
中国の環境破壊は、かなり深刻のようです。
下記のサイトでは、不気味に7色に染まっている環境が分かると思います。その色たるや、まさしく人工的な毒々しい色ですね(決して、キレイとは思えませんね)。
ttp://blog.livedoor.jp/safe_food_of_asia/
こんにちは、morokuzuさん
ご紹介いただきましたサイト、参照いたしました。まさしく、中共の嘘(他国を侵略したことがない)、傲慢さ、残虐さを示しております。ただ、この中にあります抗議だけで解決できるとは思えませんが。注目しておきます。
そういえば、東トルキスタンといえばこういう記事もあります。
・東トルキスタン解放組織天山獅子隊の宣戦布告
ttp://www.uygur.org/japan/et/2005/1005.htm
この解放組織は少し雲散臭い雰囲気はありますが(世界的にもあまり注目も、支持もされていないようですが)。
東トルキスタン情勢は、キナ臭くなってきていますね。
投稿: Mars | 2005/10/09 15:54
morokuzuさん、お久しぶりです。
貴Blog、よく拝読させていただいております。
青森のねぶた祭りをめぐる顛末、日本人のノーテンキに呆れています。
侮辱と感じない精神構造が理解できません。
今後とも、ご健筆を期待しております。
Marsさん、おはようございます。
>中共の幹部自身、中共がいつまでも支配するとは考えていないようですね。そして、そんな幹部は、経済にも手を出して(もちろん、党の力を利用して)、金を稼いでいますが、元だけでなく、円やドルなどの外貨も溜め込んでいる状況です。
そのとおりです。
幹部の子弟も同様。
いわゆる「太子党」ですね。
鄧小平の娘が典型です。
投稿: 坂 眞 | 2005/10/10 10:58