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2005/10/11

中国炭鉱の悲劇

中国では炭鉱事故が連日のように起きている。その原因の一つが違法採掘炭鉱の
存在だ。違法採掘が横行するのは、業者と行政当局が癒着しているからである。
以下は、その違法採掘炭鉱に付けられた通称である。何と癒着しているのか?皆さんにも考えてもらいたい(笑)

①人大鉱
②政協鉱
③法院鉱
④公安鉱

正解は

①は議会(人民代表大会)、②は超党派議会(政治協商会議)、③は裁判所、
④は警察の「保護」下にある炭鉱を意味している。

国家炭鉱安全監察局によると、国内約2万4000カ所の炭鉱のうち約3割に当たる7000カ所が基本的な安全基準さえ満たしていない。
しかし、一方において、2004年に生産された石炭19.5億トンのうち、2億トン(約1割)が、この基本的な安全基準さえ満たしていない小規模な炭鉱で生産されたものなのである。中国の基準で「基本的な安全基準さえ満たしていない」ということは、安全対策など取っていないということだろう。

その結果、2004年には産業の現場で80万3600件の事故が発生し、13万6700人が
死亡した(国家安全生産監督管理総局発表)。このうち大半は炭鉱事故によるものと
思われる。
安全生産監督管理総局の李毅中局長によると、これは「GDP(国内総生産)1億元に
つき1人が死亡している計算になる」と言う。我が国に当てはめると約38万人になる。
我が国で労災の死者が年間に38万人も発生するとどうなるのか。考えただけでもぞっとする。
当然のことながら、李局長は「事故が経済の安定的な発展を妨げている」と危機感を
示している。しかし一方で「安全対策は効果を挙げており、事故は減少してきている」としているが、果たしてそうだろうか。
1次エネルギーの70%以上を石炭に依存している中国では、近年の旺盛な電力需要を背景に、石炭の価格が高騰。安全をないがしろにしたまま、違法な石炭採掘を行う炭鉱主が続出しているからである。
しかも前述したように、地元の行政当局と癒着している。

このような状況を受けて、国務院(中央政府)は8月22日、「安全生産のための条件を満たしていない炭鉱や違法炭鉱を閉鎖する緊急通知」を発表した。
さらに30日には、監察局や中国共産党の中央紀律検査委員会などの取締機関が中心となり、同様の通知を出した。
通知では、9月22日の期限までに、公務員に対して不正な投資を引き上げるよう要求が盛り込まれていた。要求に応じない場合は、免職はもとより、厳罰に処す可能性まで示唆した強い内容だった。
が、すでに期限を過ぎても公務員側の反応は極めて低調である。

国務院が、このような強硬な通知を出すきっかけとなったのは、8月に発生した広東省・興寧市にある大興炭鉱での浸水事故だ。
作業員123人が死亡したが、地元自治体の幹部など公務員が、炭鉱に対して不正な
手段による投資を行っていたことが判明したからである。
しかし、事態が改善される見通しは暗い。

前出の李局長も、「炭鉱オーナーってのは、度胸がいいもんだな。だれが後ろで糸を引いているのか」と苛立ちを露わにしている。
が、違法炭鉱をめぐる地方独特の複雑な利害関係に対して、中央政府の強い警告
(通知)も効果がないのが実情なのである。

山西省は中国有数の石炭算出地であるが、違法炭鉱のオーナーらが北京市の高級住宅地の物件を買いあさっていることが話題になっている。

2003年4月に湖南省楼底市の炭鉱で発生したでガス爆発事故(作業員16人が死亡)では、同市の安全監督部門担当者が、毎年の定期検査の時に2000元を受け取り、お目こぼしをしていたことが判明している。

2004年6月に河北省・邯鄲県の炭鉱で起こったガス爆発(作業員12人が死亡)では、炭鉱側が事実を隠蔽、死亡した作業員を勝手に火葬した。
遺族に対しては、マスコミへの口外禁止を条件に遺骨と8万元(約100万円)を渡した。地元新聞社などの取材で事故が明らかになったが、地元自治体の議員も兼ねていた大株主は行方不明になった。

陝西(せんせい)省・府谷県の炭鉱では、採掘により山崩れや地盤沈下などが発生。
村民は行政機関に改善を求めて陳情に出かけたが相手にされず、実力行使で採掘を阻止。
炭鉱側は2005年4月に棍棒やつるはしなどで武装した100人余のグループを雇い、
村民を襲撃した。

先月、同じく陝西省で起こった事態は更に深刻である。
黄陵県の炭鉱で9月15日未明、大規模なガス爆発事故が発生。作業員12人が死亡、
2人が負傷した。しかし炭鉱側は事故を隠蔽。
作業員の家族などの通報を受けた県の炭鉱局などが15~16日にかけて現地調査に入った。が、「事故が発生した形跡は見当たらない」と2回にわたり県に対して虚偽の報告をした。
そこで今度は、地元テレビ局の陝西電視台が17日のニュースの中で、「1人が死亡、
数人が負傷のもよう」などと炭鉱事故を報道した。
これに対して当局側は、県の炭鉱局や安全生産監督管理局などを再調査に投入した。調査官は、炭鉱長などから聞き取り調査を行い、作業員の登記簿などを調べたりしたが、事故の有無を確定できなかった。
結局、地元テレビ局の陝西電視台が、18日もこの事故を追求したので当局は19日になって初めて事故の発生を認めた。
そこで下された処分は次のとおりである。
炭鉱長ら経営幹部5人は拘留処分。県幹部3人が事故調査の不備を理由に停職処分。20日付の新華社の報道である。

業者と役人が結託して違法採掘炭鉱を作る。安全をないがしろにしたまま採掘作業をやらせるから事故が起こる。
事故が起こると業者と行政当局が一体となって隠蔽工作に走る。遺族には、ほんの
涙ガネで口封じをする。
腐敗はメディアも例外ではない」で述べたように、中国では取材記者に口止め料を
払い、記者もそれを受け取るのが「長年の悪習」になっている。
その点、陝西省のテレビ局・陝西電視台は(中国のメディアにしては)立派だったということだ。

国家炭鉱安全監察局は多発する炭鉱事故を防ぐために、今後も国内約2万4000カ所の炭鉱のうち約3割に当たる約7000カ所を安全上問題があるとして年内に生産停止させる方針だという。
しかし、慢性的エネルギー不足に悩む中国において、1次エネルギーの70%以上が
石炭に依存している。その中で、果たしてそれが可能なのか?
実際に、炭鉱事故が相次いでいる現状において違法炭鉱の閉鎖が進んでいる。しかし、このために石炭不足が深刻化。2005年は5000~7000万トン、06年は1億トン以上不足する可能性があると「21世紀経済報道」は伝えている。

国家炭鉱安全監察局の9月20日の発表では、生産停止になった炭鉱は、これまでに
全国で8648カ所で、全炭鉱数の40%に達している。
この影響で、山西省では9月に入り、1トンあたりの石炭価格は9.7%上昇。同省・大同産の石炭は1トンあたり550元から600元へと値上がりした。
一方、貴州省では、石炭備蓄が1~3日分しかないため、操業停止を申請した火力発電所もでてきた。また同省では、湖南省や重慶市など周辺地域への送電を一時的にストップした。

「21世紀経済報道」によると、「安全基準を満たしていない小規模な炭鉱が閉鎖されれば、2億トンの石炭が消失する」という。
現時点で4割の炭鉱が閉鎖され、さらに残った炭鉱のうち3割が閉鎖の対象になる。
こんなことが可能であろうか?閉鎖しても、また新しい違法採掘炭鉱が続々と発生する。
要するに「いたちごっこ」。中国のエネルギー事情を考えれば、それが現実ではないか。

「事態は長期化の様相を呈してきている。人命、安全、癒着、エネルギー確保、地方の景気浮揚などクリアーすべき問題は多い。中国政府にとって難しい舵取りを必要とする日々が続いている」という「中国情報局」の分析は正鵠を射ているのではないか。
少し控えめすぎる感はあるが(笑)

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参照記事1:安監総局長「産業事故で13万人死亡」安全呼びかけ
(2005年9月22日 中国情報局)
参照記事2:混迷する「違法炭鉱」問題、問われる人命、安全、景気
(2005年10月3日 中国情報局)
参照記事3:陝西:炭鉱事故12人死亡、炭鉱長拘留、役人停職
(2005年9月21日 中国情報局)
参照記事4:中国、炭鉱7000カ所に生産停止処分・事故多発で
(2005年8月31日 日本経済新聞)
参照記事5:違法炭鉱の相次ぐ閉鎖、石炭供給が1億トン減少
(2005年10月7日 中国情報局)

makotoban

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コメント

労働者にとって過酷過ぎる共産国家・・・。矛盾の極みですね。
しかしまあ、我慢強い連中ですなぁ。命がかかってても抑圧に耐えるのは中華DNAのなせる業なんでしょうかね?
日ごろからまさに命懸け状態。そんな彼らが暴動起こしたら怖いもの無し? 収拾つきそうにありません。

この頃、ランキング上昇はすごい勢いです。
それとともに?記事量が多くなってきているような気がしますが、無理なさらないように。(笑)

投稿: 岩手の田舎人 | 2005/10/12 00:36

おはよう御座います。④公安鉱?
昔は、日本にもタコ部屋があり労働条件は過酷なものだったと聞いていますが、現在は、3Kから少し離れ、安全対策は万全たと聞き及んでいます。
本当に、中国の醜い官・民・マスコミの癒着構造を見聞きすると、絶対に見習うべきものではなく、被害者に対する対応は憎悪すら覚えます。人の命の軽さは許しがたい、隣人から学ぶ事は何も無い。

投稿: NZ life | 2005/10/12 05:05

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投稿: BlogFreak | 2005/10/12 11:22

こんにちは、リンクさせていただいた榊です。中国の労働事情はめちゃめちゃですね。その石炭を中和することなく燃やしまくって酸性雨ですから、大台ケ原の木が枯れちゃう。東欧も同じような状況ですから、共産主義こそ地球を滅ぼす悪だと思います。ちなみに日本は無公害石炭ボイラーを作る技術があります。東欧にその技術を輸出し始めたそうです。中国もロケットや護衛艦買う前にやることあるだろと言いたいです。私もブログ更新しました。渾身の作なので当分休みます。日本が強くなれば中共は、かなり不利な状況になると思います。
ではでは

投稿: 榊雲水 | 2005/10/12 15:40

榊雲水さん、おはようございます。
>石炭を中和することなく燃やしまくって酸性雨ですから、大台ケ原の木が枯れちゃう。

確か、東ドイツがひどくて、大問題になりましたね。
やはり、独裁というのが根本的な原因だと思います。
批判勢力、対抗勢力がないから、根本まで腐ってしまう。

投稿: 坂 眞 | 2005/10/13 09:43

岩手の田舎人さん、こんにちわ。
ご指摘のように無理が重なっているのか、レスもらしてしまいました(爆笑)

>しかしまあ、我慢強い連中ですなぁ。命がかかってても抑圧に耐えるのは中華DNAのなせる業なんでしょうかね?

昔の苦力(クーリー)を思い出します。
奴隷ではない「奴隷労働者」。
この国にとっては、命の安全などまだまだと言うことでしょう。
二の次、三の次、とにかくカネ。


NZ lifeさん、どうもです。
こちらもレス遅れて申し訳ありません。

>④公安鉱?

本当に???ですね。
警察が出資してやらせている「違法採掘炭鉱」のことだそうです。
もう無茶苦茶ですね。

投稿: 坂 眞 | 2005/10/14 12:01

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今中国で盛んに唱えられているスローガン(口号)に「可持续发展」があります。 近年の急速な経済発展により世界の資源が急騰し、船運賃も高騰、その運ぶための港も足りない 道路も足りない。その解消のため開発、開発、また開発。挙句は環境破壊が著しく、最近はこのままではいつか大変なことになるということで提唱されているのが「可持续发展」。 とくに石炭の乱開発はすごい。 なぜなら儲かるから。 今年鉄鋼用石炭の価格は2倍以上に跳ね上がりました。 当然のことながら炭鉱のオーナーは大金持ちになる。 ... [続きを読む]

受信: 2005/11/14 20:15

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