記憶喪失になった元総理
交通事故で脳にダメージを受けた患者さんのこんな例を聞いた。政治、経済、歴史に
通じ、チェスもできる。別荘の所在地も、マイカーの車種も言える。しかし、別荘での暮らし、ドライブの体験などは、全く思い出すことができない。
▼たくさんの人が共通で知っている事実=意味記憶は鮮明なのに、個人的な体験=
エピソード記憶は全部消えている。これと酷似した話を、昨年11月の、衆院・政治倫理審査会で聞いた。橋本龍太郎元首相は、日歯連からの1億円のヤミ献金をもらい、派閥の会計責任者へ渡したかと問われ、こんな言い訳をした。
▼「日歯連側も会計責任者もそう証言してるなら、それが客観的事実だと思う。しかし、私は記憶にない」。1年が過ぎ、昨日のヤミ献金裁判の法廷でも、類似の証言を繰り返した。エピソード記憶の見事な欠落は、専門医の診断が必要ではないか。料亭で小切手の受け取りに同席した人物の名前、意味記憶の方も消えていて、症状は深刻だ。
▼人間の記憶にはもう1種類あって、歯を磨いたり、車を運転する手順のように、無意識に体が覚えている手続き記憶である。大派閥の領袖にとって、1億円のヤミ献金など日常茶飯事。いつものように無意識のうちに右から左に処理しただけで、記憶に残る
はずもない、ということか――。
(2005年10月12日 日本経済新聞【春秋】)
上記の記事は、今月11日、日本歯科医師連盟(日歯連)の「1億円裏献金事件」で、
村岡兼造被告(74)の公判に証人として出廷した橋本龍太郎元首相に関するものである。
皮肉が強烈すぎて、つい笑ってしまいそうになるが、これは笑い事では済まされない。こういう人物を、我が日本国は総理大臣として戴いていたのである。
元首相が刑事事件の証人として法廷に立つのは極めて異例である。証言の過程で、裁判長から「思い出す努力をどれだけしたのか疑問だ。本当のことを言っているのか
という疑問をぬぐいきれない」と指摘されるのは異常ですらある。
自らの政権で官房長官だった村岡兼造被告から、「大変恨んでいます」と責められるにいたっては、言うべき言葉もない。
(参照:10月12日 毎日新聞)
私は、この政治家が身震いするほど嫌いである。小渕恵三元首相も森喜朗前首相も、「バカだチョンだ」と言われながらも、まだ救えるところがあった。
小渕氏は、自宅の門前で番記者にコーヒーを振る舞い談笑する気さくさがあったし、森氏だって、あの「缶ビールと干からびたチーズ」事件後の記者会見を見れば、憎めないところがある。
ところが、この橋本龍太郎という男だけは煮ても焼いても食えないのだ。人格、識見、及び性格は、歴代総理の中でも最低の部類に属する。
この男が総理大臣に就任したのは1996年1月である。そのころ日本経済は、バブル崩壊後の景気後退を脱し、緩やかに回復軌道に乗りつつあった。しかしまだ、金融機関は未曾有の不良債権を抱え、先行きはまったく不透明だった。
ここで一国のトップが選択すべき道は「構造改革」であり、不良債権の処理に筋道を付けることであった。もちろん、これは今だから言えることで、当時は金融機関の数十兆円にのぼると言われる不良債権をどう処理すればよいか、誰も明確な解答を持ち合わせていなかった。
しかし、やっと回復基調を示しつつあった景気の腰を折るようなことは絶対にやっては
ならない、という意見は根強く、筆者レベルの者でもそう思ったものだ。
ところがこの男は、景気の回復よりも財政再建に目が向いた大蔵省(現・財務省)の
口車に乗って、「赤字財政を建て直す」と大見得を切り、消費税率を5パーセントに引き上げたのである。
その結果、消費は一気に冷え込み、日本経済は奈落の底に突き落とされてしまった。
この男が犯した罪はこれだけではない。1990年4月、当時大蔵大臣だったこの男は、
大蔵省の意向を受けて、いわゆる「不動産の総量規制」を実行した。この規制により、銀行は一斉に不動産関係企業に対する融資をやめた。その結果、土地は暴落し、日本全国の土地路線価格2,200兆円は一気に半分以下になり、差し引き1,650兆円が宙に消えた。
つまり、この男は、大蔵大臣としてバブルを崩壊させ、それによって大きく傷ついた日本経済が何とか立ち直ろうとしていたときに、今度は総理大臣として奈落の底に突き落とすような政策を実行したのである。
もちろん政策を立案し、実行を迫った大蔵省も悪い。しかし、「不動産の総量規制」を
実行したときも、消費税を引き上げたときも、反対論は根強くあった。
ところが、「日本一の政策通」を自認するこの男は、聞く耳を持たなかった。この男は
「政策の橋龍」を自負していたが、周りの評価は「本省の課長クラス」というのがもっぱらだった。
つまり、細かい項目や数字には精通しているが、政治家としてもっとも必要な大局観やビジョンといったものがまったくない、という評価である。しかも、「怒る、威張る、拗(す)ねる」が最大の個性と言われるほど傲慢で、他人の意見など聞くはずもなかった。
そのくせ中国には弱腰で、土下座外交と揶揄され、挙句は中国人の女スパイと「男女の関係」にあると疑われたほどである。
結局、この男が総理大臣になったのは、小沢一郎氏と野中広務氏の政争の産物であり、この男が一国の総理としてふさわしいと認められたからではなかった。
この男以降の小渕、森両氏もそうである。「シャッポ(総理大臣)は軽くてバカがいい」という経世会(旧・竹下派)伝統の、理念よりも利権を優先する談合政治が、これらの連中を総理大臣にしたのである。その報いが「失われた10年」であり、世界一の借金だった。
我々は、このような「政治の負の歴史」を肝に銘じなければならない。利権を基軸にした談合と野合によって政権がたらい回しにされる時代は、既に遠い過去のものでなければならない。
ポスト小泉しかりである。しっかりと監視しなければならない。
幸い野中氏は引退し、綿貫民輔氏や亀井静香氏は僻地に引っ越した。談合政治の
生き残りは、古賀誠、高村正彦.、山崎拓、麻生太郎の各氏に参院の青木幹雄氏くらいである。
(森氏と河野洋平、加藤紘一の両氏はアガリとする。残りの小物は無視。笑)
自民党及び政治の歯車を逆回りさせてはならない。
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コメント
おっしゃるとおりですね・・ふざけんなってカンジします。
橋本氏は議論に強かった。自民党の若手議員を完全に打ち負かせ、黙らせてました。「おまえ 今 ○○と言ったな・・じゃあ証拠を見せてみろ」って具合です。小泉さん以上に人の話を聞かないってカンジですね。
投稿: 榊雲水 | 2005/10/13 17:35
こんばんは、坂眞さん
私は、政治家のすべてが清廉潔白とは思いませんし、必ずしもそうなるべきだ、とも思いません(政治には当然、それなりのお金も必要だと思います)。
しかし、政治家が政治でメシを食っているのならば、ちゃんとした結果を残さないと。内政に留まらず、外交においても橋本元首相が残したことといえば、韓国・中国に対して謝罪し続け、相手を更に増長させた事実は隠せないと思います(小林よしのり氏はその著書で、橋本元首相を痛烈に批判しています)。
人間、引き際が大切で、橋本元首相は、更に顔に泥を塗った、典型でしょうね。一刻も早く、罪を認め、償うことが肝要かと思われますが。そう、しないでしょうね、この方は。
投稿: Mars | 2005/10/13 18:15
ポマード首相は金と女に汚い!
この世で金と女に汚い男は本当に汚いと思う。
悪いことは何でもござれになるからです。
ドイツのシュレーダーは女大好きです。
チャイナと仲良しだし・・・。
中国の兵法で、使いが有能ならば、ただの世間話を、
無能ならば酒池肉林大接待です。
なんかポマードってそのレベルなんですね。
投稿: madoka | 2005/10/13 19:24
僕は保守左派なので小泉自民党を胡散臭く感じていますが、あなたの意見を聞くと、そうなのかなぁ~と思わないでもないです。とりあえず「毒を持って毒を制する」と自分に言い聞かせて、小泉自民党の行方をしばらく見守ろうと思います。ところで鳥取県の例の条例のことも書いてくださいと。実は鳥取県知事の片山さんが以前竹島について保守には痛い発言をしていることが判明しました。http://ameblo.jp/kuranobu/
投稿: 蔵信芳樹 | 2005/10/13 19:44
こんばんは。毎回楽しみに拝読しております。
「橋本元首相」ですか…。かつて、日歯連の件で記者から質問された時「君たち、少し質問を変えたらどうだね?」などと言放ち、私は激怒したのを思い出しました。
「不動産総量規制」「消費税5%の最悪のタイミング」歴代に残るダメ首相ですね。その癖あの高圧的な態度。
「おまえらみたいなアホに説明する必要などない!」的なコメント。挙げたら切りがありません。
しかし、私は「村山元首相」の自衛隊閲兵式の方が衝撃的でしたね。「政治家なんて信用できない」と確信しました。
投稿: かず | 2005/10/13 22:40
おはよう御座います。
「記憶に御座いません」と都合の悪い時だけ記憶喪失になれる総理は、羨ましいですね。橋本内閣時に、初大臣になった小泉さんの1番の功績は、橋本派を壊滅状態にした事かもしれません。
政治家と金(献金)の関係、裏金と献金の境界線は何処なのか?永遠のテーマですね。
投稿: NZ life | 2005/10/14 05:11
「色男、金と力はなかりけり」ならまだ救われたけれど、身の丈合わぬ総理の衣装をつけただけでなく縫いぐるみで全体を柔らかい手触りで覆ったのが間違い!逃げるのも早い、変わり身も含めて引退して息子を出馬させて、操る側に回った。だけど流行らないポマード臭が鼻に付く。悪行は宮沢馬鹿猿と良い勝負。
投稿: ようちゃん | 2005/10/14 05:30
みなさん、こんにちわ。
コメントありがとうございます。
みなさん、やはり橋龍が嫌いのようで(笑)
当たり前ですよね。国民を愚弄している。
バカは自分がバカであることが分からないといいます。その典型でしょう。
しかし、そんなバカが総理になったおかげで、この国はえらい目にあいました。
自分よりレベルが低いと思うと
「君、そんなことも知らないの?」
少しレベルが高い相手には
「あなたが知らないことを私が知っているわけないでしょう」と鼻先で笑う。
首相になってからもそうだったというから、救いようがありません。
蔵信芳樹 さん
保守左派とは、保守の中のリベラル→中道右派ということでしょうか?
例の片山知事、自治省(現・総務省)出身ですね。
彼は考え方ややっていることを見ると保守ではありません。
むしろ米国の民主党リベラル派に似ています。
合理的手法と弱者寄りの姿勢。日本の従来の左派とも違います。
ただ、思想的には国家や民族といった意識が薄く、インターナショナルな志向が強い。
だから、在日の参政権も認めますし、国籍条項のない人権法案を通したりする。
しかし、新興大国(中国、インド、ブラジル等)が台頭し、世界の力関係が急激に変化しつつある現状では、片山知事のやり方では国益を損なうと思います。
「同盟(友好)は永遠ではない。永遠なのは国益である」という言葉が今ほど重みを持っている時代は、戦後初めてではないでしょうか?
投稿: 坂 眞 | 2005/10/14 12:30
片山の年代は「怖い」ですね、信念が無いと言うより「信念」て文字は教わって居ない年代ですからね。
橋本元総理は金泳三と済州島て会談の時に朝鮮風で僕の挨拶をした、これで韓国にバカにされる事に成ったのも気付かない、中国でケツから写真撮られるのは当たり前。
投稿: 猪 | 2005/10/14 15:04
猪さん、こんばんわ。
>橋本元総理は金泳三と済州島て会談の時に朝鮮風で僕の挨拶をした、これで韓国にバカにされる事に成ったのも気付かない、中国でケツから写真撮られるのは当たり前。
ケツから写真ですか(爆笑)
まさにそうですね。
Hをした銀座のホステスが顔出しで橋龍との「一夜」を暴露した、そんな総理も初めてです(笑)
投稿: 坂 眞 | 2005/10/14 17:56