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2005/11/12

日本郵政社長に西川善文氏

昨日のビッグニュースは、やはり「日本郵政株式会社」社長に三井住友銀行前頭取の西川善文氏の起用が決まったことだろう。
讀賣、朝日、毎日、日経、産経、東京の主要6紙が、すべて今朝の社説で採り上げて
いる。民間会社のトップ人事を全紙が社説で採り上げる、あまり記憶にない出来事で
ある。
それだけ政財界やメディアの関心が高く、極めて重要な人事であったということだ。

西川氏は銀行時代、「最後のバンカー」と謂われたほどの辣腕ぶりを発揮した。総合商社・安宅産業破綻の事後処理、中堅商社・イトマン破綻の事後処理、バブル崩壊後の不良債権の処理、三井銀行との財閥の垣根を越えた合併。
なにより、全国銀行協会の会長を二度も務めたところにその実力者ぶりがうかがい
知れる。

西川氏のバンカー及び経営者としての実力は、一つの伝説になっている。
「お公家集団」の三井銀行と、悪く言えば「追いはぎ集団」のような(笑)住友銀行が、
合併後も争いなく無事で来れたのは、西川氏のカリスマ性に拠るところが大きいと言われる。
西川氏は、戦国の武将・織田信長の直線的な生き方に惹かれるという。どこか小泉首相に通じるところがありそうだ。

ところで、西川氏は最後の最後につまづいた。東京三菱銀行とUFJ銀行の合併に横槍を入れたことが金融庁の逆鱗に触れ、三井住友銀行は金融庁の長期の検査を受ける破目になった。
検査の結果、不良債権処理費用の積み増しを命じられ、3月期決算で巨額の赤字を出すところまで追い込まれた。西川氏は、その責任を取って6月の株主総会で辞任せざるをえなくなったのである。

しかし、政治とは面白いものだ。実質的に金融庁によって追い落された格好の西川氏が、「日本郵政株式会社」という日本最大の民間金融機関のトップとして甦る。
経団連の奥田会長などは、「利益相反」を理由に銀行業界からのトップ起用に反対していた。また民間企業出身の生田郵政公社総裁の横滑りを支持する声もかなり根強い
ものがあった。
それらの声を押し切り、一度は金融庁から睨まれた西川氏をトップに起用する。ここに
竹中総務相の政治的力量がいかに強くなったかを痛感する。

私は今回の小泉首相及び竹中総務相の人事を支持する。
「従業員26万人の金融・物流の複合企業体を束ね、巨大官業を早期に真の民間企業に生まれ変わらせる」(日経新聞)には、バンカー及び経営者としての実力に定評が
あり、なおかつカリスマ性を併せ持った西川氏のような人物が欠かせないからだ。
小泉首相は、西川氏を官邸に招き、直々に就任を要請する力の入れようだったという。


ここで、郵政公社が郵政株式会社に変身していくうえでの問題点と課題を挙げておこう。

①従業員26万人の金融・物流の複合企業体を束ね、巨大官業を早期に真の民間企業に生まれ変わらせる重責を新経営陣は担う。政府は保有株式の売却を急ぎ、民営化会社が他の民間企業と公正な競争をできる環境を早期に整える必要がある。

②西川氏がいくら有能であっても、1人で巨大官業を変革させることはできない。政府は西川氏が十分な指導力を発揮できるような環境を整える必要がある。

③まず民営化後の郵政会社は早期に真の民間企業に生まれ変わることが緊急課題である。そのためには経営陣は民間出身者が中心のチームで当たるのが望ましい。
民間出身者は西川氏だけで、その周りは郵政公社職員や官僚出身者ばかりということでは、本当に民間並みの経営の効率化は進まない恐れがある。

④その意味で今回発表になった人事には気になる点がある。
西川氏を委員長に発足する民営化後のビジネスモデルを検討する経営委員会の委員に、旧郵政省出身の団宏明・日本郵政公社副総裁と旧大蔵省出身の高木祥吉・推進室副室長の2人の官僚出身者が入ったことだ。

⑤経営委員会の委員から民営化後の事業会社トップが選ばれる見通しだが、民間企業経営の経験がない官僚出身者が民営化会社の初代トップに就くのであれば問題だ。
真の民営化を目指すには、郵便、郵貯銀行、郵便保険、窓口サービスの四事業会社のトップは民間から有能な経営者を選ぶべきだ。

参照:2005年11月12日 日本経済新聞【社説】

⑥郵政民営化関連6法には、自民党内の慎重派に配慮して、改革を後退させる内容も盛り込まれた。例えば、持ち株会社は貯金、保険の金融2社の株式をいったん完全に処分する。
しかし、持ち株会社は株式を買い戻すこともできる。それによって、経営の一体性を
回復させる狙いだ。
西川氏が改革の趣旨を理解しているならば、こうした“抜け穴”は使えないはずだ。常に改革の狙いを念頭に置いて、重要な経営判断に当たるべきだろう。

参照:2005年11月12日 読売新聞【社説】

それにしても、新聞が変われば同じ件でも主張がずい分と変わる。
以下は、毎日新聞と東京新聞の社説の抜粋である。


郵政民営化が本来目指していた国営金融機関の肥大化批判にもしっかりと応えていかなければならない。そのためにも、新しいビジネスモデルとは何なのか、早い段階で
提示し、国民の理解を得る必要がある。
今回の郵政民営化に危うさを感じるのは、役割が終わった国営金融機関を民間会社という形で再生しかねないからである。民間会社になったら、何をやっても自由との論理もあるが、今回の民営化は勝手気ままな会社にするためではない。

郵便における全国一律サービスの維持は任務であるが、同時に、金融事業では民間ではあるが既存の金融機関の補完を基本にするということであろう。それは西川氏の
「銀行のまねはしない」という発言と理解したい。

(2005年11月12日 毎日新聞【社説】より)


郵貯、保険とも当面は資金運用の手段は限られ、国債や財投債の購入が主体となら
ざるを得ないだろう。資金を「官」から「民」へと流れを変え、効率化するというの目的はすぐには実現できない。
そうした制約を抱えて出発する民営化郵政だからこそ、西川氏の剛腕が期待されたに違いない。

同氏は、民間銀行経営の経験を最大限に生かして、「官業」の世界に浸りきっていた
郵貯をはじめとした郵政事業に、「民」の活力を吹き込んでほしい。その結果、民営化
郵政が古巣の銀行業界の有力な競争相手になっても、結果的には業界の利益にも
つながるはずだ。

(2005年11月12日 東京新聞【社説】より)

毎日新聞は「金融事業では民間ではあるが既存の金融機関の補完を基本にする」と
主張し、東京新聞は「民営化郵政が古巣の銀行業界の有力な競争相手になっても、
結果的には業界の利益にもつながるはず」と主張する。
私の考えは東京新聞の立場に近い。確かに「何をやっても自由」とまでは言わないが、「既存金融機関の補完」で終わらせるということは、将来的には「廃止する」ということに等しい。
そうではなく、政府保有株式の売却を急ぎ、「郵政株式会社」が他の民間企業と公正な競争ができる条件と環境を早期に整えることである。
公正な土俵の中でお互いが競い合う。それが我が国の金融の活性化をもたらし、郵政民営化の真の目的を達成することになる。


最後に西川氏の人となりを簡単に紹介しておこう。

nishikawa西川善文氏
←クリックすると大きくなります。









「突破口を開いていくのは、信念をもって我行かんという気持ちがいる」(西川氏)。

西川氏は、戦国の武将、織田信長の直線的な生き方に惹かれるという。大学時代の
同級生は「寡黙で映画好きだった」仲間の変貌に驚く。
「修羅場」を経て培われた眼力。護送船団行政時代のひ弱な頭取たちとは違う野太さが身上である。

座右の銘

「為さざるなり。能わざるに非ざるなり」
できないのは能力がないからではなく、やっていないからという意味の孟子の言葉

プロフィール

1938年 奈良県生まれ
1961年 大阪大を卒業し住友銀行入行
1976年 融資3部で安宅処理を担当
1986年 企画部長。その後は企画担当役員としてイトマン問題をみる
1997年 住友銀行頭取
2001年 三井住友銀行頭取
2004年 2回目の全国銀行協会会長
2005年 三井住友銀行特別顧問

家族 夫人と2人暮らし。長男は独立しエンジニア
趣味 月下美人の栽培。中学、高校では軟式テニス。大の阪神ファン

参照記事:フロントランナー

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コメント

こんにちは、坂眞さん。

郵政民営化は、私個人としては賛成です。しかし、複雑な思いもします。というのも、私の親族の中に、郵便局員がいます(役職は、決して高くありませんが)。
現実として、以前の郵便局に比べ、サービスも向上してきていますし、これからも、民間同様、努力する必要があるとは思います。
日本郵政社長に就任された西川善文氏はどの程度までできる人物かは存じてませんが、国民の多くが納得できる形での民営化を行っていただきたいと思います。
(まぁ、それでも、納得できない者も、多くでるかもしれませんが)

投稿: Mars | 2005/11/12 16:40

こんばんは。「追いはぎ集団」、笑わせて貰いました。
「人生50年、下天のうちにくらぶれば、夢幻のごとくなり」私の大好きな言葉です(書かれた扇子も持ってます)。
彼の座右の銘「為さざるなり。能わざるに非ざるなり」も共感を覚えます。私の差別と区別は違う、差別は弱い者に鞭打つ行為、区別は努力せず出来ないふりをする者を分ける行為の持論もこの発想から来ています。
確かJAL?ANA?と貨物で提携も始めましたよね?少しずつ民営化効果が見えてきた部分もある。郵政民営化を軌道に乗せる大仕事は、一筋縄ではいかないでしょうし、今後も紆余曲折はあるでしょうが、頑張って貰いたいものです。この大役は、大物で曲者(カブキモノの意味)が適任では無いでしょうか。

投稿: NZ life | 2005/11/12 17:08

生田総裁が続けるものとばかり思っていました。
しかしまあ、強烈な人事でした。民業圧迫とかいう制約が無ければ規模だけではない世界一の巨大銀行に育つ可能性も出てきたということでしょうかね?
郵便局にはそこそこ優秀な人材が集まっているような気もするんで(よくありそうな縁故採用は??ですが)、うまく活用できないものかと思うところです。

投稿: 岩手の田舎人 | 2005/11/13 01:12

皆さん、こんばんわ。
コメントありがとうございます。
西川善文氏、必ずやってくれると思いますよ。
日本の金融機関全体が活性化する方向で。

投稿: 坂 眞 | 2005/11/13 19:39

こんばんわ、坂眞さん。

はじめまして。

TBさせて頂きましたが、こちら側の送信フォームがおかしいですので、ご報告まで。

二重投稿になってしまいましたが、スパム等ではありません。

多重になっているTBの削除を願います。

これからもよろしくお願いします。

投稿: 九十九 | 2005/11/13 22:44

ご無沙汰しております。

TBありがとうございました。
ご勝手ながら今回ブログをリンクさせて頂きました。

ご連絡まで。
これからもよろしくお願いします。

投稿: 九十九 | 2005/11/14 18:35

TBS監査役にして楽天證券社外取締役 西川善文。もはや"分け前狙い"は明白。最近では三井住友関係者からも煙たがられているようです。
郵便局があっても バブルの頃の日本の銀行は世界一だったはず、いまさら民業を圧迫するなどとは片腹痛いですナ。
日本の金融が良くなると国際金融資本はその何倍も良くなることになっているのですから。
2007年民営化、2008年国債の大量償還、そして米民主党 ヒラリー・クリントンが大統領になる(?)
その時に 日本切捨てと言うことにならないように願いたいものです(民主党⇔中国)。
反米で郵政民営化賛成を貫くには相当の努力と体力が必要かと。

投稿: hp-jp | 2005/11/18 17:58

民営化しても総務省の手を離れない郵便局ですが、今後どーなるんでしょう?全て総務省の手の内なのかもしれません。

何せ総務省官僚の既得権は守られましたので。

投稿: Felddorf | 2005/11/18 20:39

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