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2005/11/13

ポスト小泉:権力闘争が始まった

このブログで比較的に多いエントリーは、中国と韓国に関するものである。が、実は
私がもっとも好きなのは政局がらみの記事なのである。
なぜか?そこでは、権力をめぐるむき出しの人間ドラマが見られるからである。そういう意味では、郵政民営化をめぐる攻防は、どんなドラマよりも面白い「血湧き肉躍る舞台劇」(笑)だった。

郵政民営化をめぐる攻防が小泉首相の一方的な勝利に終わり、政局は今、小康状態にあるように見える。が、既にポスト小泉をめぐる凄まじい前哨戦が始まっている。
今日は、そのあたりについて書いてみたい。

ポスト小泉をめぐる政局を読むキーワードは「政府系金融機関改革」「消費税率引き上げ」「国立追悼施設建設」の三つである。

私は、ポスト小泉について次のように考えている。
本命・安倍晋三官房長官、対抗・谷垣禎一財務相、三番人気・麻生太郎外相、穴馬・福田康夫元官房長官、大穴・与謝野馨金融・経済担当相。
巷間で取りざたされる竹中平蔵総務相や小池百合子環境相の目は、今の自民党の
権力構造を考えれば、まずありえない。

本命に安倍氏を挙げるのは、国民的人気の高さと所属する森派が最大派閥であることだ。確かに派閥は、以前のような結束力は失くしたが、総裁派閥になれる魅力はまだ捨てたものではない。

対抗に谷垣氏を挙げるのは、その政策能力と周囲に敵を作らない温厚な人柄である。谷垣派は衆参合計15人の小派閥だが、盟友関係にある山崎派(34人)が全面的に
バックアップする。

麻生氏を三番手にしたのは、所属する河野派が河野洋平衆院議長を入れてもわずか11人しかいないためである。
また、対立軸の一つになるであろう「国立追悼施設建設」=「靖国神社参拝の是非」に関しても、同じ側に安倍氏がいるため求心力を発揮しにくい。
また、「野中(広務)のような部落出身者を日本の総理にはできないわなあ」と平気で
発言するなど、党内に敵が多く人望がない。

福田氏が穴馬なのは、自民党内に「近隣外交を考えれば、次期首相は靖国参拝慎重派がよい」という意見がかなりの割合であるからである。
「国立追悼施設建設」=「靖国神社参拝の是非」が争点として浮かび上がれば、福田氏が一方の雄として担ぎ上げられる可能性は残されている。

与謝野氏は、人格、識見、時代感覚において他の候補を引き離している。無派閥ゆえに可能性は少ないが、ワンポイントリリーフとしては最適である。
また、東京一区が選挙区だけに、なかなかの都会的センスの持ち主でもある。

ところで、政府・与党内における各氏の関係はどのようになっているのであろうか。
まず、政府系金融機関を一つに統廃合する考え方については、安倍氏は積極的で
谷垣氏は否定的。安倍氏を竹中氏が「(政府系金融機関を)二つ以上にする理屈は
何もない」と言って側面援護すれば、与謝野氏は「組織論の前に、どういう機能を残すべきかという議論が必要だ」と言って谷垣氏に理解を示す。

消費税率引き上げについては、谷垣氏が「平成19年(07年)の通常国会に案を出せるようにしなければならない」と主張すれば、安倍氏は「消費税率引き上げよりも歳出
見直しを第一に実施するべきだ」と反論する。
竹中氏も「少し経済が良くなり(衆院選で)自民党が勝ったので一部の税関係者が
『増税、増税』と言っているが、形を変えた抵抗勢力で徹底的に戦う」と述べるなど谷垣氏と財務省に対する敵対心を露わにする。
一方、与謝野氏は「自民党が決定した通りの手順で物事が進むべきだと思う」つまり「2007年度をめどに所得税、法人税を含め一体的に見直すべきだ」と述べ、谷垣氏と
同じ立場に立つ。

党内では中川秀直政調会長(森派)が、「消費税の税率引き上げ法案を07年の通常
国会に提出したいという谷垣財務相の考えは拙速だ。デフレの克服と歳出削減、資産圧縮をやって、最後に増税の議論だ。初めに増税ありきみたいな考え方は取るべきでない」と述べ安倍氏を全面援護する。

小泉首相は、「政府系金融機関改革」については「一つに統廃合する」、「消費税率引き上げ」についても「消費税率引き上げよりも歳出見直しを第一に実施するべき」という立場である。
これだけを見ると、ずい分と安倍氏寄りに見える。が、実はそうではない。2007年に
「消費税率引き上げ」を決定しなければ、どうにもならないのは安倍氏も解っている。
その前に、歳出削減で目に見える効果を上げる必要があることは谷垣氏も解っている。
「政府系金融機関改革」についても、与謝野氏の言うように、「数」を問題にする前に
「機能」をまず議論するのが正論である。そんなことは皆そう思っている。
にもかかわらず、こういう対立した議論が表面化する。これはポスト小泉を意識した宣伝合戦の色彩が強い。

谷垣氏は、自らの主張が小泉首相の考えと反しているように見えても、自らの主張を
撤回しようとしない。これは自らの考えに自信を持っているのと同時に、安倍氏や竹中氏との違いを際立たせることで党内及び世論にその存在感をアピールしているのだ。
そして、小泉首相も本音の部分ではそれを認めている。

既に、首相周辺で、安倍-竹中-中川(秀)と谷垣-与謝野のラインが分立している
ことが分った。では麻生氏と福田氏はどうなのか。
麻生氏は外相という立場上、今のところ出番がない。が、政府・与党の双方でフリーハンド(無役)の立場にある福田氏は、内閣と党役員の改造を受けてさっそく動き出した。

今月9日、超党派の議員連盟「国立追悼施設を考える会」の設立総会が国会内で開かれた。
会長には自民党の山崎拓元副総裁。副会長に公明党の冬柴鉄三幹事長と民主党の鳩山由紀夫幹事長、事務局長に渡海紀三朗・自民党衆議院議員がそれぞれ就任した。

「考える会」の設立には、小泉純一郎首相の靖国神社参拝に対する中国、韓国の反発を和らげる狙いがあるとされる。が、それは表向き。
実際は「親中派」と「反安倍派」の合流である。
10月28日の発起人会に出席した自民党議員の顔ぶれを見ればそれがはっきりする。福田康夫元官房長官、加藤紘一元幹事長、額賀福志郎防衛長官、大島理森(高村派)、渡海紀三朗(元新党さきがけ)、竹山裕(参議院議員 )の各議員。
まさに自民党内の「近隣外交を考えれば、次期首相は靖国参拝慎重派がよい」という勢力が結集しているのである。

加藤氏は谷垣財務相の政治的師匠であり、名だたる親中派。山崎氏はその「偉大なる盟友」。
福田氏は、対中外交及び靖国参拝で小泉首相と対立し、今回も入閣を固辞した人物。
額賀氏は津島派(旧・経世会)の総裁候補で、次の次を狙うとされる。ここで51歳の
安倍氏が首相になれば一気に代替わりし、61歳の額賀氏に総理総裁の目はなくなる。
大島氏は高村派幹部で、郵政民営化法案を棄権した高村正彦氏の側近である。
おそらく、この「国立追悼施設を考える会」は、いずれ谷垣応援団か、福田応援団に
変身するであろう。

郵政民営化法案をめぐる攻防が、小泉内閣の倒閣という権力闘争であったように、今回の「国立追悼施設を考える会」の動きも、ポスト小泉を睨んだ権力闘争の前哨戦の始まりである。

ところで、ここでまたあの人物が暗躍し始めた。


野中元官房長官はTBSの番組「時事放談」の収録で、ポスト小泉に向けた動きで、
自民党の山崎前副総裁と加藤元幹事長が連携する可能性を指摘しました。

「山崎・加藤氏は、小泉さんとは違って、本当にどんな苦労も共にしてきました。そして、山崎さんは『私はどういう時期が来ても加藤を超えることはありません』と、僕に言いましたよ」(野中広務 元官房長官)

野中氏は、山崎氏と加藤氏が年金や国立の追悼施設の問題で相次いで議員連盟を
立ち上げたことに触れ、両氏が連携する可能性を指摘しました。

また、福田元官房長官も依然ポスト小泉の有力候補であるという考えを示しました。

野中氏「山崎・加藤氏、連携の可能性」
(2005年11月12日16:58 TBS News i)

■参考記事一覧

政府系金融1機関化は「懐疑的」 谷垣財務相が表明
(2005年11月 1日 朝日新聞)
政府系金融改革:「予想以上に進展する」--与謝野馨金融・経済担当相に聞く
(2005年11月3日 毎日新聞)
政府系金融機関は一つに集約を…官房長官と総務相
(2005年11月11日 讀賣新聞)
谷垣財務相、消費税引き上げ案「19年に国会提出」
(2005年11月 1日 産経新聞)
07年度の消費税引き上げは「拙速」 自民政調会長
(2005年11月 6日 朝日新聞)
消費税率上げよりも歳出見直しを第一に実施すべき=官房長官
(2005年11月 7日 ロイター)
党の手順で進めるべき 消費税率アップで与謝野氏
(2005年11月 8日 共同)
歳出削減を優先 竹中総務相
(2005年11月 7日 産経新聞)
項羽の四面楚歌の心境 消費税率アップで谷垣氏
(2005年11月 8日 共同)
追悼施設建設へ議員連発起人会 会長に山崎元副総裁
(2005年10月29日 産経新聞)

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コメント

悼施設議連 山崎氏ら16人「反対」 衆院選、推薦団体に公約
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051112-00000006-san-pol

 新たな戦没者追悼施設建設を目指し、九日に発足した超党派の「国立追悼施設を考える会」(山崎拓会長)に参加した自民党衆院議員のうち、山崎氏ら十六人が、先の衆院選で政治団体「神道政治連盟」との間で「新施設構想に断固反対」とする「公約書」を取り交わしていたことが十一日、分かった。選挙後わずか二カ月での豹変(ひょうへん)ぶりに、選挙で山崎氏らを支援した神道政治連盟側は不信感を募らせている。
 「考える会」の名簿によると、自民党からは四十六人が参加している。このうち公約書に署名・捺印(なついん)していたのは、山崎氏のほか、事務局長の渡海紀三朗、森山真弓氏ら。山崎派が半数の八人を占めている。

>「新施設断固反対」の公約を取り交わした議員が、「新施設検討」議連に参加する不思議。
>君子豹変す。
>それにしても、早すぎませんか???
>こんな連中、信用できるのか……

投稿: 奈菜氏 | 2005/11/13 20:09

坂様
いつも貴重な記事、ありがとうございます。
今日の鋭い現状分析も非常に参考になりました。
加藤・山崎両氏が影響力維持に躍起なのは理解できるとして、野中氏がゾンビのように搭乗するさまは...
これが政治の世界なのですかね。

投稿: Y.N | 2005/11/13 22:14

確認を怠りました。
搭乗ではなく登場です。失礼しました。

投稿: Y.N | 2005/11/13 22:16

おはよう御座います。
このまま政界再編に一気に加速する事が一番好ましい。
9月の選挙で自民党が勝利し、負けた民主党からの離脱者を絡め、政界が保守とリベラルで再編される事、解りやすい政党政治に生まれ変わる事が必要。両党ともピンからキリ(右から左)までいて良く解らないのが現状です(公明・共産・社会は鮮明)し、小泉さんが言われる、「自民党をブチ壊す」の本音だと信じてます。
次期総理レースから、マッチーが外れた今、地元の与ッチーになってもらい、駅に銅像でも立てて貰うしかない(雪国の首相に対する嫌味)。本命は、もう安倍さんしかいません。1-3、一点買い!

投稿: NZ life | 2005/11/14 05:15

皆さん、こんにちわ。
ほんとうに節操のない政治家が多いですね。

>こんな連中、信用できるのか……

ですね、まったく。

>野中氏がゾンビのように登場するさまは...
これが政治の世界なのですかね。

まさに政治の世界。
逆に言えば、それだけ(野中氏が必要なほど)小泉首相の力が強いということ。

>政界が保守とリベラルで再編される事、解りやすい政党政治に生まれ変わる事が必要。両党ともピンからキリ(右から左)までいて良く解らないのが現状です

私もそう願っています。
が、一気にはむつかしそうですね(笑)

投稿: 坂 眞 | 2005/11/14 15:51

この間NHKで谷垣、与謝野、麻生、安倍といった各大臣を集めての討論番組がありました。私は谷垣さんという人がよく分からないので注目していたのですが、その時の印象では、穏やかで頭が良く弁が立つ、といった感じでした。(はっきり言って安倍さんよりも言葉が聞きやすかったです。)そこで、麻生さんが言った言葉が印象的でした。彼は、ポスト小泉について聞かれ、「時代が決めるでしょう」と言ったのです。確かに、谷垣さんは穏やかで優秀そうですが、今後数年間、いつ有事があるかもしれない時に国のトップを任せられるかというと、不安を感じます。私も、ポスト小泉は時代が決めてほしいと思っています。
なお、「国立追悼施設を考える会」を立ち上げた人達については、自分達は世論の流れに逆行する、と自ら宣言したようなものだ、と思いました。

投稿: masa | 2005/11/14 17:41

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