子供の送迎にパトカー流用
当ブログでは、いつもは政治や経済、あるいは環境や資源といった、大局的な面から
現代中国を分析したエントリーが多い。
そこで今日は趣向を変えて、もっと身近な、市民の生活レベルの問題から中国の病巣を暴いてみたい。
↓
「公用車を子どもの学校への送迎に利用している」との通報を受けて、安徽省・六安市では調査を実施。「公用車の利用率」は49%に達していることが分かった。中国では
職権乱用が社会問題化している。6日付で人民日報が伝えた。
六安市の紀律検査委員会などは、9月下旬と10月上旬の計3日間にわたり、調査を
実施。送迎にやってきた86台の車輌のうち、公用車は49%にあたる42台だった。
このうち、中国共産党や政府部門所有の車輌は38%にあたる16台、パトカー・救急車は31%にあたる13台などとなっている。
六安市の関係部門では、公用車の使用状況について詳しく調べ、規則に違反するケースに対しては、厳しく処罰する方針。(サーチナ)
職権乱用:「救急車でわが子を送迎」紀律委員会「お灸」
(2005年12月7日 毎日新聞)
子供の学校への送迎に使用されている車両の約半分(49%)が公用車。しかも、そのうち約3台に1台がパトカーや救急車(31%)。
まさに爆笑ものだが、これは「笑い話」で済まされる問題ではない。極めて深刻なニュースである。ここに、現代中国の構造的な腐敗体質が、ものの見事に表れているからだ。
まず、公私のけじめがまったくないという、驚くべき中国の役人モラル。治安問題に直結するパトカーや救急車の私的流用。まさに行政は役人(権力者)のためにあるという
証明である。
事件や事故より子供の通学を優先する。この治安関係者の感覚は、犯罪や死亡事故の多発と無縁ではあるまい。
なぜ、こんなことが大手を振ってまかり通るのか?我々日本人には理解しがたいと
思う。が、中国の政治・社会構造からすれば、これが当たり前なのだ。
我が国のような民主主義国家では、行政は国民のためにある。行政のトップは内閣総理大臣で、国民によって選ばれた国会議員による(間接)選挙で指名される。そして、行政は、特定の政党や特定の団体のためではなく、広く国民全体のためにある(一部に「ゆがみ」もあるが)。
ところが中国は違う。中国の行政のトップである国務院総理(首相)は共産党が指名する(形式上は「国家主席」が指名)。国務院総理以外の各部長(各大臣)や地方政府の長の選出も、レベルは違うが似たようなものである。
国家の実質的最高権力者は中国共産党中央委員会総書記で、行政、立法、司法、
軍事のすべての最高権力を握っている(形式上は「国家主席」が国家の代表であるが、今は党総書記が兼務している)。
温家宝・国務院総理(政治局常務委員)は、胡錦涛・中央委員会総書記(国家主席)、曽慶紅・政治局常務委員(国家副主席) に継いで序列第3位にすぎない。地方行政の
トップである省長や市長も同様で、共産党の省や市委員会書記の指導下にある。
中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)が国家の最高権力機関である、と
されているが、これは共産党一党独裁を民主的に見せるためのカモフラージュにすぎない。
ここまで読めば、既にお解りであろうが、中国では行政、立法、司法、軍事のすべてが、形式上はともかく、実際上は国家・国民によってではなく共産党によって支配されているのである。
中国人民解放軍も「国家の軍」ではなく「党の軍」である。
これが、党幹部は言うに及ばず、一般の役人から警察官、果ては検察官や裁判官に
まで至る腐敗の元凶なのである。そしてその腐敗は、「パトカーや救急車による子供の学校への送迎」にまで及ぶ(爆笑)。
根本的なねじれは、「共産党は人民の党であり、人民のためにある」という幻想がとっくの昔に崩壊したのに、未だにその虚構を拠りどころにして人民を支配している中国共産体制に起因する。
共産党が「革命の党」であったときは、まだ「人民の党」であったかもしれない。
が、「支配政党」になったときから「共産党官僚の党」になったのである。
だから、すべてが党官僚(役人)のために働くシステムとして機能していく。そこでは、人民の涙や血が、いくら流されようとも関係がないのだ。
結論:
中国の際限のない腐敗・堕落は、中国共産体制が崩壊するまで続く!
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↑中共体制は、どうしようもない
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参考資料:第75回 これが中国の政治システムだ!
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コメント
「絶対権力は絶対腐敗する」という警句がありますが、まるで20世紀の社会主義国、特に中国や北朝鮮を見て作ったかのようです。
歴史上、腐敗、権力の恣意的行使、富の偏在が最も顕著になるのは、マルクス主義と東洋的専制が合体した中国と北朝鮮ということになりそうです。これらの国の民でなくて本当によかったです。
投稿: おやじ | 2005/12/07 17:55
激しく同意です
しかし
>中国の際限のない腐敗・堕落は、中国共産体制が崩壊するまで続く!
↓
中国の際限のない腐敗・堕落は、中国共産体制が崩壊してもかなり長く(百年単位で)続く!
となるでしょうw
日本では封建時代といえども民の声を無視しては権力を維持できなかったのです
その伝統は古く、実態として地方の武装農民が創った鎌倉幕府がその発祥といえるでしょう
だからこそデモクラシーが日本だけに根付いたのではないでしょうか
まぁとにかく中国の民は哀れですがしょうがないですね
投稿: おい | 2005/12/07 18:45
私なぞ軍の乗用車でゴルフの送迎に使用しましたが、もちろんお金は払いました。
投稿: 匿名 | 2005/12/07 20:02
坂様
いつも貴重な記事、ありがとうございます。
やはり中国は普通の国ではないとしか思えません。
それにしても、こうした実情を伝えず中国政府に与するような日本の一部マスコミって何なんでしょうね。
投稿: Y.N | 2005/12/07 23:23
中国の際限のない腐敗・堕落は環境破壊に行った事は、対岸の火事見学とは行きません。今回の化学工場の爆破で起きたベンゼンの大量流出は明日、明後日にも日本海へ流れ込み何年その危険が消えるか不明です。こういう「先に金持ちになった者から主義」で反省とか後ろ向きの環境保護を無視する銭ゲバ専守本尊信仰程、周辺国にとってはた迷惑、恐怖のおすそ分けなど入りません。
反日教育で各地に蝋人形の日本兵士の残虐行為で爆撃で負傷して座り込んでいる老婆の写真に「日本軍は暴行して殺し、太ももの肉で餃子を作って食べた」と解説した抗日会館などを抗議もしないで放置してODA供与を続ける日本政府は日本人を搾取する吸血寄生虫です。こういう抗日会館へ世界から様様な人が訪問して無批判にそのまま誤解されて宣伝されてるのも日本国内には知らさせていない。又環境破壊で日本海側では黒い雪や雨の酸性雨被害が起きてても放置されてる状態はもう許されるものでは無い。中国の人口は世界の四分の一ですから、環境破壊の勢いも乗数的な被害になります。国連でも全くこういう地球環境破壊国を放置してるのですから:日本は国連分担金など払えない筈です。その費用を日本国内の被害を受けてる地域の環境保護に回して自衛する手段にして欲しい。
投稿: ようちゃん | 2005/12/07 23:43
近日一連の爆破事件からしてもただの災害ではないと思います。北京オリンピック開催後には中国のバブルが弾けます。中国の多くの民主活動家が脚光を浴びる日は近いと思います。
テレサ テンを初めとする、多くの犠牲者が報われるためにも.....日本人も立ちあがりましょう。
投稿: 毛 クタクタ゜ | 2005/12/08 06:17
私の会社は中国、広州から輸入をしています。出張でそこへ商談に行くと、黒い公用車が迎に来ます。高速道路などもフリーパスです。どうしてそうなのか聞いてみましたら、女性の責任者が市のお偉方の細君で、必要に応じて使っているそうです。公私混同は、ごく普通のことのようです。
日本でも企業のオーナーなどに、よくこういう人がいます。その広州のお偉方家族も人民のオーナー気分なんでしょうね。
投稿: ひげとの | 2005/12/08 08:44
ちょっと話がずれますが、他人を批判攻撃する時自分の過ちは全て棚の上に上がってしまう、という性質が彼らには有るようです。実際のところ日本人は中国人と比べたらまだまだ良心的な性格を維持してますね。私の会った中国人の多くがそう指摘していましたよ。こういう連中が一党独裁をやってるんです。自ずと先は見えてますね。
中共が靖国を問題にするのは勝手ですが、いずれチベットや東トルキスタンなどが独立した時に、連中は彼らにどのように謝罪や賠償をするつもりなのか、とことん問いつめてやりたいですね。
投稿: duzhe | 2005/12/08 09:10
【新聞もテレビも真実を伝えない時代に生きるために】
中国メディアは「中国公民侮辱事件」として報道。11月上旬、中国人女性がクアラルンプール近郊の警察署で全裸にされ、現金を奪われた事件や、不法滞在でペナン州入管当局に収監された32人の中国人女性が犬やカエルの鳴きまねを強要された事件も伝えた。中国外務省は11月30日、武大偉次官が駐北京マレーシア大使を呼び、抗議した。マレーシア政府は2日、独立調査委員会を設置し、アズミ内相の中国への派遣を決めた。。。 http://xthost.info/hosino/index.htm
投稿: ikari | 2005/12/08 12:47
皆さん、こんにちわ。
コメントありがとうございます。
いくつか公私混同の例をカキコいただきましたが、至るところに書ききれないくらいあるのでしょうね。
「絶対権力は絶対腐敗する」「マルクス主義と東洋的専制が合体した中国と北朝鮮」
鋭いご指摘ですね。
マルクス主義の持つ唯我独尊性と東洋の歴史的専制支配体制が結合した、世界でも稀なファッショの国だと思います。
中・朝の2国。
投稿: 坂 眞 | 2005/12/08 16:05