貯蓄総額198兆円を分析する
中国人民銀行(中央銀行)によると、昨年末の中国国内の貯蓄総額が約198兆1千億円(14兆1千50億元)に達したことが分った。世界一の家計金融資産を誇る我が国の2003年度末の預貯金総額は739兆円。中国の国内総生産(GDP)が我が国の3分の1であることを勘案すれば、この198兆円という数字がいかに巨額であるかが解る。
中国の貿易黒字1019億ドル(約12兆円)、外貨準備高9130億ドル(約108兆円)、いずれも世界一である。これらは、貯蓄総額と併せて、急速な経済発展による富の拡大を
象徴している。
ところで、不完全就労者が3億5千万人にのぼり、1日の収入が1ドル未満の貧困人口も1億7千3百万人いる(アジア開発銀行報告)国で、なぜ貯蓄総額が約198兆1千億円もあるのか?
それは、社会保障制度がまったく整備されていないからである。安心な日常生活を送る上で不可欠な医療保険さえ、未加入者が全体の約66%もいる。おまけに医療費や
薬価はべらぼうに高い。
高い貯蓄率は投資資金の不足を補う重要な原資となり、中国経済の高成長を支えた。増え続ける預貯金が資金の流動性を保証し、銀行経営を安定させる原動力となった。
しかし、社会保障制度が未整備であるから預貯金が増える、預貯金が多いから投資が拡大し高成長が続く、という歪(ゆが)んだ構造はリスクも大きい。
4大国有銀行を中心とする中国の商業銀行は、まだ巨額の不良債権を抱えている。
保険業投資の失敗や逆ざやで生じた損失も巨額にのぼる。中共政府の発表でも、4大国有銀行の不良債権は、2005年10月末時点で10.18%(約1兆230億元=約14兆7700億円)もある。
コンプライアンス(法令遵守)も低く、中国銀行監督管理委員会の12月の調査では、
違法融資や使途不明金などの不正資金が、4大国有銀行の貸出残高合計の約6%
(約8兆5000億円)もあった。
もし、貯蓄率が低下すれば、このような脆弱な金融システムが大きく揺らぐ可能性が
ある。
国民の貯蓄性向が高く貯蓄残高が多いということは、裏返せば、国民の消費支出が
低いということである。消費支出が低いということは、輸出主導型の経済成長から抜け出せないということである。
中国の貿易総額は、GDP(国内総生産)の約70%を占めている。我が国は約10%であるから、いかに輸出依存度が高いかが分る。
輸出依存度の高い経済成長は、ますます貿易黒字を拡大させる。貿易黒字が拡大すれば、貿易摩擦はより深刻化する。
昨年の米国の対中貿易赤字は2000億ドル(約23兆7000億円)を超える見通しである(2005/11/14:ポートマン米通商代表)。今後とも、米国を始めとする外国からの人民元切り上げ圧力をかわし続けるのは容易ではない。
が、政府直属の社会科学院経済研究所は、5%の切り上げで失業者は最大で300万人以上、20%だと、1千万人以上が失業すると予測している。そして、「数百万人もの失業者増加。こんな政治リスクに耐えられる指導者がいるわけがない」(張曙光研究員)と・・・
つまり、膨大な額の国民貯蓄も貿易黒字も、両刃の剣なのである。巨額の外貨準備高も、元高を防ぐための為替介入の結果にすぎない。
確かに中国は成長している。国家の富も拡大している。しかし、政治・経済・社会の
全般における歪(いびつ)な構造が、成長すればするほど体制の矛盾を深化させる。
そして、一つの矛盾が他の矛盾と密接にリンクしているので、どれかを解決しようとすると他の問題が火を噴く。火を噴くのを押さえ込もうとすると、別の矛盾が噴出する。
今の中国は、讀賣新聞が書いているように「『出口の見えない混迷』に震えている」のだ!
参照:貯蓄総額が14兆元超 経済にマイナス影響も (フジサンケイ ビジネスアイ)
人気ブログランキング
↑中共体制は崩壊する
と思う方はクリックをお願いします。
にほんブログ村
↑よろしければ、ココもクリック願います。
| 固定リンク
「中国崩壊シリーズ」カテゴリの記事
- 人民元の表はヒトラーのような人物(2016.05.22)
- 中国は何処に(2016.05.12)
- アンドリュー王子の態度がすべてを語っている(2015.10.24)
- 朝鮮日報:中国=胸の筋肉はすごいが脳みそが足りない国
乗用車の運転免許証でジャンボ飛行機を操縦している国(2015.09.20) - 速報!元主席=江沢民 逮捕か!!!(2015.08.23)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
>中国国内の貯蓄総額
この内訳も問題です。中国の発表筋は、どういう金融商品を「貯蓄」と定義付けているのでしょう。一般の中国人は銀行券よりも金(Gold)を信用するので、金に絡んだ商品の比率が日本に比べてかなり大きいと思われます。中国人は金は安全、と信じて疑いませんが、いざというとき国民が一気に換銀したら、人民元はどういうことになるのでしょう...
さらに、通貨供給量も大きな問題です。年に9%を超す経済成長をしていながら(つまり市場に出回っているお金が多く、循環も活発)、これほど短期に国民の総貯蓄がたまるというのが本当なら、どう考えても発行されている通貨が多すぎるということでしょう。つまり、市場で深刻なインフレが起きたとき、資産のデフレが同時進行で起きるということです。
最後にもうひとつ。人民元の切り上げをにらんだ投機筋の見せかけの貯蓄は差し引いてあるんでしょうか?これが意外に膨大だという話はよく聞きますし、実際そうでしょう。
ああ、恐ろしや...中国の経済指標の発表はいつも...
(1)バラ色のでっち上げ
(2)表面バラ色、中身真っ黒
のどちらかですね。さあ、日本企業はいつまで中国のバラ色に付き合えるでしょう。
投稿: 未定 | 2006/01/17 20:21
いつか銀行破綻による取り付け騒ぎが発生したら、預金引き出しに殺到する民衆、鎮圧に出る武装警察が、実弾発砲で蹴散らす。
そういった、中華式の伝統文化ショーが見られるかもしれませんねぇ。
見たくないけどドキドキしますわ。
投稿: 岩手の田舎人 | 2006/01/18 00:05
内容はどうであれなんで198兆円の貯蓄がある国にあと3年間も日本の懐から援助金を恵んでやらなければいけないんでしょうか?誰か教えて!
投稿: 松井康明(豚) | 2006/01/18 03:08
最近の製品は、衣服から電化製品までどれ見ても Made In China と書いてある。海外から企業が、膨大な安い労動力(不動産)を目当てに次々とやって来て、世界の生産基地になっている、羨ましき現状。
しかし、エネルギー(電力・原油)不足や環境破壊が生産の足を止め、中国元の切上げが、安い製品の競争力を失わせる。元の切上げは、多額の不良債権を抱える銀行の一番の倒産原因になり、外国資本や企業は撤収し失業者が大量に発生する。最後の防衛線となる国内企業が持つべき技術力・特許は無く、すべて海外企業の物。暗黒の未来が待ち受ける。人々の怒りは何処へ向かうのか大変興味があります。中共打倒!
投稿: NZ life | 2006/01/18 06:48
>中国の貿易総額は、GDP(国内総生産)の約70%を占めている。
70%は何かの間違いではないですか、いくらなんでも。たしか、30%ぐらいではなかったかと。
投稿: naka | 2006/01/18 10:24
皆さんこんにちわ。
コメントありがとうございます。
2004年の中国の貿易総額は1兆1,547億4,000万ドル。
GDPは1兆6,961億ドル(13兆6875億元)。
約68%です。
2005年はさらに上回っており、確実に70%を超えていると思いますよ。
2004年については、ネットで調べれば簡単に分かります。
なお、私は記事を書く上で、正確を期するため複数のソースにあたります。
投稿: 坂 眞 | 2006/01/18 13:09
>正確を期するため複数のソースにあたります。
なるほど! 朝日はソースがなくても記事書くのに。
投稿: 未定 | 2006/01/18 19:26