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2006/01/26

危機感を深める中共当局

われわれは歴史的な過ちを犯すことはできない

中共当局が危機感を深めている。
上記の言葉は、昨年末に、温家宝首相が中央農村工作会議で述べた言葉である。
中央政府のトップが、「歴史的な過ちを犯すことはできない」などと発言するとは、中国内部で、容易ならざる事態が進行しているということだ。


【香港=吉田健一】香港紙「太陽報」などが21日報じたところによると、中国・広東省トップの張徳江・共産党省委員会書記は19日、党や政府の当局者が土地収用など不動産開発に関与することを禁止し、違反した場合はただちに免職する方針を示した。

広東では現在、土地収用をめぐる当局と住民のトラブルが続発している。住民の間では、補償金の着服など、当局者の腐敗に対する不満が渦巻いている。

今月14日には同省中山市で、土地収用に抗議する農民と警察とが衝突する事件が
起きている。

当局者の不動産開発に厳罰、中国・広東省高官が方針
(2006年1月21日 読売新聞)

昨年、中国で起こった暴動や騒乱は8万7千件にのぼる(中国公安省)。発生件数は、2004年に比べて6.6%増と確実に増えている。当局の土地収用に反対する農民の抗議行動が主で、毎日238件起きていることになる。

冒頭の記事にある、広東省中山市三角鎮で14日に起きた農民と警官隊との衝突では、警官2人と農民3人が負傷している(新華社電)。
しかし、これはあくまでも当局発表であり、AFP通信は農民の話として、警官隊が電気警棒や催涙弾、放水で2万人の農民らを制圧、数十人の負傷者が出たほか、13歳の
少女1人が死亡したと伝えている。
党中央の政治局員も兼ねる張徳江・共産党省委員会書記が、「党や政府の当局者が土地収用など不動産開発に関与することを禁止し、違反した場合はただちに免職する方針を示した」のは当たり前であるが、遅きに失したと言わざるをえない。

広東省は、上海と並ぶ「珠江デルタ経済圏」を抱える。中国経済の発展と繁栄を象徴する一方の雄である。その広東省で、2万人規模の暴動が起こる。
深刻な格差は、沿海部と内陸部だけではなく、高度に発展したと思われている沿海部の先進地域内にも存在するということだ。
張書記は、昨年の10月に「広東省は中国の経済改革の先駆的存在であり、急激な
経済成長などの奇跡を達成したと思われているが、実際の広東省の運営は綱渡りの状態だ」と述べている。そして「広東省では表面に表れてこない問題や危険性が山積している」とし、具体的な問題点として「急激な経済開発に伴い、耕作可能な土地が減少し、水質や大気の汚染が極度に悪化。飲食物の安全を確保できない状態だ」と悲鳴にも近い危機感を表明している。
「広州を中心とした珠江デルタ経済圏は経済的に繁栄しているが、
省北部は厳しい貧困状態に陥っており、まったくの未開発
だ」との
実態も明らかにしている。

このような事態に危機感を抱いているのは地方政府だけではない。中央政府の温家宝首相も、昨年末に開催された中央農村工作会議で、「ある地域では適正な補償もなしに農地を不法に収用した結果、暴動を引き起こしている。これは農村ばかりでなく、
中国全体の不安定要素でもある」と述べたうえで、われわれは歴史的な過ちを犯すことはできないと指摘(新華社電)している。
つまり、中共トップも、農村と農民の中に渦巻く中共当局に対する恨みにも似た不満が、中共体制の屋台骨を揺るがしかねないという懸念を抱いているのである。

温首相は、同会議で「農民の民主的権利を守り、物質的な利益をも与えなければならない」としたうえで、「農村の生活の質を高め、公正さと正義を保証することこそが、極めて重要なことであり、緊急の責務だ」と強調した(新華社電)というが、もう手遅れである。
農民からタダ同然で取りあげた土地を開発業者に売り渡し私腹を肥やす。これは、腐敗官僚個々の問題ではない。行政、共産党、警察、検察、裁判所、人民代表者会議(議会)という、およそ統治に関わる権力機構のすべてが不正な利権に絡んでいる。
つまり、不正な利権構造は、中国共産党及び共産党が支配する統治機構の本質的な問題なのである。

過去のエントリーでも書いたが、中国では行政、立法、司法、軍事のすべてが、形式上はともかく、実際上は国家・国民によってではなく共産党によって支配されている。中国人民解放軍も「国家の軍」ではなく「党の軍」である。
これが、党幹部は言うに及ばず、一般の役人から警察官、果ては検察官や裁判官に
まで至る腐敗の元凶なのである。

根本的なねじれは、「共産党は人民の党であり、人民のためにある」という幻想がとっくの昔に崩壊したのに、未だにその虚構を拠りどころにして人民を支配している中国共産体制に起因する。
共産党が「革命の党」であったときは、まだ「人民の党」であったかもしれない。
が、「支配政党」になったときから「共産党官僚の党」になったのである。
だから、すべてが党官僚(役人)のために働くシステムとして機能していく。そこでは、人民の涙や血が、いくら流されようとも関係がないのだ。

不正な利権構造を暴き、切開手術を施せば、中国共産党が崩壊する。

経済も高度成長だが、暴動・騒乱も高度成長

水や大気の汚染が極度に悪化。飲食物の安全すら確保できない

中国の『夢物語』の結末はどうなる???

参照:農民暴動、昨年は6%増8万7000件 (2006/01/24 フジサンケイ ビジネスアイ)

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コメント

坂さん、指摘有難う御座います。水前寺清子でしたか(笑

>毎日238件起きている
唯、笑ってしまいました。
>「われわれは歴史的な過ちを犯すことはできない」
中共の存在自体が歴史的な過ちだと切り替えしてやりたい。

投稿: NZ life | 2006/01/26 14:23

>歴史教科書批判が原因か…中国人気紙が停刊処分
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20060125i316.htm
中共独裁政権は、首相の靖国参拝などで日本には歴史問題を直視しろ!と繰り返し恫喝するが、自国民が自国の歴史を直視するよう問題提起すると、即、抹殺ですかね・・・・

投稿: 疑問符 | 2006/01/26 14:49

中国が「自らの意にそぐう意見しか認めない」国家である事はとっくに分かっていますが、未だそれを認めない脳軟化症な「知識人」なる方々が我が国に巣くっておる訳で。こういう連中を早く排斥する事が日本国民の急務である様に感じる今日この頃です。

投稿: TM | 2006/01/26 16:13

最近よく思うのですが、日本は中国が破壊しない限り中国より有利になる(または対等になる)ことはないのではないかと。悲しいことに私達の世界は人権や正義より利益が優先されています。それは中国で人権侵害、チベット問題などがあっても世界中の大企業がどんどん進出しているのを見ればわかると思います。それから外交面では日本は中国の足元にも及んでいません。日本は国連分担金を20%も負担しても支持はされず、中国は日本が援助した莫大な金を他国に使ってその国を反日にさせている。日本は私達の血税をばら撒いているだけで、どう考えてもまともな外交はしていませんね。ただし、私はこれからの日本に期待する気持ちは捨ててはいませんが、まともな外交ができるのはまだまだ先の話でしょう。

投稿: 冒険ダン吉 | 2006/01/26 18:42

歴史は繰り返しそうですね・・・
官僚の汚職と農民の蜂起・・・
   
永遠とこれを繰り返していくのでしょうか・・・

いい迷惑ですが・・・

投稿: hide | 2006/01/26 18:59

↓ほんとに「全く事実無根」なのか?二階よ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060126-00000166-kyodo-pol
ほんとうでも違和感無い記事だが、本当なら二度と出てくるな!!公金をなんだと思ってるんだ。

投稿: 岩手の田舎人 | 2006/01/26 23:31

皆さん、こんにちわ。
コメントありがとうございます。

>中共の存在自体が歴史的な過ち

鋭く、そして笑えるご指摘です。

二階俊博経済産業相、可能性大ですね。
何といっても、江沢民の詩を刻んだ石碑を日本全国に建てようとした政治家です。
対中利権政治家。
小泉内閣で、もっとも危惧している人物です。

投稿: 坂 眞 | 2006/01/27 12:10

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受信: 2006/01/27 16:08

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