浮利を追わず
私は、このブログを立ち上げて間もなく、「M&A」というエントリーで堀江流のビジネスに言及したことがある。
↓
(前略)
まず、堀江貴文という男、まだ32歳だが、なかなかのモンだ。その発想と行動力。
もちろん批判はある。
「ライブドアは、わずか一年のあいだに、1株を1万株に分割するような極端な『虚業操作』を行い、『虚像資産』を確保することで肥大した」
あるいは
「『時間外取引』という、別の目的で許容されていた株式取得の方法を通じて、ニッポン放送の30%に当たる株式を一日で取得した。このようなやり方は、法の隙間を突いた
手法とも云え本来の趣旨に反する」
等である。
いわゆる「道義に反する」「商業倫理に反する」という類の批判だ。
しかし、商売の道義や倫理に普遍性はない。時代や地域によって大きく違う。
むしろ、グローバルスタンダードからすれば、ライブドアの行動は当たり前のことであり、
ニッポン放送のフジテレビに対する新株予約権発行の方が異常と映ったのではないか。
取締役が株主を選ぶのではなく、株主が取締役を選ぶのだ、という株式会社制度の
当り前のことを無視したやり方が認められるはずもない。
それに比べれば、ライブドアの行為は、あくまでも東証の市場内取引であり、非難される筋合いのものではない。
要は、堀江氏のやったことは、、ほかの人間が思いつかなかった、あるいは、思いついても現実的な手段として考えられなかった、ということだろう。
(以下略)
読めばお分かりであろうが、全面的な『堀江擁護論』である。
私は、今でもこの考えは変わらない。日本的な馴れ合い、もたれ合い、責任のあいまいさ、これらが『失われた10年』『ジャパン・ナッシング』をもたらしたと痛感しているからである。
我が国の『失われた10年』の間に、世界は大きく変化した。グローバリゼーションが
進行する中で、世界的規模で競争が激化し、優勝劣敗の『市場主義』が世界を支配
するようになった。
これに対して、海外型(international)企業は速やかに対応したのだが、国内型(domestic)の産業は相変わらずぬるま湯的な体質から抜けきれないでいた。
ライブドアがニッポン放送の株を買い占めたころの、日米企業の同業種トップクラスの
株式時価総額の差は約10倍にものぼっていた。商法が改正され、外資による株式交換方式での買収が解禁されれば、国内型(domestic)の産業は「ひとたまりもない」というのが現実だった。
だから、警鐘を鳴らす意味でも、堀江氏の行動を支持したのである。
私が、小泉改革を支持するのも同じ理由である。『市場主義』が正しいとか間違っているとか言っても仕方がない。世界の流れがそうであれば、それに対応できるように我が国を改造するしかない。
小泉内閣が掲げる構造改革は、国際的に開かれた経済社会、自己責任原則と市場
原理に立つ自由で公正な経済社会への変革である。行政の役割を、事前規制型から事後チェック型に転換させる。規制緩和を推進し、競争政策を積極的に展開する。
ただ、この『市場主義』が正しく機能するには、『公平・公正』が大前提になる。行政に
よる差別(補助・保護)や企業による不正(粉飾・虚偽)が横行すれば、市場は機能しない。
事後チェック型行政に移行すれば、当然ながら新たなルールが必要になる。自己責任原則を確立するには、厳格な情報公開と消費者保護のためのシステムづくりが欠かせない。
ライブドアと堀江氏がやったことが報道どおりであるとすれば、新たなルールや自己責任原則を確立するためのシステムが、まだ不十分であることの間隙を突いたということだ。そして、やることなすことのすべてがうまく行ったので、歯止めが効かなくなり、旧来のルールからも逸脱した。
これは、自らレッドカードを突きつけたに等しい。速やかに市場から退場してもらわなければならない。
金儲けがすべて、金儲けのためには何をしてもよい、というのであれば、ヒューザーの小嶋社長と同列である。
ただ、堀江氏は容疑を否認しているし、検察の手法もかなり強引なところがある。最終的判断は、もう少し事態が進展してからにしたい。
ただ、これだけは言える。マネーゲームで巨利を得るという発想・行動は、人間社会を滅ぼすことになる。ものの価値や利益は、すべて額に汗して働くことから始まるという
ことを忘れてはならないということだ。
日本社会は、1970年代、田中角栄氏の『列島改造論』に湧いたころから、楽をして儲けることがカッコよくて、額に汗して働くことはダサイという風潮に染まってきた。それが
ピークに達したのが80年代の『バブル』である。
この時も『持てる者』と『持たざる者』の資産格差の大きさが社会的問題になった。しかし、『持てる者』も、結局、バブル崩壊で泣いた。私もその一人である(笑)
にもかかわらず、人間というのは、喉もとすぎれば熱さを忘れる。また『ミニバブル』と
いう言葉を耳にするようになった。『勝ち組』と『負け組』という二極化が現れ始めた。
が、『優勝劣敗』は『弱肉強食』とは違う。敗者は復活の機会を与えられなければならないし、まじめに働き、日々努力を惜しまない者が泣くようなことがあってはならない。ましてや、不正を働いた者が勝者になってはならない。
検察の狙いは、事後チェック型行政への移行に便乗して、「バレなければ何をやってもいい、儲けた者の勝ち」という風潮に冷水を浴びせることだという。
『偽装マンション事件』といい、今回の『ライブドア事件』といい・・・自助努力、勤勉、
高いモラル、『世界の奇跡』と言われた戦後の復興を支えた日本人はどこに行った。
※堀江氏は、まだ容疑者の段階なので『氏』を付けました。
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【追記】
「竹中平蔵総務相は過去5年間、小泉内閣で経済運営と金融行政の中心にいた。その人が深く付き合っていた堀江容疑者が逮捕されたことのもつ意味は大きい」
加藤紘一元幹事長の発言である。
加藤氏は、堀江氏を応援した竹中氏をヤリ玉に挙げながら、暗に小泉改革を批判している。が、その目線の先にあるのは、今秋行われる自民党総裁選である。
発言の真意は、竹中氏と足並みを揃え、小泉内閣の改革路線を踏襲するという安倍晋三氏への牽制である。
政治を愚弄する政治家・加藤紘一は退場せよ!
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コメント
最後の「追記」に全面賛成です。アカの手先はさっさと出て行け!
投稿: TM | 2006/01/25 13:22
TBありがとうございました。
まったく同意ですが、選挙のとき自民党が堀江氏を間接的に応援したからといって、何らかの責任を負うべきなのでしょうか?
しかも、無所属で立候補してますし。
当時は不正は明らかでなかったわけですし、批判にあたるのかな、と思いますけど。
加藤さんはまさに総裁選を意識してますね。
あからさまに過ぎるとおもうなあ。
(中国寄りですから、今はまずい)
投稿: hide | 2006/01/25 13:28
昔、うちの母が「ボロは着てても心は錦(by ヒバリ)、貧しくても心だけは貧しくなるな。汗水たらして稼いだ10万円は、楽して稼いだお金より重いんだから」と言っていたのを思い出しました。
今考えると、戦後の何も無い時代に育った世代だから言える言葉だとしみじみ思うし、「アリ」と世界から笑われる典型的日本人なのでしょうね。でもこういった世代が、日本を世界屈指の経済大国にしたのは事実。現在は時代の流れも早く、グローバル化と呼ばれる時代ですが、日本人の根っこの部分だけは忘れたくないです。
そして、どんなに時代が変化しても、日本人の良い意味での愛国心(誇り)と本来持つモラルだけは失いたくないです。
主君を裏切る売国野郎は黙って去れ。
投稿: NZ life | 2006/01/25 14:22
今日本の経常収支のなかで所得収支の黒字がかなりの割合を占めております。それは外国への投資が利益となって返ってきているからです。他国の開かれた市場に投資して利益を得ているのに、外資が国内企業に投資したり買収すると「ハゲタカ」と罵る今の風潮はおかしいのではないでしょうか。ルールを逸脱したのならば摘発されるべきですが、それをもって規制緩和を悪であるかのようにいうのは、ただただ党利党略でしかないと思います。
資本が資本が呼ぶのは資本主義であれば当たり前のこと。この事件を持って株式市場が冷え込むようなイメージ操作をマスコミが行うのは許せないし、あまりに時代遅れな感覚です。
それと構造計算偽造が国のチェック体制の不備のためであるとするならば、この事件も証券監視システム、監査システムの不備があったため起きたと言えるでしょう。分割がされた当時に摘発されていれば被害者はもっと少なかったでしょうから。そういう方向で政府批判がなされるべきです。
投稿: hana | 2006/01/25 15:25
トラックバックさせていただきました。
おなじ10万でも思い出に残るのは、バイトで苦労して手に入れた、学生時代の10万円です。ホリエモンのインパクトはいい面も悪い面もありました。調子に乗りすぎた時代の寵児ですね。多くの方々が株の怖さを学んだと思いますし学んでほしいです。個人的には、ホリエモンは乗ってやろうと思える勝ち馬でありませんでした。馬の性格がつかめなかったからです。
本日はやっとライブドア株がやっと寄りました。また、壮大なマネーゲームが始まった模様です。
投稿: 榊雲水 | 2006/01/25 15:35
加藤紘一は自らの政治資金問題で
議員を辞職し、小泉人気に便乗して
やっと議員に復活できたことを忘れたのだろうか?
その加藤紘一が”金万能主義はおかしい”などと
ほざいているのはチャンチャラおかしい。
投稿: yuki | 2006/01/25 16:26
坂様、はじめまして。日頃更新お疲れ様です。
加藤紘一ですが、もう完全に野党体質になっていますね。
しかも民主党の尻馬にのっかているようでなんだか情けなく思います。
投稿: エッグマン | 2006/01/25 18:09
一瞬にして消失してしまった時価総額数千億円。ライブドア株価の行方も気になりますね。
浮利を追って、明日あたり買ってみようかな?(笑 まあ、バクチ相場ですから長居は不可でしょう。
やるには、12.75%もの株式が今後どう処分されるのか気になるところ。
↓フジテレビ、ライブドア株の売却制限契約が失効
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20060124AT1D2409824012006.html
さて、ホリエモンらがどんな悪いことして何の罪に問われるのか?有罪になるのか?
そんな観点でのおさらいにはこちらがいいかと。
http://www3.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=329372&log=20060124
投稿: 岩手の田舎人 | 2006/01/25 18:29
面白いブログを発見しました。
『 三 井 財 閥 武 勇 伝 ! 』
http://mcs.mitsukoshi.co.jp/weblog/myblog/790
三井財閥の歴史と真実がわかる画期的ブログです。
投稿: 財閥研究クラブ | 2006/01/25 19:09
岩手の田舎人さん
>浮利を追って、明日あたり買ってみようかな?
まだ早いんじゃないですか。ライブドアの連結決算で、自己資本がだいたい2000億円ですから、時価総額が2000億円に近づいたら、まあ極端な粉飾はないと考えて買ってもいいかも。ロクに事業をやってないぶん、つぶれる会社じゃないですから。
今後は、国税の追及やら、株主代表訴訟やらで、どう掘江一派の個人財産(隠してるのを含めて)をとりあげるかでしょうねえ。
さて、坂眞さんのおっしゃる事はわかります。こんな堀江みたいな奴はいつの時代でもいますよ。大事なのは、こんな奴が大儲けできない仕組みを作ること、それから、少なくとも賛美しない事。東証始めとする、財界や金融関係の官庁が、全くのアマちゃんで無能ということが、今回の事で露呈されました。しっかりしろよ。(まあ、マスコミのバカぶりはもうあきらめているので何も言いません)
投稿: 三等水兵 | 2006/01/25 22:29
何時の時代も、お金と言う物が出来てから金銭欲ある人達は出てきます。これは人間エゴに近いと思いますが!時代と共にルールが変わります!堀江さんは、現時点の法令すれすれ事をやったことは確かですが、本文に書いて有るように、株の先進国のように厳しルールが出来ているのに国の怠慢なのに責任転嫁していると思います。しかし、マスコミは
見せしめ的存在に成っている!マスコミのいい加減さ、呆れます!!まだまだ先進国になれませんね!!もっと国民も勉強し強い日本成ってほしいです!!
投稿: ZIN | 2006/01/25 23:07
>三等水兵 さん
今日の終値、137円で時価総額=143,771百万円のようです。5000億円以上目減りしたようですね。
今日の出来高4.2億株で、約定平均は150円くらい。この辺でまたみなさん捕まってしまったようです。(笑
http://quote.yahoo.co.jp/q?s=4753.t&d=c&k=c3&a=v&p=m25,m75,s&t=3m&l=off&z=m&q=c&h=on
上場子会社の資産価値(株価)も落ちています。損した方や今日捕まった方には悪いですが100円あたりなら人気出るかも。ってことで、狙いは除夜の鐘と同じ、人間の煩悩の数といわれる108円あたり希望ってことで・・・。(笑
投稿: 岩手の田舎人 | 2006/01/25 23:19
人間的魅力という観点で見た場合、ホリエモンは可成り
問題がある人物だなと思いますね。拝金主義の極みで
法律違反スレスレの事をやりまくり、周囲を敵に回した。
遂に道を踏み外して司直の手に落ちたと言う事です。
今の金融行政や金融業界体質が良いとは
言いませんが、金さえあれば何でも出来るという
低俗な風潮は改めなければいけない。金持っている
人間ほど社会的責任は重くなるものだからです。
金融一つとっても改善すべき点は山ほど有りそう
ですね。ホリエモンをスケープゴートにしては
なりませんな。
投稿: abusan | 2006/01/26 09:24
追記
市場主義も一歩間違えれば「負け組」の暴力を
招きかねず、それこそテロリストの餌食になるで
あろうと。欧米に盲従するのでは無く、寧ろ、
欧米流市場主義を改善する位の気概が必要ですな。
投稿: abusan | 2006/01/26 09:28
皆さん、こんにちわ。
コメントありがとうございます。
やはり、皆さんも余り「ホリエモン」が好きではないようで(笑)
カネが価値の基準になる、という考え方は、『草の根保守』に嫌われて当然。
ただ、彼をさんざん持ち上げてきたマスメディアが、今度はバッシング。
メディアのオツムを疑いますね。
民主党もそう。
最初に誘いをかけたのは民主党だったはず!
NZ lifeさん。
「ボロは着てても心は錦」はヒバリではなく、水前寺清子だと思いますが(笑)
投稿: 坂 眞 | 2006/01/26 11:56
坂様
当初私も日本のマスコミのひどさにホリエモン擁護でありましたが、
読み応えのある。ブログを発見しました。
中共問題の合間に是非、目をお通しください。
昨年のまとめたブログのようですが、会計のプロが見たライブドアの分析が書かれております。なんとライブドアは光通信ともつながりが…。リンクしておきます。
http://blog.goo.ne.jp/yamane_osamu/
これは凄い読み物でございます。
投稿: さいなび管理人 | 2006/01/26 20:10