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2006/02/20

矛盾の深化に言論弾圧で対抗する中共


事実をありのままに伝えただけで処罰される。そんな不条理がいつまで続くのだろうか。

中国で言論統制の動きが、またも強まっている。

昨年暮れ、独自報道が持ち味の日刊紙「新京報」の編集長が突然、更迭された。土地収用を巡る騒乱事件のスクープといった「大胆な報道」が、更迭につながった。

先月には有力紙「中国青年報」の付属週刊紙「氷点週刊」が停刊処分を受け、編集長も更迭された。中国の歴史教科書は事実を記していない。日本批判だけでなく自国の教科書も見直すべきだ――。そう主張した論文の掲載が、処分の主因と伝えられている。

中国のメディア界はいま変動のさなかにある。従来、中国では共産党系の出版物が、報道の中核を担ってきた。だが、市場経済の浸透によって多様化が進み、新聞・雑誌は1万種を超えた。部数拡大を狙って独自色も強めつつある。

メディア管理は、共産党政権にとって独裁体制維持の要だ。新潮流の先頭走者でもある「新京報」と「氷点週刊」を摘発して緩み始めた統制を締めなおす。それが当局の狙いだろう。

胡錦濤政権は国民重視を意味する「親民政治」を掲げて発足した。当初は、言論自由化への取り組みが始まるとの期待もあったが、統制は強まるばかりだ。

昨年には、党の方針と相容(い)れない言論や思想を封じ込める規則や規定を乱発した。インターネットでの情報流通を厳格な管理下に置く新たな法規も定めた。

胡錦濤政権を統制強化へと駆り立てているのは、全土で続発する騒乱事件や重大事故で揺らぐ体制への危機感だ。化学工場爆発による昨年末の松花江汚染問題は、国民の命さえ軽視する中国の情報隠しの実態をさらけ出した。

統制強化と情報隠しは表裏の関係にある。情報の隠蔽(いんぺい)は、中国の国際的な信用を失墜させた。同時に国民の政権不信にも拍車をかけている。
(以下略)

[中国]「言論統制に『綻び』が見える」
(2005年2月19日 讀賣新聞【社説】)

上記の記事にもあるように、胡錦濤政権は国民重視を意味する「親民政治」を掲げて
スタートした。これは、経済成長一辺倒で、地域間及び階層間の経済格差を極端に
拡大させた江沢民の政治に対する反省だった。
このような背景の下に発足した胡錦濤政権には、当然のことながら言論自由化への
期待もあった。ところが、事態は逆方向に推移している。

2004年9月の第16期4中全会で、胡錦涛政権は、和諧(わかい)社会という新しいスローガンを打ち出した。「和諧」とは「調和がとれている」という意味である。
和諧社会は、都市と農村の発展の調和、地域の発展の調和、経済と社会の発展の
調和、人と自然の調和ある発展、国内発展と対外開放の調和を目的とする。
この和諧社会をめざすことによって、全面的に小康社会(いくらかゆとりのある社会)が建設され、中国はより安定的に発展を続けることができる。
これが、胡錦涛政権のめざすところであった。

今の中国には、都市と農村の極端な経済格差、拡大する一方の階層間の貧富の差、近い将来、人が住めなくなるとまで言われる環境破壊、検察官や裁判官ですらカネ
次第と言われる統治機構の腐敗・堕落、ひっ迫する資源・エネルギー事情など、絶望的なまでの難題が山積している。
2005年3月、第10期全人代第3回会議で温家宝首相は、これらの問題に対して、中国政府は一連の措置を講じて、民主的な法による統治、公平と正義、誠実と友愛、満ち溢れた活力、安定した秩序、人と自然の和睦などで互いに対処できる調和の取れた社会の建設に力を入れる」とし、「社会主義調和社会の構築」の実現に努力すると宣言した。
要するに、胡錦涛政権が2004年の第16期4中全会で打ち出した「和諧社会」構築の
再確認である。

ところがである。「民主的な法による統治」「公平と正義」などと、いくら声を大にして叫んでも、現実には「非民主的な、法に違反した統治」「不公平と不正義」がますます横行している。
なぜか!!!
昨年の11月、突然発行停止となった「深圳法制報」の元記者・何清漣氏(49歳)は、
讀賣新聞のインタビューに答える中で、 「胡錦涛政権は、問題を根本的に解決できないと悟った。指導部は、民衆を愛しているという演出と、党への脅威と感じる批判や行動を抑圧することだけに専念している」と断じている。

つまり、胡錦涛政権に「問題解決意識」はあっても、現実の矛盾は、その意識をはるかに超えたレベルにあるということだ。
「どんな手を打っても無駄」というより、「どんな手を打てばよいのかさえ分らない」というのが現実なのだ。
讀賣新聞の藤野彰中国総局長の言う、中国が直面している『出口の見えない混迷』が、これなのである。

「民主的な法による統治」「公平と正義」を実現しなければ体制が持たない。が、事態は逆へ逆へと動いていく。権力による不法行為がまかり通り、不公平と不正義がますますひどくなる。
これに対して、農民や民衆の抗議のための騒乱事件が頻発する。新聞を中心とする
メディアも政権に対する批判を強め始めた。もう建前にかまっている余裕はない。とにかく騒乱を強権を用いてでも鎮圧し、言論は問答無用と弾圧する。それによって、とりあえず時間を稼ぐ。
胡錦涛政権の実態は、およそそんなところであろう。

しかし、農民や民衆の暴動・騒乱が一向に収まる気配を見せないのと歩調を合わせるように、メディアも抵抗を始めた。

中国当局から更迭処分を受けた中国青年報の付属週刊紙「氷点週刊」の李大同・前編集長(53)と盧躍鋼・前副編集長は、18日までに、処分について「言論の自由の抑圧」とする抗議声明を海外のウェブサイトやメールを通じて公表した。
声明は、中国の歴史教科書を批判した論文を載せた「氷点週刊」を停刊処分とした
当局の対応を「職権乱用」とあらためて批判。当局が更迭理由に挙げた「外国メディアとの接触」について、「中国の法律のどこに外国メディアとの接触を禁止する条文があるのか」と強く非難している。
さらに李氏は、更迭処分は「党規約に反する」とした異議申立書も公開。異議申立書は胡錦濤国家主席、温家宝首相らに宛てており、「(メディア規制を担当する)共産党中央宣伝部の幹部は重大な憲法違反と党規約違反を犯した」などと指摘した。

学者や知識人も動き始めた。

中国青年報の付属週刊紙「氷点週刊」が、共産党中央宣伝部から停刊処分を受けたことについて、同紙に執筆経験のある北京大、清華大など国内の学者や知識人13人が17日、胡錦濤国家主席ら指導者に宛てた公開書簡をインターネット上に公表した。公開書簡で学者や知識人は、「言論や報道の自由をはく奪した。断固反対する」と党中央を非難。
これは、明らかに「氷点週刊」編集長を更迭された李大同氏を支援する動きである。
中国において、学者や知識人が党中央の決定に抗議の姿勢を明確に示すのは極めて異例の出来事である。

学者や知識人の公開書簡は、「氷点週刊」が掲載した歴史教科書に関する評論に対して、党中央が反対意見を示すことなく、強圧的に「(学者らが)見解を発表する機会を
奪ったことに断固反対する」と強調。
胡錦濤主席が以前、「憲法による監督制度」を重視する演説をしていたことを指摘し、
停刊処分は「言論、出版、集会、結社、デモなどの自由を認めた憲法に違反している」と批判。さらに「(違憲の事実は)容易にお分かりになると思いますが」との皮肉まで
交えている。

また、民主や法の支配の確立に向けた動きは「緩慢であっても正確でなくてはならない」と指摘し、胡錦濤指導部がスローガンとして掲げる「調和の取れた社会(和諧社会)」建設には、「異なる価値観を尊重する公正な制度が不可欠だ」と強調している。

出口の見えない混迷の中で、膨張中国はどこへ行く???

参照記事1:「言論の自由抑圧」と抗議 中国、更迭の前編集長ら (共同通信)
参照記事2:中国:「氷点」発行停止 処分を非難、学者らが公開書簡 (毎日新聞)
参照記事3:言論の自由奪ったと批判 中国、学者らが公開文書 (共同通信)
参照記事4:調和ある発展で小康社会を目指す
参照記事5:噴火口上の中国

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中国崩壊シリーズ」カテゴリの記事

コメント

>民主的な法による統治
そもそもこんな事を目標に掲げる国ってw
中国式民主独裁政治は、もっとも民主的な政治形態じゃなかったのか?ヲイ!

ところで毎日新聞の同日付社説ですが、
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20060220k0000m070110000c.html

言ってることは至極尤もだと思うのですが、中国の有する絶望的な言論弾圧体質と、米国のネット支配への危険性を並べて見せるのは問題のすり替えではないかと思いました。

投稿: 妄想は楽しい | 2006/02/20 12:25

一体中国がどのような国家像を目指し、国づくりを行ってるのか見当がつきませんが、少なくとも従来の先進諸国のような「工業先進国」を目指しているとすれば、それはちょっと中国には合わないんじゃないかな?と私は思います。培ってきた歴史、国土の環境、民族の性格が異なりますから。それよりもむしろ中国は、農業国家としての自国の長い歴史、及び広い国土を生かし、フランスのような農業生産国家を目指すべきだと思います。徹底的に農業を近代化し、安全で美味しい農産物を供給する。農業を国策にして国民雇用を創出し、欧米企業による自国民の奴隷化を防ぐ。農業を国家の基幹産業にすることで国土の荒廃化を防ぎ、同時に環境問題も解決する。食は人間の基本です。美味しくて安全な農産物を作る国が周辺国に尊敬されないわけがない。もし中国がアメリカに代わってアジアの食を引き受けるような国になれば、そのときはアジアの盟主として認めてもいいと思いますよ。(少なくとも私は)

長くなってスイマセン。しかも言論統制のコメントとは少々かけ離れてしまいました・・・・お許しを!

投稿: ミスターボールド | 2006/02/20 13:43

管理人様

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投稿: honey | 2006/02/20 16:00

 自国は中共独裁政権の言論弾圧。しかたがないから他国ではその国の“言論の自由”を逆手にとって言いたい放題。しかもどういう訳か中共の手先みたいな事ばかり言う。
 日本社会の持っている“自由”を評価する中国人は珍しくないけれども、日本人の方は中国に行っても自由にしゃべることも出来ないという現実をきちんと自覚して欲しい。そうすれば在日中国人が言うべき事は、過去の戦争がどうだとか、日本の右傾化がどうだとかいう事ではないことがよく理解できるはずだ。
 問題は“あなたの国”なんだよ、わかる?日本で他国のことをとやかく言う前に国へ帰って自分の国を変えてくれや。

投稿: duzhe | 2006/02/20 18:41

一度舐めてしまった”自由という名の蜜の味”はどんなに弾圧されようとも民衆の脳裏から消え去ることはないだろう。

そして言論統制や強権的弾圧は結果として中共そのものの崩壊を早める事になると思う。

今の胡錦涛政権がやっていることは中共の断末魔のあがきなのかもしれない。

投稿: yuki | 2006/02/20 19:38

やはりどう考えても中国はやばい
今の中国を支えているのは、低賃金の労働力だけである。

しかし、その低賃金が無くなれば中国の優位性はあっという間になくなり、しかし低賃金を放置すればますます国内格差が拡がり、
反抗の根が深くなる。

それを見据え、より強化する情報統制。
ソビエトのグラスノスチの反対をいく政策。
しかし、蓋をすればするほど、その反作用はでかくなるのではないでしょうか?

しかし、あほ極まりないプライドの高さはどこから来るのだろう?
共産主義の実験はもう終わったのに。

中国の共産主義上の市場経済などという訳の分からない実験の終焉も、やはりそう遠くはないでしょうね~。

まあ、私たちを巻き込まないでほしいものです。

投稿: Jaco | 2006/02/21 01:43

天安門で学生達を踏みしだいた時点でこの結末は予想がついた筈。
江沢民は結局そのプロセスを促進する役割しか果たさなかった。

内陸部で内戦が起これば外国に構ってる余裕もなくなるでしょ。

投稿: 煬帝 | 2006/02/21 04:30

坂さんは中国崩壊説ですが、そんなにヤワでしょうか。大躍進、文化革命では無慮数千万人が殺され、それでもびくともしなかった残酷な政権ですよ。
あの時分は中国は孤立していましたが、今は世界経済にしっかり組み込まれているという環境の変化は著しい。しかし、政権の性格は全く変わっていません。崩壊するとすれば、内戦にまで発展した場合でしょうが、それだって、自国民に原爆を落として解決することすらやりかねない。むしろ、破れかぶれで強盗を(つまり日本侵略)働く可能性があると思うのですが、どうでしょうか。杞憂ならいいんですけれどね。今後の日本は安全保障を最重点にしなければいけないのに、政治がまるで脳天気なのは情けない。

投稿: まつ | 2006/02/21 07:13

言論統制って事で只でさえ高い所謂チャイナリスクを
輪にかけて高めた中共政府の失政ここに極まれりって
所でしょうか。まともな企業は逃げていきますよ。
賄賂も決して安くはありませんし┐(´ー`)┌

内戦が起こらずとも相対的な「貧困感の高まり」は
確実な所でありましょう。こんな希望のない国が
発展する道理は無い。

投稿: abusan | 2006/02/21 08:21

皆さん、こんにちわ。
コメントありがとうございます。

>大躍進、文化革命では無慮数千万人が殺され、それでもびくともしなかった残酷な政権ですよ。

確かにそのとおりです。
自ら退場するようなことはない。
反乱を起こした農民や民主派を殺しまくるでしょう。
が、そのとき軍がどう動くかが最大の問題です。
下級兵士たちは農村出身者も多く、経済的にも恵まれていないと言われています。
この兵士たちが、共産党の思惑通り動くかどうかです。

投稿: 坂 眞 | 2006/02/21 12:27

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