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2006/07/31

アリラン祝祭を取りやめた北朝鮮

北朝鮮が、今月の中旬ごろに、集中豪雨による洪水に見舞われていることは、18日
あたりから韓国メディア経由で伝えられていた。
これに対し、21日の朝鮮中央通信が明らかにした被害内容は、「数百人規模が死亡、家屋数万棟が損壊を受け、道路、鉄道網が被害を受けた」という、かなりのものだった。
しかし被害の実態は、それをさらに上回るもののようだ。

昨日の聯合ニュースによると、北朝鮮は9月14日から10月中旬まで、平壌の綾羅島
5.1競技場で大マスゲームとアリラン公演(アリラン祝祭)を行う予定だったが、これの中止を決定したという。
ニューヨークの北朝鮮国連代表部から28日、在米韓国・朝鮮人団体に、「今年のアリラン祝祭計画は洪水被害のため中止し、2007年春の祝典から再度公演する計画」との連絡があった。

アリラン祝祭は、北朝鮮にとっては国威発揚の場であるとともに、貴重な外貨獲得源でもある。昨年のアリラン祝祭で、北朝鮮は約350万ドル(約4億250万円)の利益を得た。
偽ドルや覚醒剤、偽タバコなどが主たる「輸出品」である北朝鮮にとって、この外貨獲得源と金正日の威厳を誇示する場でもあるアリラン祝祭を中止することは、よほど甚大な被害を被ったとしか考えられない。

北朝鮮は、今でも世界食糧計画(WFP)や韓国、中国の食糧支援によって食いつないでいる国である。そこに、アリラン祝祭を中止せざるをえないほどの打撃が加われば、
この国は一体どうなるのであろうか?

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実は、北朝鮮は10年前(1996年)にも同様の被害を被っている。それまで自給自足を原則にしていた北朝鮮は、このとき初めて国際社会に食糧支援を要請した。
しかし、このときの支援は軍などが優先され、本当に支援が必要な住民には食料が
届かなかった。脱北者の多数の証言によれば、首都以外の地域では、翌97年ごろは道路にも餓死者の死体が大量に転がっていたとされる。

今回、WFPは、被災者への支援の準備があるとしている。が、被害の詳細な把握や、支援が本当に必要な住民に届くことの確認作業を、その前提条件としている。
つまり、軍などへの横流しを警戒しているのだ。しかし、WFPのスタッフは、北朝鮮当局により被災地の自由な視察を規制されたままだ。

今回の降雨量そのものは、10年前に比べればかなり少ない。
が、10年前の被害が完全復旧しておらず、当時より少ない降雨量でも大きな被害が
生じる可能性があるという。

最近、北朝鮮を訪問した韓国農村経済研究院の權泰進博士は、次のように語っている。
「当時の洪水で山から流れ落ちた土砂が川底にそのまま残っており、川の所々で土が積み重なり、排水が正常に行われていない」としたうえで、「北朝鮮の河川は川底が
高くて川幅が狭く、200ミリほどの集中豪雨でも大きな被害が予想される」と・・・

つまり、カネもないのに、ミサイルや核開発などの軍事力強化を優先する「先軍政治」のツケが回ってきたということだ。

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北朝鮮は、元々農業に適した土地が少ない代わりに、石炭や鉄などの鉱物資源に
恵まれていたため、我が国は南は農業中心、北は鉱工業中心の植民地政策を採っていた。そのせいもあって、1970年代前半までは北朝鮮の国力の方が韓国を上回っていた。
ところが金日成は、あくまでも南の武力解放にこだわリ軍事を優先した。そのため設備投資は後回しにされ、鉱工業の設備は老朽化したまま放置された。
その結果、品質が劣悪な石炭の供給や電力不足が慢性化し、生産資材も不足がちになった。それが鉱工業生産力の低迷と低下をもたらしたのである。

農業も、そのような鉱工業の不振に歩調を合わせて悪化していく。
北朝鮮は、前述したように、農業に適した土地が少ないため、化学肥料や農薬を大量に利用して食料の自給を維持していた。
が、工業生産力の低下により、化学肥料や農薬が不足するようになった。また、大量の化学肥料の投与による増産は、農地を疲弊させた。そのため、農耕地を拡大することによって収穫量を増やすという政策が展開されることになる。
農耕地の拡大、それは山地を大規模に開墾することであった。つまり、広範囲にわたって樹木の大量伐採が行われ、自然の持つ治水力が破壊されていくのである。
10年前の集中豪雨による洪水被害は、その必然的結末であった。

そして、1991年のソ連崩壊による廉価な(タダ同然の)重油の供給ストップが決定的な打撃となる。
元々外貨準備が極端に少ない北朝鮮は、ソ連以外から重油を調達することなどできない。そのため、経済全体が、1990年代半ばには世界の最低水準に落ち込んでしまうのである。
だから10年前の洪水被害も完全復旧できなかった。国内の食糧事情も極度に悪化し、300万人以上の国民が餓死したと言われるまでになった。

北朝鮮は、食糧危機の原因を水害や干ばつなどの天災のせいだと言うが、そうではない。
深刻なエネルギー不足や生産効率の低さにより、化学肥料や農薬の生産が大幅に
落ち込んだこと。その限られた化学肥料や農薬の運搬さえも、エネルギー不足により
困難をきたすようになったこと。
さらに、気候や農作条件も地域によって異なるのに、平壌から画一的なチュチェ農法を全国に押し付けたこと。軍や党の幹部が優先的に食料を確保したこと。
これらが重なり合って、食糧事情を最悪の状態=飢餓状態に落とし入れたのである。
それに、水害も天災というより人災であると言ってもよい。

それでも10年前は、北朝鮮の食糧支援要請に国際社会が応えてくれた。それで何とか生き延びた。が、今回はそうはいかない。国際社会も、前回の支援が、軍や党の幹部に横流しされたことを知っている。
だから今回は、WFPも慎重に構えているのである。
また、国連安保理の決議も可決されたばかりである。つまり、人道支援がミサイルや
核開発に転化したのではたまらない、国際社会はそう思っている。
前回の人道支援がもたらした結果は、結局、偽ドル、覚醒剤、偽タバコの輸出、そして
最終的にはノドンやテポドンの発射であった。

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今回の洪水被害がどの程度のものかは、まだよく分らない。が、アリラン祝祭が取り
やめになったということは、かなり深刻な事態であることは間違いない。
金正日は、「こんなことになるのなら、ミサイルなんて発射するんじゃなかった」と本心では悔やんでいるかもしれない。が、意地でも弱気なところを見せたりはしないであろう。
が、いくら突っ張って見せても、また一歩苦しい状況に追い込まれたことは間違いない。しかも、その状況は、自らの「先軍政治」と「チュチェ農法」がもたらした結果であるから、もう、どうしようもない。

自爆覚悟で暴発するのか、それとも自滅するまでじっと我慢を続けるのか、中国に頭を下げて助けてもらうのか、ますます北朝鮮の先行きが読めなくなってきた。

が、我が国は、北朝鮮の内部事情などには無視を装うことだ。そして粛々と制裁手続きを進め、圧力をより強化する。

今回は、人道支援などやるべきではない!!!

(参照記事)
【集中豪雨】北朝鮮でも洪水被害 (2006/07/18 朝鮮日報)
北朝鮮・アリラン公演、洪水被害のため中止 (2006/07/30 聯合ニュース
数百人死亡と初報道、北朝鮮の洪水禍で公式メディア ( 2006/07/21 CNN)
【社説】アリラン公演行って、開城工団資金拡大して (2006/07/21 中央日報)

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北朝鮮&拉致問題」カテゴリの記事

コメント

投稿: 正成 | 2006/08/01 01:48

安部官房長官も金正日は「合理的」な考え方をする男だといっているが、なかなかどうして海千山千のしたたかな男のようです。下世話で言えば、転んでもただでは起きないというところでしょうか。

自国製バイアグラではテポドンに効かないとわかったら、今度は核実験をするかの与太情報を流し、南鮮が食料援助を渋ると今度は洪水被害を宣伝して、国際世論の同情を買おうという魂胆です。

アリラン祭なるものが夏季は中止にせざるを得ないという泣き言も、マンギョンポンの出入りを差し止められたから十分な集金集客効果が望めなくなったからじゃありませんか。

それも、一番忠実な在日朝鮮人組織に訴えず、在アメリカのシンパ組織を通じて公にしたなどというのは、なかなかのプロデューサーぶりです。来年春には開催したいというのも列島に多数巣くっている政治家、評論家、マスメディアの同情票に期待してひょとしたら来春までにはマンギョンポンもなんとかと考えて居るんじゃないかと思います。

投稿: H.H生 | 2006/08/01 09:42

以前のそれは海を渡った瞬間に人道支援でなくなったという悲しい結論。

いろいろな意見がある中、本当に純粋に人道的という言葉に乗って支援を考えた人(特に中学生や高校生の純粋なボランティアーの生徒さんたち)がいたのですが、その気持ちとはまったく関係ないようなところにその純粋な善意が使われたことへの後悔や総括を、支援を求めた人や団体は、支援を求めた時と同様に表わさなければならないはずですが、小職は見たことがありません。

ちゃんと主要新聞をスミからスミまで読んでいるのですが、きっと小職が老眼鏡を使い始めたせいで、記事を見逃していまったようで、誠に申し訳ありません。

敬具

投稿: 螺旋丸 | 2006/08/01 10:19

北朝鮮にとってアリラン祝祭が国威発揚の場であるとともに、貴重な外貨獲得源となっている事から推察すれば、
どうも今回の台風水害によるダメージで延期された、というのはちょっと信じ難いですね。

元々彼の国は独裁国家で国民の被害云々等とは一切関係なく、
将軍がやろうと思えばいつでもできる筈ですから。

やっぱり、HH生さんが書かれているように万景峰号制裁により人も物資も入手できなくなり開催不可能になったのではないでしょうか。

それにしても、金将軍は何処に隠れているんですかね。

もしかすると身の危険を感じての中止という事も考えられますね。

投稿: 通りすがり | 2006/08/01 10:28

「経済制裁は効果なし」と言っていた反日マスコミ、媚中政治家たちはどう思ってるんでしょうね!

少しずつ北朝鮮は追い込まれてきました。
崩壊までもう一息!

でも、南北共倒れに日本はもうビタ一文金も出さないし、難民の受け入れはごめんですからね!

投稿: Ponko | 2006/08/01 16:30

http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=78869&servcode=500

↑こんな合成っぽい写真を出すくらいなんで、将軍様が死亡あるいは重病なんじゃないでしょうか。あえて介添するかのような人がついているのは、国内上層部にすくなくとも重病の噂が広まっている事への対処か。ミサイルは不在の口実を作るカモフラージュだったと。

まあ芝居っ気満々な将軍様ですから「と見せかけて出現!」の可能性もありますが。

投稿: 神戸牛 | 2006/08/17 12:47

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