盧武鉉政権を直撃した北のミサイル
北朝鮮は7月5日、長距離弾道ミサイル・テポドン2号を含む計7発のミサイルを日本海に向けて発射した。これは、ミサイルの性能実験のほかに、日・米に対する警告が目的
だったと思われる。
日本は拉致問題を楯にして2002年9月に交わされた日朝平壌宣言を守らない。米国も 2005年9月の6カ国協議における共同声明合意を履行していない。であれば、北朝鮮も、これらの合意に拘束されないでミサイル発射や核開発を実行できる、という意思
表示なのである。
つまり、米・朝による直接協議をかたくなに拒否する米国を協議のテーブルに着かせること、日本の拉致問題解決を優先させる対北朝鮮政策を牽制すること、これらがミサイル発射の狙いだったと見るのが正解だろう。
まあ、「盗人にも一分の理」もない論理ではあるが、それが北朝鮮という国と金正日の本質なのであるから、この国にはそれを認識したうえで対応していくしかない。
ところで、テポドン2号1発を除けば、実験には成功したものの、その狙いについては
完全に失敗したと見てよい。
米国は直接協議に応じる素振りを見せるどころか、逆に制裁強化の姿勢を強めている。日本も制裁措置を矢継ぎ早に発動しているし、直後の緊急全国世論調査(讀賣新聞)では、92%もの人が北朝鮮に対する制裁措置を「支持」している(「支持しない」はわずか5%)。
さらに、これまでは後ろ楯だった中国までが北朝鮮関連口座の凍結に動き出した。
が、北朝鮮の最大の誤算は、ミサイルが韓国の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権を直撃した
ことだろう。
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盧武鉉くんは、ミサイルが発射される前の6月22日、「日本の挑発に対応できる程度の防御的戦力を整えなければならない」などと、まるで日本が韓国の主たる脅威であるかのような発言をしている。
また、その前の6月12~13日に、拉致問題での連携を求めて訪韓した逢沢一郎・北朝鮮による拉致問題対策本部長(自民党)らに対する対応も極めて冷淡だった。
応対した文喜相(ムン・ヒサン)韓日議員連盟会長(与党・ウリ党)は、「米国と日本は
北朝鮮に『厳しい父親』のように接しているが、韓国は『慈悲深い母親』の役割をすべきだ」と語り、双方の立場の違いを際立たせただけだった。
このような盧武鉉政権の姿勢は、ミサイル発射後も表面的にはほとんど変わらなかった。
事件後に青瓦台(韓国大統領府)が発表した声明は、「誰かが政治的な理由からこの事件を非常事態にまであおり立てようとしても、それは政治的事件であるに過ぎず、
安保的次元の非常事態にはなり得ない」というものだった。
また、初期対応が日本より大幅に遅れたことに対しても「いたずらに国民を心配させてはならないため、声を高めず、ゆっくりと対応してきたまで。日本のように無理に未明から大騒ぎする必要はない」と居直る始末。
そして、「(日本を攻撃する準備を始めた場合に限り)国民を守るためには最低のもの(敵基地攻撃能力)は持たなければいけない。与党で議論すべきだ」と述べた額賀福志郎防衛長官の発言に対しては、北朝鮮に対する態度とは打って変わって次のような
“妄言”を吐いた。
「これは、日本が侵略主義的な性向を現したものとして大いに警戒する必要がある」「北朝鮮のミサイル発射を口実に“先制攻撃”のような危険かつ挑発的な妄言で韓半島の危機をさらに増幅させ、軍事大国化の名分にしようとする日本の政治家のリーダーたちのごう慢さと妄動に対し、強く対応していく」
この、鄭泰浩(チョン・テホ)大統領府スポークスマンの公式ブリーフィングは、盧武鉉
くんや宋旻淳(ソン・ミンスン)安全保障室長らが参加した内部会議で決まったものだという。
これでは、日本政府が「韓国の現在の政権には何を言ってもムダだ」と突き放すのも
無理はない。
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ところが、以上のような盧武鉉くんと、その政権のノー天気な言動に、韓国世論が猛反発を示しているのだ。
韓国・文化日報が7月下旬に実施した世論調査では、72%が盧武鉉政権の統一外交安保政策スタッフを「信頼しない」と回答。KBSテレビが8月15日に報じた調査では、北朝鮮には「和解・協力と制裁・圧力とを並行して行うべきだ」が61%を占め、「和解・協力の基調を維持すべきだ」とする24%を大きく上回った。
つまり、世論の多くが盧武鉉くんが進めてきた太陽政策に「No!」と言っているのである。
発射されたミサイル7発のうち、少なくとも2発が“韓国攻撃用”の短距離ミサイル・スカッド(射程300~500キロ)だったことを考えれば、韓国世論がこのような反応を示すのは当たり前のことである。
盧武鉉くんが進めてきた太陽政策は、北朝鮮との交流・協力を通じて、平和的で安定的な南北関係を構築することを目的としている。北朝鮮に対する経済的支援も、「北東アジアのバランサー論」も、在韓米軍司令官が持つ韓国軍の戦時作戦統制権の返還要求も、すべてがそのためにある。
しかし、この太陽政策が成功するには、盧武鉉くんがいくら涙ぐましい努力をしても、北朝鮮がそれに応えてくれなければ何一つ実を結ばない。
ところが北朝鮮は、逆に太陽政策の根底にミサイルを撃ち込んだのだ。
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盧武鉉くんは今、心の底で悲痛な叫びを上げているであろう。
あんなに支援してきたのに・・・
米国から嫌われるのを覚悟で協力してきたのに・・・
これじゃあ、面子をつぶされたなんてもんじゃない。もう四面楚歌だ!!!
どうして俺の熱い民族的熱情を解ってくれないんだ!!!
金正日!答えてくれ!
なぜだ!!!
が、もう手遅れなんだよ、すべてが!盧武鉉くん!!!
参照1:次第に疎遠になる韓日関係 (朝鮮日報)
参照2:韓国大統領府「非常事態ではない」 (朝鮮日報)
参照3:日本より全て後手に回った韓国の対応 (朝鮮日報)
参照4:敵対国さながらの韓日関係 (朝鮮日報)
参照5:北朝鮮ミサイル、制裁措置「支持」が92%…読売調査 (讀賣新聞)
参照6:盧政権にミサイル“命中” (讀賣新聞)
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コメント
>盧武鉉政権を直撃した北のミサイル
これってもう終わりってことですよね。
ノム酋長ばかりでなく、
ひょっとして国まるごと。
近頃歴史の証人になるかも知れない栄誉に、
若干興奮気味であります。
中国の地方歴史の一部として、
「昔こんな国が朝鮮半島に在りました」
な~~んてね。
投稿: 通りすがり | 2006/08/29 21:28
盧武鉉を見ていて思うのは、日本の団塊の世代です。
日本は敗戦の反動としての空論的社会主義賛美。
韓国は軍事政権の反動としての空論的社会主義賛美です。
いずれも辛い想いの反動として、現在に深い傷を残しています。
それは国民固有の道徳観の欠落する現状、即ち拝金主義の横行です。
また日本も韓国も西洋の長所である論理的思考方法を取得すること無く、情緒に流される体質は変わらないように思えます。
投稿: koubunnyuu | 2006/08/29 23:35
最近の韓国政府は日本に対して一応まだ同盟国であるはずが、うそのように、大統領、首相、外交大臣(?)など日本非難を盛んにしています。
でも、今日のニュースで横須賀に米軍の迎撃ミサイル艦が横ずけされました。日本に自衛隊も来年度の防衛予算委この迎撃用ミサイルを搭載できるよう日本の艦船を改造するそうです。
一方韓国は韓米防衛軍の指揮権を韓国の要請で米国はさっさと返還するそうで・・・これで北側から韓国側に何ぞあったとき日本に頼らないでね。宗主国のような中国に頼ってね
米国じゃないけど・・南北とも難しい国だから,そちらでどうぞ・・・
投稿: 容子 | 2006/08/29 23:43
koubunnyuuさんが
>また日本も韓国も西洋の長所である論理的思考方法を取得すること無く、情緒に流される体質は変わらないように思えます。
と仰有ってますが、正に正鵠(ちょっと可笑しいのかな?)を射た正論(!)と思います。
とくにインテリというか、なまじつか少し知識があるという層ほどその傾向が強いようです。靖国問題なんかもそうです、マスメディアに登場する人士も情緒的な発言に終始しています。
不思議なことにこれは対馬海峡をはさんだ両側でそうなんですが、半島を過ぎて大陸に行くと、がらりとロジックの世界になります。ロジックにはロジックでというのが鉄則なんですが、対応する方が情緒で(意地で)対応するもんだから、相手も弱ってるんではありませんか。半島ははしごが外されたらどうしようとうろたえてるし…。
投稿: H.H生 | 2006/08/30 05:34
7月下旬韓国・文化日報の世論調査
盧武鉉政権の統一外交安保政策スタッフを
72%が「信頼しない」と回答。
盧武鉉政権の支持率が20%以下であるという報道と合っている。
8月15日KBSテレビの対北鮮政策調査
61%が「和解・協力と制裁・圧力とを並行して行うべきだ」
24%が「和解・協力の基調を維持すべきだ」
南鮮世論には和解・協力に人気があるようだ。
しかし和解や協力は相手次第の概念である。
北鮮にその気がない以上成立しない。
北鮮は、逆にミサイルを撃ち込んだ。
何と分かりやすいんだろう。
投稿: docdoc | 2006/08/30 11:56
>盧武鉉くんは今、心の底で悲痛な叫びを上げているであろう。
本当だろうか?
北朝鮮のミサイル発射の目的は長年の悲願である米韓同盟の分断と中国からの同情と支援を引き出すことではなかったか。太陽政策を表向き標榜する盧武鉉が世論を無視して戦時作戦統制権の前倒し返還を単純に口にしたのは、当然の流れと見ることができるが、中国が靡かなかったことが、金正日の見込み違いであった。しかし、はじめから盧武鉉は時期が来たら中国接近を加速するつもりではなかったのか。日米はもう韓国を見限って安保をリストラし始めているのだ。
投稿: ぷく | 2006/08/30 17:16
皆さん、こんにちわ。
コメント、ありがとうございます。
盧武鉉くんの発想と言動、在野の政治家であれば理解できなくもありません。
が、彼は一国の大統領です。
彼の双肩には“国益”がかかっているのです。
それが解っていない。
“情緒”というより、自分の“思い込み”を基準に発言し、行動している。
そこには、リーダーとしての政治家に求められる“リアルに物事を捉える”という能力が完全に欠落しています。
だから自縄自縛の状態に陥ってしまった。
韓国経済は、今、サイテーの状態にあるそうですが、盧武鉉くんは「もう何にもやりたくない」というような発言をしています。
あと1年半。
本当に“亡国の大統領”として、その名を歴史に残すかもしれません。
投稿: 坂 眞 | 2006/08/31 12:31
>だから自縄自縛の状態に陥ってしまった。
しかし、彼はそう思っていないと思い込ませている。
小泉首相と異なり、彼は北へ何度も乗り込んでじか談判さえもできない、臆病者なのだ。気を損ねるとして、自国の拉致被害者も一人も取り返すことができない。具体的各論を一つ一つ地道に解決して行けば、活路が開けるのに。臆病者は空想的総論だけを吠えるものだ。
投稿: ぷく | 2006/09/01 17:37