安倍首相訪中は“吉”と出るか!?
安倍晋三首相が、組閣ではサプライズを見せなかったが、ここに来て、外交でサプライズを狙った感がしないでもない。
首相訪中の件である。
が、日中、日韓の首脳会談再開は、いずれは結論を出さなければならない問題だし、早い方が良かったと言えるのではないか。
原則さえ譲っていなければ。
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↓
安倍晋三首相が8日、北京を訪問し、胡錦濤・中国国家主席や温家宝首相と会談することが1日、分かった。中国側は会談に応じる方針をすでに日本側に伝えている。日中関係筋が明らかにした。安倍首相は9日には韓国を訪問、盧武鉉(ノムヒョン)大統領と会談する。日本の首相の訪中は2002年4月の小泉純一郎前首相以来で、日中首脳会談は昨年4月のジャカルタ以来となる。
同筋によると、安倍首相は8日午後に胡主席と会談、同日夕に温首相と会談し、そのまま温首相主催の夕食会に出席する予定。訪問を実務訪問とするか公式訪問とするかは未定。
8日は中国共産党第16期中央委員会第6回総会(6中総会)開幕日に当たるが、党の
最重要会議の期間中に首脳会談を設定するのは極めて異例。中国は靖国神社参拝を繰り返す小泉前首相に反発、第3国での首脳会談も拒否してきたが、安倍政権誕生を機に日中関係の改善に方針を転換したといえる。
汚職で上海市トップの陳良宇・前市共産党委員会書記が解任されるなど、対日強硬派とされる江沢民・前国家主席系列の「上海閥」の勢力弱体化が進む中、「実務的」な対日関係を目指すとされる胡指導部は靖国参拝問題をめぐるこれまでの強硬姿勢を軟化させた。
同筋によると、先月、東京で開催された日中外務次官による「総合政策対話」で、谷内正太郎外務事務次官は、安倍首相が自らの靖国神社参拝をめぐる意思や事実関係を明言しない「あいまい戦術」を取っていることなどを説明し、理解を求めた。
これに対し中国の戴秉国外務次官は参拝自粛を求める姿勢を変えなかったものの、中国に持ち帰り協議する考えを表明。報告を受けた胡主席ら最高指導部が慎重に協議、最終決定したとみられる。(共同)
8日に日中首脳会談 安倍首相が訪中 (2006年10月1日 共同通信)
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今回の、安倍首相の訪中・訪韓内定までの経緯を見ていると、従来とはかなり成り行きが違う。
安倍首相は、先月の就任記者会見の時、「日本は常にドアを開いております・・・私も
努力をしていきたいと考えています。是非とも両国にも一歩前に出てきていただきたいと思います」と語っていた。
これに対し、外務省の事務当局は、「そんなに簡単に話がまとまるなら、首脳会談は
とっくに実現している」などと困惑気味に語っていたそうだが、首相周辺は「交渉ルートは外務省だけではない」と述べている。
事実、下村博文官房副長官は30日、フジテレビの報道番組で、「安倍首相は出来る
だけ早く、中国や韓国との首脳会談を実現しようということで、(調整は官邸が)直接、韓国と進めている」(2006/10/01 讀賣新聞)と発言している。
また、政府筋は30日、「外務省のごく一部しか知らない」(同)と記者団に語っている。
つまり、今回の訪中や訪韓は官邸主導で行われており、事実経過は、官邸以外では、外務省のごく一部、つまり麻生太郎外相や、首相の信任が厚い谷内次官くらいしか
知らなかったのではないか。
先月の23~26日に都内で開かれた日中総合政策対話(次官級)では、首脳会談について谷内次官が中国の戴秉国・筆頭外務次官と交渉しており、交渉経過は麻生外相から携帯メールで直接、安倍首相に報告されている。
要するに、安倍首相及び首相官邸-麻生外相-谷内次官、このラインで中韓との折衝が行われ、外務省の事務方は“蚊帳の外”だったということだ。
これは、今までの外務省の中韓に対する“軟弱外交”を踏まえれば、当然といえるし、逆に言えば、今回の訪中・訪韓の内定は、両国と安易に妥協した結果ではないとも
言える。
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麻生外相は29日の記者会見で、国連事務総長選に名乗りをあげた韓国の潘基文・
外交通商相を日本が支持するかどうかについて、「日韓首脳会談が仮にできれば、そこで言うのもいい」(2006/09/30 朝日新聞)と述べている。
また、中国に対しては、胡錦濤国家主席が昨年4月の日中首脳会談で示した「五つの主張」について、「安倍晋三首相はこれに配慮する」と中国側に非公式に伝えている。
今回の訪中・訪韓内定は、このような日本側の“努力”に対して、「両国が一歩前に出てきた」ということだろう。
ただ、油断は禁物である。
韓国は、首脳会談について、「もともと中国のように靖国参拝中止を会談再開の条件にしていたわけではない」(外務省幹部)。
が、中国は違う。
先月の日中総合政策対話でも、戴・筆頭外務次官は、「(靖国参拝という)障害を取り除く約束をすることが必要だ」との立場をくずさなかった。
対日強硬派の江沢民系=「上海閥」の勢力弱体化が進んでいるのは事実だし、胡主席が提唱する“科学的発展観”を具現化するには我が国の協力が欠かせない。
が、「胡指導部は靖国参拝問題をめぐるこれまでの強硬姿勢を軟化させた」というのも共同通信の情報でしかない。
「“靖国カード”を容認する形での関係改善に応じるわけにはいかない」というのが安倍首相の基本的立場である。
今日の衆院における代表質問でも、民主党の鳩山由紀夫幹事長の「(靖国参拝について)あいまい戦術では信頼を損なう」という批判に対し、安倍首相は「鮮明にするつもりはない。個人としての考えだ」と突っぱねている。
それだけに、日中首脳会談でこの問題がどう扱われるかが最大の焦点だと思う。
もしかしたら今後、今回の話(日中首脳会談の予定)はなかった、ということになる可能性もまだある。
今後の成り行きから目が離せない、というところではないか。
また、韓国についても、首脳会談で盧武鉉大統領が、いきなり歴史認識の問題を持ち出してくる可能性もある。
何しろ相手は、あの“盧武鉉くん”だから(笑)
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日中・日韓首脳会談が、安倍首相の就任直後に実現するのは確かにサプライズだが、会談結果が吉と出るのか、それとも凶になってしまうのか。
安倍首相及び麻生外相の手腕が問われることは間違いない。
もちろん私は、“吉”と出ることを願っている。
参照:まず日韓から、アジア外交建て直しアピール 安倍政権
(2006年9月30日 朝日新聞)
【追記】
国連事務総長選については、韓国の潘基文・外交通商相が過去3回の予備選で第1位を獲得している。特に、第3回目では、安保理の常任・非常任理事国15カ国のうち13カ国から支持を集めた(反対1、保留1)。
当初は、アジアからの選出に難色を示していた米国も、ここに来て支持を表明している。
潘氏は、その言動を注意してみればよく分るが、けっして盧武鉉くんの対北朝鮮政策には賛成していない。
また、政治家というより、外交官という色合いが強く、だから米国も支持に回ったのではないか。
つまり、対北朝鮮で、潘氏は盧武鉉路線に同調しないということだ。
また、他のアジアからの候補を見ると、経歴などからして潘氏が第1位になるのも「なるほど」という気はする。
もちろん、積極的に支持する気にはなれないが、米国に“キンタマを握られている”潘氏を支持するのは、韓国の出方次第では国益にかなうのかもしれない。
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コメント
個人的には、何で中華王朝の国王に、就任の挨拶にわざわざ伺おうとするのか理解できない。
以下の方の意見を支持します。ご一読を。
外交と安全保障をクロフネが考えてみた。
急いてはことを仕損じる http://gaikoanzenhosyo.blog4.fc2.com/blog-entry-383.html
私は、このところの日中あるいは日韓間の水面下の交渉の動きを注意していたのだが、どうも政府・外務省が焦っているように見えて仕方がないし、相変わらず戦略の立て方がまずいように思われる。...
投稿: 7743 | 2006/10/02 23:50
中共、安倍新総理就任に合わせた、江一派追い出し。相当あせっているか、ジェスチャーのみか。日米同盟にチャチャを入れる?いったい何が欲しいのだ。それとも新総理への挨拶だけか。孫子の兵法の本家。リアリズム国家、シナ。油断は禁物。
投稿: からす | 2006/10/03 00:09
潘基文さんのご希望通り、事務総長に据えてやれば良いんじゃないかな?
目立つところに祭り上げてから化けの皮を引っぺがしましょう。
アナン氏の実例から分かるように、国連の親玉は誘惑が一杯であり、盧武鉉氏の実例から分かるように、韓国では身内が利権を漁るのが習い性になってます。今から専門チームを組んで徹底的な身辺調査を期待したいです。トラップを仕掛けるのも良いのかもしれません。
鄭夢準氏とか、黄禹錫氏が有名になった後にどうなったか・・・今から結果が楽しみです。
投稿: でもクラっと | 2006/10/03 01:04
中韓訪問はなんかバタバタっと決まった感じで、安部さん周辺が早く結果を出そうとしてあせってババでも掴まされなきゃいいがなと思います。それと潘基文さんが事務総長っていうのは一応慶事でしょうね 楽しみが一つ増えましたから。
投稿: ころ | 2006/10/03 13:19
岸元首相は、就任後アジア諸国を歴訪し、日本とアジア諸国との友好を確認したことを手土産に訪米しました。中曽根氏も、同様の趣旨で韓国訪問を先にして訪米しました。
今回の中韓訪問は、その顰みに倣ったのではないでしょうか。安倍首相は、祖父の遺伝子を強く意識しているようですし、改憲を前面に押し出す点で中曽根氏の衣鉢を継いでいます。
パン氏の国連事務総長就任については、「でもクラッと」さんに近い考えです。
そもそも、米国は国連をジャマに感じている気配ですから、この際、韓国のお家芸である盛大なる汚職をネタに、一気に国連を解体に近いところまで貶める戦略なんじゃないかと思います。韓国が人身御供になっても、米国はもとより、世界中のだれもメンツがつぶれたり同情したり怒ったりしませんから、やりやすい。
日本としては、国連分担金をネタに、大いに揺さぶりをかければよいのではないでしょうか。メンツに弱い韓国人ですから、案外「パン事務総長が、韓国に竹島問題を国際司法裁判所に持ち込むよう勧告する」なんて事態にもっていければ、ベストのシナリオだと思いますね。外務省では無理でしょうが、官邸主導ならひょっとして、、、、うーん、やっぱ無理かな。でも、世論が後押しさえすれば、可能性は高まる筈だと思います。
投稿: かろかろ | 2006/10/03 15:45
潘基文、
馬鹿は二階に上げたほうがコントロールしやすいものです。
日本の銭無しに何か出来るというのなら
演ってもらったらいいのです。
大きいの一つ貸しですね。
投稿: 佐衛門 | 2006/10/03 15:47
今月の「争鳴」に載ってましたが、中共中央が9月5日に「台湾局勢観察組」という組織を作ったそうです。記事によると、現在台湾で起きている“倒扁”運動が大陸の反腐敗運動に波及し、反政府運動に発展することを如何に防止するかが、この組織の目的のようですね。
いわゆる“上海閥の粛正”もこのまますんなり終わるような感じではないし、反腐敗運動は中国の歴史的な“官僚腐敗”文化への挑戦なので、おそらく無限に続く政治闘争になるんじゃないですかね。
最近の中国経済の動向を見ても、中共にはもう余裕がないんだと思います。だから胡錦濤自身が日本に出向くなんていう悠長な事はしてられないんでしょうね。
阿倍氏との会談では、胡錦濤も国内向けに“靖国云々”という話はするかもしれませんが、実質は日本側に「当分の間は中国を刺激することはしないでくれ」と泣きついてくるだけのように思います。
投稿: duzhe | 2006/10/03 15:57
安倍晋三氏の少年時代については何も知らないのですが、おそらく退屈な夏休みの宿題でも計画的に早めにかたづけて、後は心置きなく遊び呆けるタイプだったのではないかと愚考いたします。いわゆる先憂後楽型の人間で、新政権のご祝儀気分が抜けないうちに、政権の課題をともかくも少々強引に片つけてしまおうという目論見なのではないか。安倍新政権からの誘いに胡錦濤政権も盧武鉉政権も小泉政権相手の消耗戦(少なくとも中韓は何ら利益が得られず、評判は下がるばかり)に嫌気をさしていただけに願ったりかなったりだったはずだ。中韓両国とも少しは学習能力があれば、反日政策だけに頼る政権運営の危険性に気が付き、少しはましな政策を実行して欲しい。今回の安倍訪中訪韓は、ご近所への挨拶回りさえ無事に済ませば義理は十分に果たせる「通過儀礼」だと割り切るべきだろう。後は、合州国、台湾、フィリッピン、オーストラリア、インドなどの民主主義海洋国家群との交友関係をより深めていけばいい。今回は強気で大丈夫だ。
投稿: 朝日将軍 | 2006/10/03 16:21
よりによって河野談話を踏襲するとは・・・
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061004-00000000-san-pol
見損ないました。
というより、訪中、訪韓前に微妙な質問をして苦し紛れに答弁させる野党は逝ってよし。
投稿: 正成 | 2006/10/04 09:18
皆さん、こんにちわ。
コメント、ありがとうございます。
安倍内閣、ちょっと焦り気味という批判も理解しますが、問題は早くケリをつけた方がよいと思います。
今回の訪問で、中国、韓国との間でとるべきスタンスがはっきりすると思います。
>潘基文、
>馬鹿は二階に上げたほうがコントロールしやすいものです。
馬鹿かどうかは分りませんが(笑)、二階に上げる、つまり事務総長にするのも「対北」を考えれば一つの手です。
確かにコントロールしやすくなる。
正成さん
>よりによって河野談話を踏襲するとは・・・
政府としては、河野談話だけではなく、村山談話も東京裁判も否定するわけにはいかないでしょう、残念ながら。
それだけ“談話”といえども慎重を期する必要があるわけです。
安倍発言は、正成さんが引用した記事の以下のとおりでいいのではないですか?
>「いわゆる従軍慰安婦」と2回述べるなど「いわゆる」の部分で語気を強め、志位氏が使った「従軍慰安婦」という言葉が当時はなかった不正確な用語であることを示唆してみせた。「政府見解は首相の本意ではないことをにじませている」(森派若手議員)
投稿: 坂 眞 | 2006/10/04 13:02
坂さん、
>安倍発言は、正成さんが引用した記事の以下のとおりでいいのではないですか?
冷静に見ればそうですね。実は、もっと言いたかったのは、野党もこの時期に国益に叶った質問をしろということです。
あとは、安倍さんが訪中、訪韓で拙速でないことを願いましょう。
投稿: 正成 | 2006/10/05 08:49
衆院予算委:歴史認識で揺さぶり 菅氏が追及
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/kokkai/news/20061006k0000m010103000c.html
ここまで意図的に自国の外交の足を引っ張ろうとする政党は、外国ではコミンテルン時代の共産党くらいしか類例を見ません。べつに世界革命を目指しているわけでもないのにこういう政党を選挙で得票率一位にする日本人ってのはドM民族なんでしょうか。
投稿: 神戸牛 | 2006/10/06 00:19