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2007/08/10

五輪まで1年 北京で何が起きているか

中国は今、世界の人々に「美しい北京」で開かれる五輪を見せようとしている。

北京五輪で都市再開発、インフラ整備などに投じられる総投資額は約2800億元(約4兆4000億円)に上る。
これは1972年のミュンヘン五輪以降、「最も金のかかる五輪」となる。
北京体育大の林顕鵬教授(五輪経済専門)は、北京五輪の経済効果について、5930億元(約9兆3000億円)に上るとの試算を明かした。内訳は、直接効果が3467億元、間接効果は2463億元という。
(参照:「北京五輪」総投資4兆円超 2007/08/07 讀賣新聞【夕刊】)

つまり、近代化された中国、飛躍する中国を世界に誇示したいのだ。
そして、北京は今、五輪バブルに沸いている。
が、その五輪バブルの裏で何が起きているのか?

以下は、[中国疾走]五輪まで1年(2) (2007/08/08 讀賣新聞【朝刊】)からの引用である。

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①7月22日午前0時すぎ、北京市南部の大興区にある衣料品工場宿舎で寝ていた滕(とう)紅蓮さん(33)は、突然、乱入してきた男たちに懐中電灯で顔を照らされた。何が起きたのか考える間もなく、一緒にいた身内の女性3人とともに拉致された。

「助けて!」。妊娠5か月の滕さんは大声を出したが、男たちは何も話さず、女性らの首根っこを押さえ、偽造ナンバーの車に連れ込んだ。すぐに発車、1時間ほど走ったところで4人は降ろされた。

午前7時過ぎ、歩いて戻り着いた滕さんらの前に信じられない光景が広がっていた。数時間前まで寝ていた2階建ての宿舎は半壊していた。

再開発を理由に5月から宿舎の立ち退きを求められていたが、家屋使用契約期間は12年残り、拒否していた。

滕さんの夫で工場を経営する王道勇さん(34)は、その夜、別棟にいた。宿舎がショベルカーにつぶされるのを見て警察に通報。20分後に警官が駆けつけ、破壊をやめさせた。王さんは、がれきの下に女たちが埋まっていると思い、必死に捜していたという。

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②「オリンピックは歓迎するよ。でも家を失うのはごめんだ」

北京首都空港近くのつぶれた住宅地。補償金額が折り合わずにとどまる50代の男性が言った。中国紙によると、この一帯は、離着陸する飛行機が高度200メートル以下で通過する重点美化地域。ここでも夜になると、何者かが家の壁を壊すという。

別の年金生活者は、まだ明るい夕刻、表で廃材を燃やして脂身の肉をいためていた。「電気も水も止められてね。だけど、ここを出ると住む場所がないから」。今年春までは1000戸ほどの家があったというがれきの海を眺めた。

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北京の住宅強制撤去現場Bijng2  立ちつくす市民      北京の路地で、壊された家屋に茫然とする市民Bijng_2


共産党関係者は、強引な開発が横行する背景について「権力者と開発業者は利益共同体であり、開発するほど得する仕組みだ」と説明する。土地使用権を業者に売る権力側には、時に裏金を含めた膨大な収入が入る。「発展の実績で、幹部の組織内での評価も上がる」という。業者も権力が味方だから怖いものはない。彼らにとって、五輪は絶好の“商機”となった。

立ち退きを巡るトラブルでは、多くの庶民が「役所も警察も役立たず」と口にする。「共同体」の堅固さの証明だ。

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③7月8日、北京市北部。五輪水上公園に通じる道沿いの開発区内で、苗木栽培業者の事務棟、家畜飼育棟が、やはりショベルカーに襲われた。

「朝の8時半、何の前触れもなくやってきて壊し始めた。止めようとしたら、何人かに組み伏せられ、頭をけられた」。経営者の葛全久氏は語った。クーラーも事務用品も携帯電話もがれきに埋まり、家畜のウサギは圧死した。

地元当局は、「道路を不法占拠したための取り壊し」と説明しているという。葛氏は2002年に当局と交わした30年間の土地使用契約書と付属地図を取り出し、「そんなことはありえない」と怒りをあらわにした。

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④7月18日、「立ち退きの嵐」は今度は学校を襲った。市北部にある出稼ぎ者の子女815人が通う学校の校舎。地権者から突然の取り壊し通告があって3日目、学校はがれきの山となった。

夏休みに入っていた5年生の董華建さん(12)は「新学期からはここには来られないのかな。友達もいるし、別の学校には行きたくない」と顔をゆがめた。

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⑤文化大革命期から、役人の腐敗や冤罪(えんざい)を中央に訴え出ようとする全国の民衆が住み着いてきた「直訴村」も風前のともしびだ。近くで五輪の陸の玄関口となる高速鉄道ターミナルの建設が急ピッチで進んでおり、それに伴う大規模開発に巻き込まれた。

今春以来、直訴人が自ら造った“小屋”は壊され、1泊5元(約75円)で一部屋に十数人詰め込む安宿も消えつつある。直訴人の多くは出身地の当局者に連行された。

だが、直訴人たちはまたここに戻り、橋の下や地下道、路上で眠り、直訴を続けている。自身も立ち退かなくてはならない近所の住人は、こうした直訴人を見て「この街が全部消えても彼らは来る。……共産党はもうだめだ。民衆の苦しみなど考えていない」とつぶやいた。

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昔ながらの北京Pekin               近代的な北京Pekin2




以上を読んでいただければ多くを語る必要はないと思う。

「美しい北京」の裏側で、住民の生活が圧殺されているのだ。
笑っているのは開発業者と、彼らの背後にいる権力者。そして中国共産党。

中央政府は04年、北京を含む各地方政府に対して、住民の立ち退きに際し、合理的な補償を行うよう求める通知を出している。
北京市は昨年、暴力や脅し、水道や電気、暖房の供給停止などによって住民に立ち退きを迫ることを厳しく禁じる規則を制定した。
劉淇・北京市党委書記(党中央政治局委員)は5月に開かれた市の党代表大会で「民衆の住宅問題解決に力を入れる」と語っている。

が、通知も規則も守られない。市のトップ(しかも党中央の政治局委員)の発言も空手形、住民を欺くものでしかない。
もう、まったくの無法地帯なのだ。

やはり、「……共産党はもうだめだ。民衆の苦しみなど考えていない」

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近代的な高層ビル群がわき上がるように建設される北京。地下鉄、高速道路、まさに飛躍する近代中国の象徴である。
が、「中国の一部の都市における大気汚染は世界最悪の水準に達している」
経済協力開発機構(OECD)は去る7月、中国の環境に関する報告書で指摘した。

中国科学院によると、工場廃水に含まれる重金属に汚染された耕地は2000万ヘクタールにも及び、これは中国の耕地総面積の何と5分の1にもなっている。さらに農薬の使いすぎによってほぼ回復不能な耕地は1300万ヘクタールから1600万ヘクタールにもなっている。

上海の市場に出回る揚子江デルタ周辺で栽培されるコメは「有毒米」という異名をもらってしまった。理由は国際基準の15倍に達するカドミウムが検出されたからだ。

いくら厚化粧を施しても、その素顔は「汚らしい」という言葉がぴったりの中国。
うわべを飾っても、近代中国の裏側は前近代的な無法社会である。

飛躍しているように見えるが、バブルはしょせん泡沫(うたかた)。
五輪終了とともにバブルははじける。
残されるのは膨大な数の住民の怨念と世界最悪の環境破壊。

北京オリンピックをボイコットせよ!

参照:千変上海 安全“輸入”する「食の国」 (産経新聞)

【追記】
米国でNGOによる北京オリンピックボイコット運動が広がりを見せており、中国が神経質になっているそうです。
我々もネット上でボイコットを呼びかける運動をやるべきだと思います。

誰か、時間と意欲のある方、ボイコットを呼びかけるサイトと、ボイコットで連帯するシンボル的なバナーなんかを作ってくれませんかね。
私は意欲はありますが、時間と能力が足りません、というかよい方法が思いつかない(苦笑)

よろしくお願いします。

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コメント

日本も水は持って行くと言い出しましたが、選手の命の保障は出来るのでしょうか?
中共のお役人自体が中国人?のマナー、オリンピックを開く段階ではない、これから向上させる。他人事の様な事を言ってる様ですが100年位早すぎました。オリンピック委員会の責任は重い、抗議はオリンピック委員会に選手の健康管理・命の保障を聞いてそれから、各国も非常に神経質に成り出しました。

日本の国会議員だけでしょう「北京オリンピックをせいこうさせる会」
何処までもバカを晒しているのが恥ずかしく成ります。まあ民主党に自治労の役員が居ようと、官公労・日教組の細胞が居ようと当選して保身に回ろうとする人間を議会に送って仕舞う国柄ですから嫌に成りそうです。
日本からは対応策は出ないでしょう、西欧・アメリカのみしか期待は出来ません。

投稿: 猪 | 2007/08/10 15:15

当然賛成

投稿: | 2007/08/10 16:59

賛成。
JOCにボイコットお願い電話の一本でも入れておくか。

投稿: みらい | 2007/08/10 18:47

北京を目指して頑張ってる選手たちには悪いけど賛成。。。

投稿: 朧 | 2007/08/10 20:29

日本の選手の中にはオリンピックをボイコットしたい人もいるとは思います。でも胸を張って言うにはそれまでの努力が邪魔をするのでしょう。

投稿: ココナツ | 2007/08/11 08:24

 賛成します。

投稿: メル | 2007/08/11 09:02

TBありがとうございました。
アメリカではかなりボイコットのための運動が行われているようですね。国民を足蹴にしたオリンピックなどなくて宜しい!
平和の国にこそのオリンピックです。

投稿: damedakorea | 2007/08/11 13:55

ボイコットは賛成ですが、これまでオリンピックを目指してがんばってきた選手の人たちが気の毒です。どこか別の場所でやる提案も同時にした方がいいと思います。なにしろ四年に一度のことですから、ここで出場できないともう二度とチャンスの巡ってこない人もいますからね。アテネでもう一回やるってのは駄目でしょうか?

投稿: 苺畑カカシ | 2007/08/11 17:05

フランスがすぐに手をあげますよ。

投稿: | 2007/08/11 19:13

俺はシナリンピック開催して世界中に中国の醜態が公開されたほうがいいと思います

投稿: クルト | 2007/08/11 21:55

中国の食の安全性もですが、日本も信用出来ません。参院農水委員会で共産党議員が、家畜飼料のカビ毒汚染問題で質問してます。カビ毒関連を検索すると様々な毒性が有る事が理解出来ます。国は汚染は無いと否定してますが、飼料メーカー関連会社等は、高濃度のカビ毒に汚染されている事を認めるように、家畜被害を改善する為のカビ毒吸着剤の輸入販売種類を急増させています。ワクチンや抗生物質投与でも死亡被害が改善されないのに、カビ毒吸着剤の多量添加で改善された農場が多数有ります。発癌性有る危険な問題です。中国だけが危険では有りません。

投稿: 匿名です | 2007/08/14 11:30

7月にソウルで「中国はオリンピックの前に人権問題を解決せよ!」というストリートパフォーマンスを見ました。中国人の警察扮する人が2人の白頭巾をかぶせられた脱北者役の男の人たちを縄で縛ってときどき殴りつけるのです。改めて中国はそんな国だったっけ?と思わされました。夕べTVでみた農村の青年シンさんや、昔うちにホームステイしたシュイさんはあんなにいい人だったのにな、と思いました。最近わたしは中国の悪口をよく言うようになりましたよ。なんか寂しいな。

投稿: miporin | 2007/08/21 01:22

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