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2010/05/20

亀井静香の「大きな政府」論を批判する (2)

今日は、昨日の「亀井静香の「大きな政府」論を批判する(1)」の続きです。

「借金を減らせばいいけど税収は増えない。緊縮財政なんてできないから、一時的に借金するしかない」

今の経済情勢を真摯に受け止めれば、確かに、今後しばらくは大幅な税収増は期待できない。
かといって、社会保障関係費だけで毎年1兆円も自然膨張している状況下では緊縮財政もできない。
それに民主党マニュフェストの目玉である「子供手当」等々を勘案すれば、亀井の発言は、現実を反映していると言える。
が、だからと言って、収入は少ないけど支出は減らせない、だから借金をしよう、とはならない。

ちょっと考えてほしい。
家計が苦しければ、まず支出を減らす努力をする、常識的な人は。
無駄な支出を徹底的に減らして、それでもやり繰りできなければ、やむを得ず借金をする。
これが当たり前である。
が、亀井の発言には「無駄な支出を減らす」という意欲がまったく感じられない。
借金を増やすことに対する危機感がまったくない。

家計が苦しければ、収入を増やす努力をする、普通であれば。
その数少ない収入増の一つが消費税の引き上げなのだ。
が、亀井は、それを頭から否定する。
おそらく亀井の頭の中にあるのは、国債の増発と公共事業投資の大幅拡大。
それによる景気浮揚と税収増。
これは彼の変わらぬ持論である。
が、ここには1990年代の「失われた10年」に対する反省と総括がまったくない。

亀井が政府・自民党の中枢にいた1990年代。
政府は、バブル崩壊によって沈没寸前になった我が国経済を立て直すために国債を増発し、公共事業を拡大した。
それによって景気を浮揚させ金融システムの不安を解消しようとしたのだ。
特に小渕首相は、1998年と99年に相次いで財政出動による公共事業中心の大型経済対策を打ち出し、国債の発行額を大幅に拡大させた。
小渕は「私は世界一の借金王」と自嘲気味に語ったほどだ。
が、それでも経済は一向に回復せず、日本発の「金融恐慌」までが囁かれる状況だった。
事実、バブル崩壊後、実質国内総生産(GDP)は、1992年の466兆円から2009年の525兆円と1.13倍の増加にとどまる。
これに対し、国と地方の長期債務残高は、1992年度末の301兆円から2009年度末には825兆円と2.7倍に膨らんだ。
この間、日本経済が順調に成長したのは2002年から2007年にかけてだけである。
これは、「改革なくして成長なし」と声高に叫び、古い政治・経済・社会の体制変革に果敢に挑んだ小泉政権の時期に重なる。

このことは何を意味しているのか?
それは、亀井の思い描く「国債の増発と公共事業投資の大幅拡大」では日本経済の復活はない、ということを既に歴史が証明しているということだ。
亀井は、かつて、次のような主旨の発言をしていたと記憶している。
高速道路や新幹線を整備することは、国家の資産を増やし国民の生活を豊かにする、
これを、経済合理性だけで割り切ってはいけない、
と……
確かに、これも一理ある。
が、今を考えると、そんな理屈は通用しない、と私は思う。
赤字を生み出し続ける高速道路や新幹線を作ることが、いかに国家や地方を疲弊させるか、そこにはこのような視点が欠落している。
それは、空港整備特別会計によって都道府県の2倍以上になった空港の現実を見ればよく分かる。
今年3月、98か所目の空港として開港した茨城空港は、定期便1日1往復だけ。
おそらく、この空港は、茨城県の重いお荷物であり続けるだろう。
全国98空港のうち、その多くが赤字である。
また、これらの空港に国策によって就航させられたことが、日本航空(JAL)破綻の一因になった。
積極財政派は、このことをどう説明するのか?

今年3月末時点の国の長期債務残高は約627兆円。
地方の約198兆円を合わせると、借金総額(長期債務)は825兆円になる(財務省見通し)。
これは対GDP比で158%になり、ダントツの世界第1位。
短期債務を含めると、その比率は189.6%にまで跳ね上がる(財務省資料)。
つまり我が国の借金は、国内総生産の2倍近くに膨らんでいるのである。
が、我が国では債務危機(財政危機)の意識は低い。
最近、我が国より債務残高の対GDP比率がはるかに小さいギリシャを始めとする南欧諸国で債務危機が叫ばれている。
にもかかわらず我が国にとっては対岸の火事。
なぜかと言えば、我が国の個人金融資産残高は2009年3月末時点で1,410兆円(日銀の資金循環統計)もあるからである。
要するに、国の借金を国民の金融資産が支えている、だからデフォルトに陥る可能性が極めて低い。
そういう構図があるから亀井のような「一時的に借金するしかない」というような安直な発想が出てくるのである。
が、ほんとうにそれでよいのだろうか?
答えは「否!」である。

国民の金融資産は、今後、間違いなく目減りする。
その原因は、短期的には中国人民元の自由化と元高である。
人民元が自由化(おそらく10年以内)されれば、利子がほとんど付かない円預金より金利の高い元預金が好まれるようになる。
元高が進行すれば、なおさらである。
長期的には急速に進む我が国の少子高齢化である。
少子高齢化が進めば、我が国の個人金融資産残高は確実に減少する。
つまり、このまま事態が推移すれば、「国の借金を国民の金融資産が支える」という構図は、遠からず崩壊するのである。

国家財政を再建することは極めて重要である。
そのためには、歳出をできるだけ押さえ、歳入を増やすことが肝要である。
こんなことは誰でも分かる。
が、だからといって、財政を緊縮させればよい、消費税を上げればよい、というものではない。
性急な緊縮財政と消費増税は日本経済をさらに萎縮させる可能性があるからだ。
そういう意味では、亀井の主張も分からぬでもない。
が、前述したように、無定見の国債増発と財政支出の拡大は、借金を増やすだけで国民経済は停滞したままで終わる。
そこに待ち構えているのは「滅亡への道」である。

今、必要なのは「官の徹底した改革」である。
国も地方もその裏に膨大な無駄を抱えている。
社会保険庁や農林水産省で発覚した信じられないような税金の浪費。
これには、それぞれの労組も深く関わっていた。
「官」とも「労」とも一線を画した政治勢力による「官の改革」
今こそこれを断行しなければならない。
また、財政システムの変革も避けて通ることはできない。
亀井を含む鳩山連立政権は、選挙のために、昔の自民党と同じ手法で予算をばら撒こうとしている。
このような手法はもはや許されない。

政府は、高成長の環境づくりに注力しなければならない。
「官の改革」と「財政システムの変革」により支出を合理化(緊縮ではない)し、国と地方の負担を軽減する。
法人税を10%引き下げ、企業の投資意欲や国際競争力を高める。
戸別所得補償というばら撒きではなく、日本農業の競争力(ブランド力)を高める。
補助金のカットなどのマイナス政策と、地方分権や税源の委譲などのメリットをもたらす方策とをセットで実行し、地方の中央依存体質を改めさせる。
それによって地方を活性化させる。
そして、以上の施策を実行した後で10%の消費増税を断固として実行する。

そうすれば、支出は適正化され、収入は増える。

我が国を立て直すには、何よりも成長分野に予算を重点配分することが肝要である。
LED(発光ダイオード)は日本で発明されたのに、LED薄型テレビでは日本メーカーは完全に韓国の後塵を拝している。
こんなことは二度とあってはならない。
農業も、中国や台湾では日本の農産物が人気を博している。
日本農業の持つ高い品質力や商品開発力をもっと支援するべきである。

「国債の増発と公共事業投資の大幅拡大」
この亀井の主張は時代錯誤もはなはだしい。
国債を増発するために、郵貯や簡保の預け入れ限度額を引き上げるなんて「ふざけている」としか言いようがない。
「官と財政システムの構造改革」、それによる高成長の実現。

我が国の進むべき道はこれしかない。

(文中敬称略)

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コメント

復活おめでとうございます。
最初からきついと思いますがオブラートに包んでも残念ながら小泉改革を叫んでも国民の大半はもう耳を傾けないでしょう。アメリカのグローバルスタンダードを日本が受け入れ構造改革を国中で起こすなどは誰も耳を貸さない。坂氏が言っていることは理解できるし本質をついていますがこの市場原理主義で物事を進めようとしてもこの特殊な日本ではうまくいかない。
 私は日本の労働人口の激減、円高、エネルギーの高騰、資源の高騰等を解決するためには都市圏の容積率を劇的に緩和し労働生産効率、エネルギー効率、居住空間の大幅拡大をするための大規模な都市再開発を数百兆円規模のインフラ整備で行うしかないと思います。基本は物、資本、財を生産するための効率を徹底的に考えた都市開発、インフラ整備をする。
 労働生産効率、エネルギー効率を極限にまであげ高付加価値のあるものをつくる。日本でしかできない高付加価値の物を労働生産効率、エネルギー効率を上げることにより他国の追随をゆるさないシステムを官民をあげてつくれば
労働は外国に逃げません。都市部の容積率を劇的に緩和し1世帯当たりの居住空間を大幅に拡大し安価な値段で住めるようになれば消費は劇的に伸びます。
 要するに労働生産効率、エネルギー効率を極限にまであげるための仕組みをつくっておけば後はほっておいても新しい商売は生まれるし外国の資本も集まってきます。今円が強いこの時期に、千四百兆円という国民のお金があるうちにやり遂げること大事に思います。他国にないものをつくる、他国に真似ができないことをする、日本人しかわからない複雑なシステムをつくる。それが日本の進むべき道ですし日本人にあっています。
 

投稿: ななしの経営者 | 2010/05/20 18:10

金の巡りが悪いからデフレ不況が改善しない。
とかよく言いますよね。
なら、400万人いる公務員の給与を全額、使用期限付きの商品券で支払ったらいいと本気で思います。
日本国内でしか使えない。支給されてから半年程度で使えなくなる。
こうすれば、40兆円がリアルで市場に流通しますよw

投稿: しる | 2010/05/20 20:59

60年代初頭ですから、今から50年近くも前のことですが・・・ポルシェを破ったという伝説のプリンスR380というレースカーがありました。
その製造元である「プリンス自動車工業株式会社」(戦時中はゼロ戦のエンジンを造った会社)で私の父親は資材課長・人事課長を勤めておりました。
 
だけどウチの父親は「高校出」ですよ!・・・大学卒業ではありませんでした。
 
しかし現在の大企業で「高校出の人事課長」などどこにも居りませんよ。
それだけ技術が進歩し・社会ではより高い学力が要求されているのです。
亀井大臣のように「製造業の量的拡大策」だけでは日本経済と産業は世界に太刀打ちできないということです。
金融証券業とまではいかなくとも・・・
新時代のサービス産業を開拓しなければいけませんね。
日本経済の復活には・・・・

投稿: 柳生大佐 | 2010/05/20 21:54

将来の公共事業は自然に発生するものです。近代国家が都市機能を維持していく上に於いては必要不可欠、新しい生活機能の創生に対する公共投資も次世代を真面目に考えることで出て来ます。過去にやった放縦な箱モノ・道路・飛行場などの公共事業などは出来る経済状況にはない事を政治家も事業家も知るべき。

安易な政治家は道州制で乗り切れると考えているようですが、地方主権と騒ぐ連中は三権も国防も頭の中が空っぽの状況、只仕分けをすれば予算が出てくる??自民党時代から叩かれ縮小傾向にあった霞が関官僚は自治労・日教組・公労に妥協を強いられ抵抗力が政治家より弱いがために「全ての官吏」の中で「悪現場官吏が良質の官吏」を放逐、良質の官吏の逃げ口が「特殊法人」これが大きくなりすぎたのを与野党とも見逃していたのです。

自民党に責任をなすりつけてる民主党に中も同じ類の議員がゴマンと居るのです。
構造改革は与野党の問題では無く日本全体の問題として取り組む問題で有る事を政治家も官僚も真剣に議論を尽くすべきです。

官僚の定年までの勤務・職業によっても事なります。自衛官が65歳まで、警察官が65歳まで勤務出来るわけが有りません。その他の官吏が全員定年まで勤め上げるとこれも膨大な予算を食う事になるでしょう。減らすか減給をするより仕方が無いのです。

最低限の我慢を国民は共有し、下らない法案を作り公務員を増やす様な事を国会議員がやらないことです。人間教育で処理できるものを、多すぎる国会議員が市役所の役人がやる様な事までやって茶を濁す、そして現場を見ないマスコミ製造の民意に汲々としている。

飛行機・鉄道は只、選挙区で顔を売るだけが仕事、どんな業種の仕事が有るのかも知らない、お嬢ちゃん・アンちゃん・運動家と殆どが自分の金を動かした事のない人が人気商売の様に「政治会」を楽しんでいるとしか思えない病気、ここから脱出するのは国民一人一人の向上心を養う事なのですが・・・経験のない現在に生きる人達の我慢の問題でも有ります。

義務と権利と我慢が出来るのが人間に与えられた動物と違う点、人間でありたい、日本人で居たいと思うなら自立できる国に出来る指導力のある政治家を誘導・作れる様な見識を養う努力をしたいと思っています。

投稿: 猪 | 2010/05/21 11:18

小泉内閣時に多少景気が良かったように見えたのは政治のおかげではなく、アメリカがバブリーだっただけでしょう。。
構造改革などちまちました事ではらちが明かないですよ。小泉さんは痛みに耐えろと言い続けましたが、いつまで国民は無用な痛みに耐えないと行けないのでしょうか。

そんな話より、積極財政派のお話の方が私は希望が持てます。
http://blogs.yahoo.co.jp/eishintradejp/18448878.html

投稿: ななし | 2010/05/22 16:58

廣宮孝信・小野盛司らは彩図者の札付きの左派経済論者。ただし一般には無名。
 
小泉内閣退陣から4年近くも経つのにまだ景気回復しない責任を問うバカがここにも来て居る。
それ以後・麻生や鳩山がいくらもバラマキをやってるのだから・・・
そろそろ「積極財政派の責任」を問うたらどうか?
 
国民は「国債発行しても景気が回復しない・国の借金増加の無用な痛み」に、いつまで耐えたらいいのか?
 
まぁ、輸出が好調な国はどこでも景気がいいよ。
しかし
オバマまでが「輸出を増やせ!(国内の)消費を控えろ!」と言ってるのだから・アメリカ人にはもう過剰な消費を期待できない。
「積極財政はもうコリゴリ」
だってさ・・・
だから
日本の景気回復は誰がどんなことをやろうと前途多難だね。
 
サブプラ破綻のときには我々自由(保守)経済派は
左派経済論者から「アメリカ国民の過剰消費」を市場原理主義などと散々非難されたが・・・
ここに来ている「左派経済の野良犬」や三橋貴明・廣宮孝信らは
「過剰消費で景気が回復する」と言っている。
(らしい・・・)
一体・・・廣宮孝信や三橋貴明ら左派経済論者は
過剰消費するな! と言いたいのか?
過剰消費しろ! と言いたいのか?
ハッキリしろよ!

投稿: 柳生大佐 | 2010/05/22 20:30

竹中氏のスタンドプレーは、経済学業界を相当苛立たせたんでしょうけども、
批判の結果、出てきたのが金融の民間市場までも悪化させるような信じられない法案ですよ。
別に政治家は経済学に則って政治やってるわけじゃないんだから…。
小泉氏は政治改革の一環として経済政策を行っていたのに、
その文脈が驚くほどに見えていない学者が多いですね。
「積極財政」というのも学者が考えてるようなものではない。

投稿: h | 2010/05/22 23:37

小泉政権の改革は労働者への分配が増えなかったことが問題なのです。そこが事業者の方ばかり向いている自民党の限界ともいえます。しかしながら、対抗すべき民主党とその支持団体である労組はもっと罪深い。構造改革をいいながら、既存の正社員の雇用維持と老人福祉といった既得権益層への分配を重視しています。
亀井氏のいうことはマクロ経済としては間違っていないのですが、政府部門や高齢者福祉、年功序列のような不効率を解消できないことが問題です。それに加えてより問題なのは、金を特定の組織に分配することで票を得るという利益誘導政治だという点です。どこにどれだけの金を分配するか、正当な理由を説明する理屈とビジョンが欠けているので駄目なのです。


>過剰消費するな! と言いたいのか?
>過剰消費しろ! と言いたいのか?
しょせん程度問題ですが、今はデフレなので(バブル以降ずっとですが)あきらかに需要(消費)不足なのです。ですからいまを基準にするなら過剰消費しなくてはなりません。企業は設備投資してくれないし、個人は若年層には金がなく高齢者は国債ぐらいしか買わないので、結局国債を発行するぐらいしかないのです。残念ながら経済学の教えるところによると、痛みに耐えれば耐えるほど痛みが激しくなるだけなのです。どの程度国債を発行するとどの程度インフレが起こるのか金利が上がるのかはある程度予測ができ、コントロールができるので適切なインフレ率(2~4%か?)を日銀に義務づければよいのです。


投稿: ぷぺぷぺ | 2010/05/29 02:07

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