踊る山拓と6者協議合意
先月初旬の自民党元副総裁・山崎拓氏の北朝鮮訪問は、その意図もまったく不明で、もちろん何の成果も生まなかった。
あったとすれば、日本の政界、特に与党内にも北朝鮮の工作に乗せられる人物がいるということを満天下にさらしたことくらいだった。
ところが、である。
今月10日に発売された中央公論3月号に掲載された山崎氏の寄稿でその真意が明確になった。山崎氏は“米朝妥協、日本はバスに乗り遅れる”と題した寄稿文の中で次のように書いている。
電撃訪朝の真意を今こそ語ろう 米朝妥協、日本はバスに乗り遅れる
中央公論3月号
山崎氏はまず「『北』は国交正常化を望んでいる」とした上で、
「日本の外交原則は国連中心主義、日米同盟堅持、アジア重視の三つだ。いずれの原則に照らしても、北朝鮮と対話しないままでは済まされない。ならず者国家とは国交を結ばないという態度をとり続ければ、拉致問題も永遠に解決しない。現政権は倒れかねない。それどころか北東アジアは永遠に不安定のままだ。
現状では日朝の間のパイプは閉ざされている。私はなんとかパイプを通したいと思い、議員外交を敢行した」
と述べている。
この山崎氏の主張は一見もっともらしく見える。
が、ここにおいては、北朝鮮が「拉致問題は解決済み」とする一方で、「日本が朝鮮半島の人々を拉致した問題は解決していない」と“過去の清算”を要求していることが抜け落ちている。
確かに北朝鮮は、わが国との国交正常化を望んでいる。が、それは“過去の清算”、
つまり巨額の無償援助をわが国に要求しているのと同義なのだ。しかも、拉致問題の解決についてはまったく担保されていない。
要は、北朝鮮との対話を重視し、国交正常化を優先するということは、北朝鮮の現体制を延命させ、逆に拉致問題は永遠に解決できないという状況を生み出すことなのである。
山崎氏と同じような主張は、野中広務・元自民党幹事長や辻元清美・元社民党政審会長、近藤昭一民主党衆院議員なども展開している。
私は、これらの人々は物心共に北朝鮮と結びついていると思っている。山崎氏も同様だろう。
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ところで、1月の山崎氏の北朝鮮訪問、そして今回の中央公論誌上における論文の発表は綿密に計算された上でのものだったと断じざるをえない。
北朝鮮と、それに乗せられた山崎氏の言動は、今回の6者協議の合意を見越してのものだったと見て間違いなかろう。


今回の合意では、核施設の稼動停止と引き換えに協議参加国が重油5万トンを北朝鮮に供与することで合意した。北朝鮮が本当に核施設を停止させるかどうかは定かではないが、昨年末からそれまでの先軍政治(軍事第一主義)から民生部門重視へ転換するような兆しも見え始めていた。
つまり、さすがの金正日体制も、下級兵士たちが栄養失調に陥るようではこれ以上続けられなくなったということだろう。そこで、一時的に(戦術的に)妥協(後退)しても、とりあえずは燃料(重油)と食糧を手に入れる――これが北朝鮮の思惑である。
ここで重要になるのがわが国・日本である。わが国は拉致問題に進展がない限り対北朝鮮制裁を解除しないという立場である。が、6者協議で合意が成立すれば、国際的圧力を前にして、日本も対話を拒絶できない。燃料(重油)や食糧の支援も当てにできる。
さっそく韓国は、北朝鮮支援は6者協議参加5カ国が等分に負担すべきだと主張し始めた。国際世論も「対話による解決」で動き始め、わが国内でも「このままでは日本が孤立する」という声が上がり始めた。
まさに北朝鮮の思惑どおりである。
この北朝鮮の思惑、北朝鮮の書いたシナリオどおりに演技した――演技させられたのが山崎氏である。
今、山崎氏が言う「バスに乗り遅れるな」式でわが国が北朝鮮支援と「対話による解決」に乗り出せば、完全に北朝鮮の思う壺である。北朝鮮は、拉致問題を棚上げした上で国交回復=“過去の清算”=巨額の無償援助を持ち出してくるだろう。
ここにおいて、拉致問題の解決は永遠に不可能になる。
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山崎氏を始めとする「対話による解決」派は大きな勘違いをしている。“対話”が成り立つのは、相手が国際常識を有している場合のみである。
北朝鮮は公正や正義とは無縁の“ならず者国家”である。偽札や覚醒剤を主たる輸出品とし、他国民を暴力的に誘拐して平然としている国家である。指導者は贅沢三昧の暮らしに明け暮れ、一方で何十万人もの国民を餓死させている国家である。
このような国家と“話合い”など可能なのであろうか???
安倍晋三首相は14日の衆院予算委員会で、山崎氏の中央公論誌上での「米朝妥協、日本はバスに乗り遅れる」という発言について、「バスに乗って何を得ようとしているのか、と言いたい。拉致は日本人の生命がかかっている大切な、譲ることができない問題だ」と批判した。
これは、まったく安倍首相の言うとおりである。バスに乗って得られるものは何もない。
“ならず者国家”は延命し、我が物顔で無理難題を押しつけてくるだろう。
安倍内閣は、はっきり言って内外から舐められている。ここでふらつくようでは「前途は暗い」と言わざるをえない。
日本政府の毅然とした対応を望む。
参照:首相、山崎拓氏の「バスに乗り遅れる」発言を批判 (朝日新聞)
関連エントリー:妄執の虜・山崎拓
【追記】
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