草の根の抵抗と凶暴な中共
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中国はジャーナリストにとって世界最大の監獄 国境なき記者団
北京オリンピックと空前のバブル経済に沸く中国だが、オリンピック景気やバブルの恩恵に無縁の人々の間で、今、中共体制への抗議・抵抗が静かに拡大しているようだ。
昨年までは、失地農民を中心とする暴動・騒乱が中心(年間8万件以上)だったが、今年に入って目にするニュースを読むと、抗議・抵抗の手段がネットや海外メディアを利用する、あるいは正式に法的手続きを踏む、などの形に変わってきていることが分かる。
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以下は、目に付いた記事からの引用である。
中国の湖北省天門市で今月7日、地元建設会社幹部の魏文華さん(41)が都市管理局の取り締まり隊員による民衆暴行を携帯電話で撮影したところ、袋だたきに遭い死亡したことが報じられ、波紋を広げている。米国のCNNテレビが、「都市管理局は露天商の取り締まりや交通整理などが任務だが、市民へのひどい仕打ちでも有名」と報じるなど、今回の事件は外国メディアの注目も浴びている。
魏さんは事件当日、天門市内で乗用車を運転中、都市管理局の取り締まり隊員50人余りがごみ投棄反対デモを繰り広げていた市民を殴打している場面を目撃し、携帯電話で写真撮影を始めた。ところが、それに気付いた取り締まり隊員から5分間にわたり暴行を受け、現場で意識不明となり、病院に収容されたが死亡した。
~中略~
中国の大手ポータルサイト、新浪網に掲載された魏さんに関する記事には、17日午後までに10万件の書き込みがあり、「都市管理局員はマフィアよりたちが悪い」などという批判が集中した。
中国政府は今回の事件を受け、天門市職員一人を解雇し、100人余りに対する取り調べを進めている。CNNテレビは、過去には都市管理局員との衝突が起きても被害者は泣き寝入りだったが、インターネットが普及したことで状況が変わったと報じた。
役人の暴行撮影した市民、袋だたきで死亡 (朝鮮日報)
【ロンドン=木村正人】26日付の英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)によると、中国で、複数政党制による民主的選挙を求めて南京市の元大学教授が新党「新民主党」の結成を宣言した。また陜西、黒竜江、江蘇の3省と天津市では、農民らがインターネット上で、地方当局に収用された土地の返還を要求している。同紙はこれらの動きについて、「中国共産党の独裁支配に対する2つの挑戦」として、当局が農民らを拘束するなど警戒を強めていると伝えた。
~中略~
一方、今月12日、北部の陜西省で、農民7万人を代表して農地など1万ヘクタールの所有権を主張する公開質問状をネット上に掲載した3人が4日後の16日、国家転覆扇動の疑いで拘束された。その約1週間前には、東北部の黒竜江省で、小作農4万人を代表して10万ヘクタールの土地の返還を要求した指導者が拘束されている。
~後略~
中国で「新民主党」結党を宣言 地方では土地返還要求運動 (産経新聞)
【北京=野口東秀】「海外メディアと接触するな」-。北京の当局者は、国家政権転覆扇動容疑で逮捕した男性A氏を釈放する際、こう警告したという。昨年12月に同容疑で逮捕した著名な民主活動家の胡佳氏(34)の妻は軟禁され、外部からの連絡・接触はほぼ不可能だ。いずれも海外メディアとの接触を断つためとみられ、他の活動家に対しても同様の措置が講じられている。北京五輪が近づくにつれ、活動家への締め付けが一段と強化されているようだ。
A氏は五輪に向けた再開発で自宅を強制撤去され、これに抗議していたが、昨年9月に国家政権転覆扇動容疑で逮捕され、「公安局の秘密の場所に拘束された」(同氏)後、今月初旬に釈放された。
釈放は「起訴できる内容がないから」(A氏)だという。拘束中、海外メディアとの接触や五輪反対の文書のインターネット上での掲示に関連、当局者は「おまえは国家(の顔)に泥を塗っている」と批判した上で、「売国奴だ。五輪を持ち出すな。五輪はとても敏感(な問題だ)。(家屋の強制)撤去は撤去。五輪と結びつけるな」と強調。さらに「取材を受けるな、文章を発表するな、(地方からの農民ら)陳情者と交流するな。(警告を)聞かないならいつでも拘束する」と警告したという。
~後略~
北京当局、活動家に「五輪は敏感。メディアと接触するな」 (産経新聞)
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以上の記事を読まれて、どう思われたであろうか。
たまたま通りかかって、都市管理局員による暴行現場を撮影しただけで殴り殺される。言葉を失うほどの凶暴さ、まさに「都市管理局員はマフィアよりたちが悪い」。
この都市管理局員や警察官の、民工(出稼ぎ労働者)など法的立場の弱い人たちに対する暴行・恐喝は日常化していると言われる。
しかし、インターネットが普及したことで被害者が泣き寝入りしなくなった、これだけでも大きな変化である。中共の、人を人とも思わない専横ぶりも、段々と通用しなくなっていくだろう。
それにしても、二束三文で取りあげられた土地の返還要求を、ネット上で公開しただけで「国家転覆扇動」の疑いで逮捕される。自宅を強制撤去されたことに抗議し、海外メディアと接触、ネット上に「五輪反対」の文書を掲示しただけで「国家転覆扇動」の疑いで逮捕される。
北京オリンピックに向けて華やかに変身しつつあるかに見える中国だが、その中身は相変わらず「暗澹たるもの」ということだ。
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ところで気になるのは、上記の3本の記事のうち、2本が欧米メディアからの引用という点だ。
なぜ、わが国のメディア(産経新聞を除く)は、もっとこのような中共による人権弾圧を報じないのだろう。
メディアは本来、基本的人権の侵害には敏感なはずだ、国の内外を問わずに。
記事を読めば分かるように、中共当局は海外メディアとネットを恐怖している。ということは、わが国のメディアが報道することは、中共による人権弾圧に対する大きな牽制になるはずだ。
おそらく日本のメディアは、文化大革命当時に、朝日新聞を除いて「追放処分」にあったことがトラウマになっているのかもしれない。
しかし、隣国で起きている深刻な人権弾圧を報じないということは、メディアの責任放棄とも言える。
※産経だけではなく、昨年までは讀賣新聞もけっこう上記のようなニュースを報道していたのだが、今年に入ってプッツリ。やはり間近に迫った北京五輪に配慮しているのだろうか?
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産経新聞の福島香織さんによると、土地を強制収用された農民たちは、当局側の村長を解任し、民主的な選挙で自治組織をつくり、農地を奪還をしていく運動を進めているそうだ。ネット上にも主張や情報を公開し、全国的な支持を仰いでいる。
このような行動は、民主活動家の地道な支援と指導によるものだろう。だから中共当局は、民主活動家の拘束・隔離に躍起になっている。
ちなみにネット上で公開された情報は、ブログや掲示板上のコピー&ペーストによって、またたく間に広まっているそうだ。
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中国の農民たちは抗議・抵抗に立ち上がった。これは中国民主化への第一歩と見て間違いない。
今までの歴史を振り返ると、国が豊かになると民主化に向かう傾向が強い。が、ただ豊かになるだけでは政治体制は変わらない。アラブや中央アジアの石油成金の国々を見ればそれが如実に解る。
つまり、カネが入っただけでは意識は変わらないのだ。
やはり、工業化の進展による人口の流動化、様々な階層の出現と分化、これによって生まれる多様な価値観と利害関係、これが、豊かになるにつれて「自由への欲求」として噴出するのだ。
中国では「改革・開放」によって一部の富裕層とかなりの規模の中産階層が生まれた。が、まだ大部分は貧しいままだ。ただ、この貧しい、取り残された層にも、社会の近代化によって様々な情報が伝わるようになった。
都市と農村の格差、沿海部と内陸部の格差、都市部の持てる者と持たざる者の格差、一部企業家と共産党官僚の癒着、共産党官僚の特権と底なし沼のような腐敗・堕落、これらの情報が全国的に知られるようになった。
教育レベルも上がり、共産党官僚、大企業家、中小企業家、零細企業家、ホワイトカラー、労働者、出稼ぎ労働者(民工)、富農、貧農、大商人、小商人、知識人、学生、中国社会も様々な階層に分化されてきた。昔のような共産党官僚、労働者、農民、零細商工者、党の御用知識人という単純な構成ではなくなっている。
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社会の急速な変化によって表れた民主化の要求、あるいは失地農民や環境汚染に苦しむ人たちの抗議の動き、中共はこれらを強権によって抑え込んで来た。
が、これらの、水が川上から川下に流れるような動きを人為的な力で止めることはできない。
それを中共指導部も解っている。だから経済成長至上主義からの脱却と、「調和のとれた持続可能な発展(科学的発展観)」を繰り返し強調し、国民の信頼をつなぎとめようとしているのだ。
が、現実は遅々として進まない。地方の特権官僚が党中央の指示に従わないのだ。どこまで行っても経済成長至上主義。成長率は毎年10%を超え、不動産も株も高騰、農地の強制収用も後を絶たない。
それでも中共は、工業化の進展、経済の発展に伴う体制の近代化を避けては通れない。
昨年10月に施行された物権法がその典型だろう。この法には、私有財産権保護が盛りこまれ、農地使用権(農地請負経営権)も用益物権として位置づけられ保護の対象となった。農地の収用は、あくまでも「公共の利益」を目的とし、なおかつ、農民に対する土地補償、移転補償、社会保障を十分に行うことが規定された。
農民たちが、この法律によって勢いを得たのは間違いない。特権官僚たちがこの法律を有名無実化しようとすれば、国民の党に対する信頼はなくなるばかりだ。
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では、中国は驚異的な経済発展によって豊かになった、様々な階層が出現・分化した、経済発展に合わせて「法」も整備されてきた、だから民主化される、のだろうか?
答えは「否」である。
私は、かつて「血で獲得した政権が中国共産党だ。政権を転覆させたいなら、相手は血の犠牲を払うしかない」という中共関係者の言葉を紹介した。
民主化は共産党官僚にとって「死」を意味する。特権を失い甘い汁を吸えなくなる。
だから党中央が「調和のとれた持続可能な発展」を強調しても、特権官僚たちは無謀でいびつな経済成長至上主義にこだわるのだ。
株や不動産の高騰に象徴されるバブルは、いつか必ず崩壊する。環境を破壊し、資源をがぶ飲みする無謀極まりない経済成長も遠からず行き詰る。
それによって大打撃を被るのは直接的には中国の金融機関だが、もっとも深刻な被害を受けるのは都市の中産階層であり、中小・零細企業家であり、貧しい出稼ぎ労働者(民工)たちである。
現在でも「今ほど共産党が恨まれている時はない」と言われるほど、中共は怨嗟の的になっている。これにバブルの崩壊と経済の失墜が加われば社会は大混乱に陥るだろう。
で、この大混乱が民主化の方向に収束されるかというと大いに疑問なのだ。
その最大の理由は、人民解放軍が「国家の軍隊」ではなく「党の軍隊」であるからだ。「国家の軍隊」であり、シビリアンコントロールが機能していれば、軍も国民に銃口を向けることに躊躇する。が、「党の軍隊」であれば、国民の窮状など関係がない。平気で国民に向かって発砲する。それは、昨年のミャンマーの例を見ればよく解る。
もう人民解放軍自体が巨大な利権集団になっている。中共と人民解放軍はメダルの裏表なのだ。だから民主化は、彼らにとっても「死」を意味するのだ。
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中国共産党(中共)が中国を支配する正統性は二つしかない。
一つは、中共が列強による支配(特に日本の侵略)から中国を解放したということ(だから反日意識を煽る)。
もう一つは、中共の指導によって国家が繁栄の道を歩み、国民も豊かになりつつあるということ。
が、中共が煽る反日意識も、経済の崩壊による国民生活の窮状が現実になれば、何の効果も発揮しない。逆に「反日」が中共に対する鬱積した憤懣に火をつける可能性の方が高い。
つまり、バブルが崩壊し、経済が失墜すれば、中共が中国を支配する正統性は二つともなくなってしまうのだ。
朝日新聞の編集委員・山田厚史氏は、かつて次のように書いた。
13億人の中国が混乱すれば世界が揺さぶられる。最大の問題は失業だろう。高成長の現在でさえ3億5000万人の「不完全就労」がある、と推計される。高成長が挫折すれば、億単位での失業の増加も予想される。職を失った人が周辺のアジア諸国に流出し、人口流動に拍車がかかる。
08年の北京五輪、10年の上海万博までは成長は持続する、と見られているが希望的観測の域をでない。桁外れに大きな隣国の混乱は他人事では済まない。人民元切り上げ問題がはらむ中国リスク(AERA 2005年5月16日号・抜粋)
風船はパンパンになるまで膨れあがり、極限の状態になったところで、「針の一刺し」で完膚なきまでに破裂してしまう(讀賣新聞中国総局長・藤野彰氏・当時)。
バブルを軟着陸させようとすれば人民元を大幅に切り上げざるを得ない。人民元を大幅に切り上げれば経済が持たない。かといって、バブルを放置すれば傷口はますます大きくなる。今でさえ脆弱な中国の金融機関は、天文学的な額の不良債権を背負い込み、奈落の底に落ちる。
つまり、下部構造が市場経済で上部構造が共産党独裁という、本来ならありえない今の中共体制は必然的に崩壊するのだ。
社会主義という計画経済(統制経済)なら、政治が経済を支配できる。が、市場経済は政治が介入できる幅が極めて狭い。下部構造が抱える矛盾を、政治が強制的に抑え込んでも矛盾が深化するだけなのだ。
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確かに中国では、農民を中心に、今の中共体制に異議を唱える動きが強まっている。
既に、2005年秋に広東省太石村で「民主化の小崗」(注-1)と呼ばれる農民の行動があった。
当局側に立つ村長が農地を不当に奪ったとして、村民たちが法に則ったリコール運動を展開し、罷免寸前にまで追い込んだのだ。それまでの「実力行使」や「直訴」と違うこの農民たちの行動は、彼らの政治的成熟を物語っている。
結局、民主化の「星火」になると期待されたこの運動は、最後は当局側の理不尽で強圧的な対応の前に挫折する。が、土地を強制収用された農民たちが、当局側の村長を解任し、民主的な選挙で自治組織をつくり、農地を奪還していく運動を進めている「今」につながっている。
そして、この農民たちの運動はネット上では全国的に支持されている。
ちなみに中国では、「村」レベルでは、全国66万カ所以上(2005年)で村長選挙に直接選挙を導入している。が、当局の干渉が激しく、実際は共産党の傀儡村長がほとんどである。
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中国では草の根レベルで「民主化」の動きがある。が、それは中共が絶対に許さない。
太石村の場合も、村民たちの運動に対し、中央政府は調査チームを送り込んだ。が、その後の対応は、運動に対して広がる支持を封じ込めるものだった。理由は「腐敗が省幹部らに及ぶことが分かったため」だと言われている。
やはり、「政権を転覆させたいなら、相手は血の犠牲を払うしかない」ということだ。
(注-1)「民主化の小崗」
安徽省は1978年、百年ぶりの大干魃(かんばつ)に見舞われ穀物生産は壊滅。農民たちは続々と上海などに物ごいに出た。被害を大きくしたのは、農民の労働意欲を奪った人民公社という集団経済制度だった。
同省鳳陽県の小崗村。村の二十戸からなる生産隊(人民公社の末端単位)の二十一人は同年暮れ、死中に活を求め密約を結ぶ。生産隊の田畑を各戸に分割、それぞれが生産に責任を持つ請負制の取り決めだ。人民公社制への反逆だった。
当時の華国鋒政権は通達で請負制を禁じ、党機関紙「人民日報」が批判キャンペーンを展開。これに対し、安徽省の万里・党第一書記(当時)は「人民日報は農民を食わせられるのか」と小崗農民を支持した。
79年、小崗生産隊は平年の四倍という穀物大増産を達成。80年5月、既に政権の実権を掌握していた鄧小平氏が高く評価したのを機に請負制は全国に広がり、やがて人民公社は崩壊する。
関連エントリ
1:中国【民主化の小崗】挫折
2:中国:農村から起こる地殻変動
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