小泉内閣を総括する
我が国の戦後政治において、一つの時代を築いた小泉純一郎内閣も、いよいよ終幕を迎えることとなった。
「小泉マンセーブログ」という、光栄なる称号を授かった当ブログとしても、その功罪を
総括しなければならない時が来たということだ。
ところで、私の評価を述べる前に、メディア、特に讀賣、朝日、毎日の三大紙が実施した世論調査の結果をお伝えしておこう。
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読売新聞が9月9、10の両日に実施した全国世論調査(面接方式)によると、小泉首相や小泉内閣の実績を全体で評価するかどうかでは、「評価する」が計66%で、「評価しない」計30%を大きく上回った
毎日新聞が9月1~3日に実施した全国世論調査(面接方式)では、5年5か月に及んだ小泉内閣について、「評価する」と答えた人が64%で、「評価しない」は34%だった。
朝日新聞が8月26、27の両日実施した全国世論調査(電話)では、小泉首相のもとで政治が「よくなった」と思う人は45%で、「悪くなった」の27%を上回った。
朝日新聞は調査方式が違い、設問内容にもニュアンスの違いがある。また、小泉内閣との距離間も各新聞社によって違う。
が、各紙に共通しているのは、小泉内閣を肯定的に評価する世論が、否定的なそれを
2倍近く上回っているということだ。
讀賣新聞によれば、2001年4月の発足以来の小泉内閣の平均支持率は56.0%で、
現行の調査方式となった1978年3月調査(福田内閣時)以後の歴代内閣の平均支持率では、細川内閣の67.2%に次いで2番目だった。
また、朝日新聞の調査でも、在任中の平均支持率は50%で、戦後の吉田内閣以降では細川内閣(平均支持率68%)に次ぐ高い人気だった。
細川内閣が、わずか9か月弱の短命だったことを考えれば、(世論調査上では)小泉内閣が戦後もっとも人気が高い政権だったということである。
反小泉の姿勢が顕著な朝日新聞でさえ、「不人気にまみれて退陣する内閣が大半のなか、政権末期でなお50%近くの支持を維持する内閣は異例だ。最近では、非自民の連立政権だった細川内閣が発足からわずか8か月後に57%で総辞職した例があるが、村山、橋本、小渕、森の各内閣はいずれも最後の支持率は不支持率を大きく下回った」と書いている。
では、なぜこんなに人気があったのか?
この点は、三紙ともバラバラである。
讀賣新聞は、小泉内閣が取り組んだ課題で特に成果を挙げたもの(複数回答)として、「郵政3事業の民営化」の43%が最多で、「北朝鮮問題」28%、「道路4公団の民営化」21%などが続いたとしている。
毎日新聞によれば、「良かったもの」は(1)北朝鮮から拉致被害者の一部を帰国させた51%、(2)郵政民営化18%、(3)積極的な不良債権処理9%-の順。
設問内容にニュアンスの違いがある朝日新聞では、「よくなった」理由を聞くと「首相のリーダーシップが強くなった」が42%でトップ。次いで「政治が分かりやすくなった」34%、「政治の進め方が速くなった」19%だった。
まあ、これは、選択肢の問題や質問の仕方、内容が違うので、答えや数字が異なるのはやむを得ない面もある。例えば、選択肢の項目が「北朝鮮問題」と「北朝鮮から拉致被害者の一部を帰国させた」では、回答者に与えるインパクトがまったく違う。
が、郵政民営化と(北朝鮮)拉致被害者の問題が評価の上位を占め、多くの人が、
首相のリーダーシップと「政治の分かりやすさ」を政治がよくなった理由として挙げて
いるのは納得できる。
では、私は小泉内閣をどう評価しているのか?
以下に、そのことについて述べる。
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郵政民営化をテコにして官の肥大化に歯止めをかけ、流れを逆転させた点は高く評価できる。特に、政・官・業の癒着構造にメスを入れ、税金をばらまき、その見返りを受け取るといった金権・派閥政治を崩壊の淵に追い込んだことは特筆ものだろう。
その副産物として、国や地方の建設談合や同和利権などが次々と暴かれるようにも
なった。
また、金融機関に公的資金を注入し、不良債権を強制処理させたことも見逃せない
成果である。おかげで、どん底に沈んでいた日本経済が去年あたりから一気に回復してきた。デフレ脱却も、あと一歩のところまで来ている。
が、金権・派閥政治を崩壊の淵に追い込んだのは、選挙制度の変更や首相権限の
強化といった、小泉内閣以前の改革によるところも大きい。
景気の回復も、経済界が血を流す努力をして、設備・雇用・債務という「三つの過剰」を解消したことを抜きにしてはありえなかった。
つまり、小泉首相の姿勢や内閣の政策が、時代の流れ、その要請とうまくマッチングしたから政治の改革や景気の回復が進んだのである。
もちろん、だからといって、小泉首相及び小泉内閣の果たした役割を過小評価するつもりはない。北朝鮮を電撃訪問し、拉致被害者の一部を帰国させたことも小泉内閣であればこそできたことである。
それまでは、「日本人拉致疑惑の解明を前提にしては対話の前進は望めない」(2000/01/30 日本経済新聞)という声の方が強かったのだ。今では考えられないが・・・
ただ、それでも、数ある小泉内閣の成果の中で、私がもっとも評価したいのは、任期中に毎年行った靖国神社参拝である。中には、参拝形式を問題にする人たちもいたが、
そんなことは本質的な問題ではない。
1985年の中曽根参拝までは、何の問題もなく行われてきた我が国首相による靖国参拝が、それ以降、中・韓、特に中国の難癖で中止されてきた。1996年7月に橋本龍太郎首相(当時)が社頭でチョロっと参拝したが、それさえ中国の圧力に屈してやめてしまった。
つまり、我が国首相による靖国参拝は、英霊に感謝の誠を捧げるだけではなく、我が国が主体性のある国家に戻ることができるかどうかの試金石でもあったのである。
この問題は、歴史教科書問題や従軍慰安婦問題と同様、我が国内の反国家的勢力が中・韓と連携して我が国を攻撃するという、あってはならない、世界でもめずらしい中傷・干渉であった。
小泉首相が、内外の反日勢力に屈しなかったからといって、中・韓や国内の反国家的勢力が我が国に対する攻撃をやめるとは思わない。が、もう難癖は通用しないという
ことだけは悟ったはずである。
このことは、我が国の今後にとって、極めて大きな成果であったと言ってよい。
安倍晋三官房長官(次期首相)も、同じ姿勢を貫くはずである。これも小泉首相の靖国参拝がなければありえないことだ。
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最後に、小泉内閣の負の部分に言及したい。
負の面は、やはり何と言っても「格差問題」であろう。が、誤解してほしくないのは、格差の拡大が、小泉内閣が推進した構造改革によって生じたわけではないということである。
今、問題にされている格差は、1990年代の後半に始まっている。それは2000年の森喜朗内閣のころに大きくなり、今もその水準は変わらない。
つまり、日本経済がバブル崩壊から立ち直る過程、すなわち日本企業が設備・雇用・債務という「三つの過剰」の解消を進める中で格差問題が発生し、大きくなってきたということだ。
リストラ、新規採用の抑制、非正規雇用者の増大、これらが格差問題の元凶であるが、
これは日本経済が回復する過程と表裏の関係にある。要は、景気の回復と同様に、
格差問題も小泉内閣の構造改革だけが原因ではないのである。
小泉内閣に責任があるとすれば、拡大していた格差を縮小する手立てを講じなかったということだろう。というか、未曾有の経済危機に直面して、景気回復を優先させざるを
えなかった。
もし、亀井静香氏が主張したように、財政出動による景気回復策を実行していたら、
景気回復も格差解消もどちらも中途半端、つまり虻蜂取らずになっていたはずである。しかも、財政赤字はよりいっそう深刻になっていた。
そういう意味では、小泉構造改革路線は総体としては間違っていなかったと思う。だからこそ、小泉内閣を肯定的に評価する世論が、否定的なそれを2倍近く上回っているのである。
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が、いずれにしても、格差がこれ以上拡大しないように手を打たなければならないのは事実である。非正規雇用者は、平成17年に1,633万人に達し、雇用者全体の3割を占めるに至っている。
(1)賃金格差
雇用形態別の年間収入は、正社員の453万円に対して、パートタイム労働者111万円、派遣社員204万円、契約・嘱託250万円となっている。
(2)雇用継続率が低い非正規雇用
1年以上の雇用継続率は、正社員が、90%を越えているのに対し、パートタイム労働者は70%台、派遣社員は、60%台となっている。
(3)能力開発機会の格差
非正規雇用者に対する企業の能力開発の意識は、4割以上が能力開発を重視していないと回答するなどかなり低い。
これらは、以下の諸問題を引き起こす。
(1)技術継承への影響、(2)社会保障への影響、(3)少子化への影響。
実際、製造業の空洞化が進み、若年労働者がサービス産業に流れていった米国では(1)の問題が深刻化し、経済成長のネックになりつつあるという。
私が、過去のエントリーで何度も指摘してきたように、正社員と非正規雇用者の格差を是正すること、非正規雇用者の割合を減らすこと、そして真の能力主義を確立することが喫緊の課題なのである。
三重県にある、某メーカーの最新鋭の液晶テレビ生産工場は、非正規雇用者の割合が実に45%に達するという。このような状態は、けっして正常とは思えない。
能力による格差は当然であるが、スタートラインから格差があるのは亡国への道であることを、経済人も肝に銘じてほしい 。
安倍新政権には、女性や高齢者の雇用促進と共に、正社員と非正規雇用者の格差是正に真正面から取り組んでもらいたい。
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※小泉内閣の構造改革は、まだ途上にあり、真の評価は3~4年後になると思う。したがって、今回は、第一次総括として受け止めてほしい。
また、産経新聞の「正論」で、佐伯啓思京都大学教授が、「(小泉政治は)一口で言えば、政治の見世物化であり、人気主義(ポピュラーイズム)への著しい傾斜であり、政治の情緒化である」と批判しているが、これほど的外れのものはない。
この件について書き出すと長くなるので、本格的な反論は別の機会にしたい。ただ、
次のことだけは指摘しておく。
短く核心をつくワンフレーズ、これこそ小泉純一郎の真骨頂である。ワンフレーズ・ポリティクスと非難する人もいるが、政治家にとって言葉は命である。ダラダラとしゃべり、
言語明瞭・意味不明などと揶揄されるのは、言質(げんち)を取られまいとするが故の
自己防衛にすぎない。
短く発言するのは勇気がいる。誤解されたら一瞬にして命取りになる。釈明に100倍の言語を要する。が、言いたいことを歯切れよく、インパクトを強めて発信すれば、相手の心にも響くのだ。
これをメディア、特にテレビを使ってうまく国民に伝えたのが小泉首相である。これは、彼の才能であって、誰しもが真似できるものではない。
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参照1:小泉内閣の平均支持率は56%、歴代2位 (讀賣新聞)
参照2:小泉政権:64%が評価 毎日新聞世論調査 (毎日新聞)
参照3:小泉支持率47%、平均で歴代2位 本社世論調査 (朝日新聞)
参照4:変わり行く労働市場~非正規雇用の活用~
(平成18年6月 東京都議会・調査リポート)
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